「ひとつずつ」なのか、それとも「ひとつづつ」なのか、つい迷ってしまう「ずつ」の書き方。その正しい使い分け方はあるのでしょうか。
そこで「ずつ」の意味から漢字での書き方、英語や「少しずつ」や「ひとりずつ」の類語表現に併せて、「ずつ」と「づつ」の使い分け方について解説します。
「ずつ」の意味とは?
「ずつ」の意味①”同じ量を割り当てること”
「ずつ」の意味は“ある数量を均等に割り当てること”です。
文法的には副助詞になり、必ず分量を表す語の後に付けて使います。
「ずつ」の意味②”ある事柄を繰り返す”
「ずつ」には”ある事柄を同じ分量だけ繰り返して行う”という意味もあります。
「少しずつ読み進める」
「全員が一度に選ぶことはできない。ひとりずつ選ぶことにしよう」
「ずつ」を漢字でどう書くの?
「ずつ」は漢字で”宛”
「ずつ」は漢字で”宛”と書きます。
「宛」という漢字は、たとえば手紙の受取人の氏名を指す「宛名」(あてな)に使われますが、この「宛名」の意味を詳細に言うと「ある特定の名前に割り当てること」です。「ずつ」に「宛」という字があてられる場合も、同じ意味になります。
「宛」の使い方と例文
「ずつ」はひらがなで「ずつ」としたほうが一般的ですが、法的書類などには漢字の「宛」(ずつ)が使われています。例えば、契約書類、合意書などが一例です。また金融関係の書類にも「ずつ」に「宛」をあてているのがよく見られます。
「署名押印のうえ、各一通宛所持する」
「ずつ」の英語表現とは?
「同じ数量を割り当てる」の意味なら”each”
「同じ数量を割り当てる」という意味の「ずつ」には、「each」が使われます。
例えば「ひとり100円ずつ」という意味なら「100 yen each」のように使います。
「ひとつずつ」なら”one by one”
「ひとつずつ」や「一人一人」を英語では「one by one」や「one at a time」という表現が使えます。
“The applicants enter the room one at a time.”「候補者は一人一人部屋に入る」
「少しずつ」なら”little by little”
同じ分量を繰り返す意味の「ずつ」を使った言い方に「少しずつ」がありますが、「少しずつ」は英語で「little by little」です。「少しずつ」何かをしたり、「少しずつ」何かの量を増やしたり減らしたりするときなどに使えます。
“She gives water to the flowers little by little.”「彼女は花に水を少しずつやる」
「ずつ」の類語表現とは?
「少しずつ」の類語は”緩やかに”や”徐々に”など
「段階的な方法で少量ずつ増やしたり、わずかな距離を断続的に進む」という意味なら、次のような類語があります。
- 「緩やかに」
- 「徐々に」
「ひとりずつ」の類語”各人”や”順番に”など
「一人ずつ順番に」という意味で使われる「ひとりずつ」には、次のような類語があります。
- 「一人ずつ」
- 「一人一人」(ひとりひとり)
- 「各人」(かくじん)
- 「順番に」
「一人一人に名前を聞いた」
「帰路は各人の責任でそれぞれ帰ってほしい」
「順番に用紙を配っていった」
「ずつ」と「づつ」の違いと使い分けとは?
内閣告知によれば「ずつ」と「づつ」のどちらも正しい
「ひとつずつ」なのか「ひとつづつ」なのかと迷ってしまう「ずつ」と「づつ」の使い分けですが、昭和61年の内閣告知によればどちらも正しいということになっています。
「ず」を使うことが本則だが「づ」を使うこともできるという主旨のもので、「ずつ」と「づつ」の両方を使えると定義しています。
小学校やNHKでは「ずつ」を使う
しかし小学校では「ずつ」を使うように指導していますし、NHKでも「ずつ」が使われていて、「づつ」は使われていません。
つまり内閣告知による「本則では「ず」である」という点が重視されています。
迷った時は「ずつ」を使おう
このように見てくるとわかってくることは、「づつ」でも間違いではないものの、「ずつ」を使った方が無難だということです。
また一つの文面では「ずつ」を使い始めたら、最後まで「ずつ」だけを使うように統一するのがいいでしょう。
数少ない現代まで生き残った歴史的仮名遣い「づつ」
ではなぜ「ずつ」を使うことが本則だとしつつも、「づつ」も使えるという曖昧な定義づけなのかというと、歴史的仮名遣いだった「づつ」が現代でも定着しているからです。
昭和21年に、歴史的仮名遣いである「づつ」は現代仮名遣いとして「ずつ」に変更することになりました。
ところで歴史的仮名遣いとは「蝶」のことを「てふてふ」と書くなど、現代仮名遣い以前の表記法です。
「てふてふ」のように歴史的仮名遣いは使われなくなったはずなのですが、「づつ」は現代になっても使われていて、国もそれを認めたというのが昭和61年の内閣告知の見解です。
「づつ」を誤りとしないといった国の見解は、それほどに「づつ」という表現を違和感なく私たちが使っていたという証でしょう。
まとめ
「ずつ」とはある同じ量を割り当てたり、同じことを繰り返すときに使われる副助詞です。直接、名詞や代名詞の後に続けます。「づつ」と表記するのも間違いでないのですが、現代語仮名遣いは「ずつ」なので「ずつ」を使った方が無難です。
「半分ずつに分ける」
「1チーム10人ずつに分ける」