「牛頭馬頭」の意味や由来とは?地獄での役割と使い方・例文も解説

「牛頭馬頭(ごずめず)」とは牛や馬の頭をした鬼で、地獄の門番をしているのだそう。ところで地獄の門番とはどんなことをしているのでしょうか。

この記事では、「牛頭馬頭」の意味や由来を解説。「牛頭」と「馬頭」の獄卒としての役割や、「牛頭馬頭」の使い方・英語表現も紹介します。

「牛頭馬頭」の意味とは?

「牛頭馬頭」の意味は「地獄の獄卒」

「牛頭馬頭」とは「地獄にいる獄卒」です。「獄卒」とは、「地獄で死者を責める鬼」のことをいいます。

「牛頭」は、頭は牛で胴体は人間の体をした鬼です。一方「馬頭」は頭は馬で、同じく胴体は人の形をして地獄にいる鬼をいいます。その二つの鬼を並べて作られた四字熟語です。

「牛頭馬頭」には「容赦ない人」という意味も

また「牛頭馬頭」には「容赦ない人」という意味もあります。「牛頭馬頭」という地獄にいる鬼たちが罪人を容赦なく責め立てるその振る舞いは、情けのない、容赦のない態度です。そうした態度を取る人のことを、「牛頭馬頭」と言います。

「牛頭馬頭」の読み方は「ごずめず」

「牛頭馬頭」とは「ごずめず」と読みます。この「ごずめず」というちょっと変わった読み方は、サンスクリット語が由来しています。

サンスクリット語で「牛頭」は「ゴーシールシャ」、「馬頭」は「アシュヴァシ-ルシャ」と言い、その発音から日本語に置き換えられる音訳から「ごずごめ」と読まれるようになりました。

「ぎゅうとうばとう」といった誤った読み方をしないように気をつけましょう。

「牛頭馬頭」の由来

「牛頭馬頭」の由来は仏教の経典

「牛頭馬頭」という四字熟語の由来となったのは、仏教の経典です。

この言葉はいくつかの経典で確認されているのですが、例えば、大乗仏教で用いられた般若経の意義を解き明かすために書かれた注釈本『大智度輪』、または禅法の意味を説いた『大仏頂首楞厳経』、さらに死後10年に起こることが描かれた『十王経』(じゅうおうぎょう)などにも出てきます。

「牛頭」と「馬頭」は「衆合地獄」にいる

「牛頭」と「馬頭」は衆合地獄と呼ばれる場所にいます。仏教では、地獄には八相になる八大地獄があり、その周りにはさらに16の小さな地獄があると伝えられています。

その十六小地獄のひとつに衆合地獄と呼ばれる地獄があり、その地獄には殺生や盗み、配偶者ではないものとの性行為をした罪である邪淫(じゃいん)の罪を犯した者だけが落ちるのです。その衆合地獄で「牛頭」と「馬頭」は獄卒、つまり地獄の番人として罪人を見張ります。

「牛頭」は手に棒を持ち、「馬頭」は「叉」(さ)と呼ばれる武器の一種を持って罪人を山へと追い立てます。するとその山と山の距離が縮まっていき、最後には山同士がくっつきます。罪人たちは山に挟まれて骨が砕かれ血の海となるというのがこの地獄の恐ろしさです。

獄卒としての「牛頭」

「牛頭」は牛の頭と人の体を持つ鬼で、獄卒の代表格とも言われています。日本の数多くの説話集にも登場して、『今昔物語集』では古い山寺で牛頭に襲われたところを毘沙門天により助けられた僧の話があります。また『太平記』には山伏に誘われて宿泊することになった寺で僧が牛頭馬頭に襲われる話が書かれています。

また数多く残る地獄絵にもよく鬼のモチーフとして牛頭が描かれています。

「馬頭」は「百鬼夜行」の鬼としても描かれる

一方「馬頭」は「牛頭」と一緒に獄卒として描かれることが多いのですが、「百鬼夜行」の化け物のひとつとしても数えられます。

「人の怪しく醜い行動」という意味の「百鬼夜行」(ひゃっきやこう)ですが、その元となった意味は「夜中の妖怪たちの徘徊」という意味でした。その妖怪のひとつとして「牛頭」がいます。

「牛頭馬頭」の使い方

「牛頭馬頭」は「容赦がない人」「冷酷な人」に使う

「牛頭馬頭」を獄卒という意味以外では、獄卒のような情け容赦のない人や冷酷な人のたとえとして使われます。とても強い表現になりますので、使う場所や相手には注意しましょう。

「牛頭馬頭」を使った例文

  • 「コーチは牛頭馬頭のような人で、練習がとても厳しい」
  • 「人をいじめるなんて、牛頭馬頭のような心をしているんだな」
  • 「弱者から金を巻き上げるなんて、あんたは牛頭馬頭だ」

「牛頭馬頭」の英語表現

「牛頭馬頭」の直訳は「Ox-Head and Horse-Face」

「牛頭馬頭」を英訳すれば「Ox-Head and Horse-Face」です。「牛の頭と馬の顔」の直訳で、頭文字を大文字にすることで「○○の姿をしたもの」という意味になります。

ただこの直訳からは獄卒としての意味は伝わりませんので、補足説明として「the two guardians of hell」(地獄の二人の門番)や「demons in the Buddhist hell」(仏教で語られる地獄の妖怪)のような英訳を付け加えると、その意味がよく伝わるでしょう。

「牛頭馬頭」に関する雑学

「頭部が牛」のモチーフは「ミノタウロス」「牛頭天王」も

「牛頭」のような頭部は牛で体は人というモチーフは、世界中にある説話や、時にはある神の姿としても使われています。

ギリシャ神話で出てくるミノタウロスは頭部は牛で体は人の形をしていて、生贄に捧げられた人を食べる怪物です。またダンテは『神曲』の中の地獄篇で、異端者を痛みつける怪物としてミノタウロスが描いています。

悪者ばかりではなく、牛の頭を持った神も存在します。「牛頭天王」(ごずてんのう)という神は牛の頭を持つ疫病を静める神様で、有名なところでは京都の八坂神社などで祀られています。

まとめ

「牛頭馬頭」とは「牛や馬の頭で体は人の形をした仏教で語られる地獄の門番」です。その容赦ない罪人の扱い方から「情け容赦ない人」のたとえとしても使われます。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。