「蛇足」の意味とは?語源となった話を漢文と現代語訳で紹介

「蛇足」という言葉をご存知でしょうか。学生時代に漢文の授業で習った人もいるかもしれません。この「蛇足」は、ビジネスシーンで使われることもある重要な言葉です。意味がわからないと恥をかいてしまう可能性もありますので、正しい意味を理解しておきましょう。今回は「蛇足」の意味や、語源となった話を紹介します。

「蛇足」の意味とは?

「蛇足」の意味は”必要のない、余分なつけたし”

「蛇足」の意味は、“必要のない、余分なつけたし”です。「無用の長物」とも言われています。「だそく」と読みます。

また、本当はする必要のないことまで余分にしてしまい、その結果、全体が台無しになってしまうことも、指すことがあります。

「蛇足」の語源となった話とは?

「蛇足」は”戦国策”斉策に記載されている故事成語

「蛇足」の語源となった話は、中国の戦国時代の話をまとめている「戦国策(せんごくさく)」に書かれています。

「戦国策」は、紀元前400年頃から250年間の記録で、意見や主張を説いて歩いていた遊説家の話した内容が、国ごとにまとめられています。

秦という国の遊説家が話したものであれば秦策、楚という国であれば楚策など、国の名前がついており、「蛇足」は斉の国の遊説家が話したため斉策に記載されています。

昔の中国で起こった出来事を元にして作られた教訓のことを故事成語といいますが、「蛇足」は学生時代に学ぶ人も多い、有名な故事成語の1つです。

「蛇足」の漢文と書き下し文

楚有祠者。賜其舎人卮酒。
楚に祠(まつ)る者有り。其の舎人(しゃじん)に卮酒(ししゆ)を賜う。

舎人相謂曰、
舎人相(あい)謂(い)いて曰わく、

「数人飲之不足、一人飲之有余。請画地為蛇、先成者飲酒。」
「数人之(これ)を飲めば足らず、一人(いちにん)之(これ)を飲めば余り有り。請う地に画(えが)きて蛇を為(つく)り、先(ま)ず成(な)る者酒を飲まん」と。

一人蛇先成。引酒且飲之。乃左手持卮、右手画蛇曰、
一人の蛇先ず成る。酒を引きて且(まさ)に之を飲まんとす。乃(すなわ)ち左手(さしゅ)に卮(し)を持ち、右手(ゆうしゅ)に蛇を画きて曰わく、

「吾能為之足。」
「吾(われ)能(よ)く之が足を為(つく)る」と。

未成、一人之蛇成。奪其卮曰、
未(いま)だ成らざるに、一人の蛇成る。其の卮を奪って曰わく、

「蛇固無足。子安能為之足。」
「蛇は固(もと)より足無し。子(し)安(いず)くんぞ能(よ)く之が足を為(つく)らん」と。

遂飲其酒。為蛇足者、終亡其酒。
遂に其(そ)の酒(さけ)を飲む。蛇の足を為(な)す者、終(つい)に其(そ)の酒(さけ)を亡(うしな)えり。

「蛇足」の現代語訳

楚の国に神官がいました。神官は、その使用人たちに杯についだ酒を与えました。使用人たちが話し合って言うには、「数人でこれを飲んだら足りない。1人でこれを飲めば余るほどある。地面に蛇の絵を書いて、最初に書いたものが酒を飲むことにしよう」

1人の蛇が出来上がったので、酒をとって飲もうとしました。そこで、左手で杯を持ち、右手で蛇に書き加えて「私は蛇に足を書くことができる」と言いました。

蛇の足が書き終わらないうちに、別の1人の蛇が書きあがりました。杯を奪いとって言ったのは「蛇にはもともと足がない。あなたはどうして足を書くことができるのか」

結局、奪い取った酒を飲みました。蛇の足を書いた人は、酒を飲みそこないました。

つまり、蛇に足という余計なものをつけたしてしまったことから、蛇ではなくなってしまい、お酒を飲むことができなくなった、というお話です。この話から、余計なことをしてしまうことや、余計なことをしてしまい、全体が台無しになってしまうことを「蛇足」と言います。

「蛇足」の使い方とは?

ビジネスでも使う「蛇足ですが」

ビジネスの場面では「蛇足ですが」と話の前に付け加えることがあります。おそらく余計な情報だけれども、伝えておきたいことを話すときに使える言葉です。

「余談ですが」や「付け加えると」などと同じように使うことができます。付け加える内容が余計な情報だと予想される場合には「蛇足ですが」を使うとよいでしょう。

「蛇足」を使った例文

「蛇足」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 会議の最後に蛇足ですが、一言だけ述べさせてください。
  • 資料3ページの図は、蛇足だ。この図を見ると、内容が理解しにくくなる。
  • わざわざ解説するのは、蛇足に過ぎないのでやめておきます。
  • この後、専門家の方が説明してくださるので、素人の私が説明しても蛇足になります。

「蛇足」の類語とは?

「蛇足」の類語は”余分”や”無駄”

「蛇足」の類語には“余分”“無駄”があります。どちらも必要のないものという意味の言葉です。「蛇足」をわかりやすく言い換えるときには、「余分なつけたし」などと使うといいでしょう。

「蛇足」の英語表現とは?

「蛇足」は英語で”superfluity”

「蛇足」を英語で表現すると“superfluity”です。「superfluity」は、「余分、過剰」などの意味を持つ単語です。

「superfluity」を使う以外にも、「蛇足を加える」を「make an unnecessary addition」と表現できます。

「unnecessary」は「不必要な」という意味で、「addition」は「追加」という意味です。「make an unnecessary addition」は直訳すると、「不必要な追加をする」となります。

まとめ

「蛇足」は、「必要のない、余計なつけたし」という意味の故事成語です。語源となったお話は、蛇を先に書いた人がお酒を飲むことができるという競争で、先に蛇を書き終わった人が、蛇に足を付け足し、蛇ではないものにしてしまい、お酒を飲めなかったというストーリーです。「蛇足ですが」など、ビジネスシーンでも使われる言葉ですので、しっかりと覚えておきましょう。