「泣く子も黙る」は、日常的にというより劇や小説など物語の中で使われることが多い言葉です。相手をひるませる威圧的な印象を与えるため、喜ばせるといった良い意味で使うことはあまりありません。今回はこの「泣く子も黙る」の意味や語源、そして類語や英語表現を解説していきます。
「泣く子も黙る」の意味や語源とは?
「泣く子も黙る」の意味は”圧倒的な存在”
「泣く子も黙る」の意味は、”圧倒的な存在”です。”聞き分けなく泣いている子供でも急に静かになってしまうほどの勢力や威力がある存在”を表すことわざです。使い方や使う場面によって、「ひどく恐ろしい存在」や「絶対的な強さをもつ憧れの存在」など含まれるニュアンスが変わります。
「泣く子も黙る」の語源は中国の”三国志”にあり
「泣く子も黙る」の語源は、有名な中国の歴史書「三国志」に出てくる張遼(ちょうりょう)という英雄が関係しています。張遼には、不仲な軍の同僚と7,000人という少ない兵力で10万人の敵軍に立ち向かい勝利したという武勇伝があります。
この圧倒的不利な状態でも勝った張遼の強さは広く知れ渡り、泣き止まない子がいると「遼来遼来!」(張遼がくるぞ!)と言って泣き止ませていたという逸話まで生まれほどでした。このことから、張遼のような圧倒的な強さをもつ存在を「泣く子も黙る」と例えるようになったと言われています。
「泣く子も黙る」の使い方と例文とは?
勢いや権力があるものに対して使う
ことわざ「泣く子も黙る」は、基本的に誰もが認める「圧倒的な存在」に対してのみ使い、その対象は人間とは限りません。先ほども説明したように、使い方や使う場面によって伝わるニュアンスは大きく違ってきます。
「泣く子も黙る」を使った例文
「泣く子も黙る」を使った例文をご紹介しましょう。
- 「俺さまは、泣く子も黙るボクシング界のチャンピオンだ!」
→俺さまは、誰からも恐れられているボクシング界のチャンピオンだ!
- 「あれが噂の泣く子も黙る世界最強のチームだ」
→あれが圧倒的な強さをもつ噂のチームだ
- 「あの方は、泣く子も黙る村のリーダーだ」
→あの方は、この村で1番権力をもつリーダーだ
- 「泣く子も黙る一言によって急に静まり返った」
→皆が黙ってしまうような一言で急に静かになった
- 「泣く子も黙る上司だが奥さんには弱いらしい」
→誰もが恐れる上司だが、奥さんにだけは勝てないらしい
「泣く子も黙る」の類語や類似表現とは?
「泣く子も黙る」の類語は”威圧的・お墨付き”など
「泣く子も黙る」の類語は複数ありますが、今回は日常的に使える言葉を3つ紹介します。
「威圧的(いあつてき)」
「威圧的」は、“相手を威力などで押さえつけようとする様子”を意味する言葉です。「泣く子も黙る」の“恐ろしい存在”というニュアンスと似ています。
「お墨付き(おすみつき)」
「お墨付き」は、“権力や権限がある人の保証などがあること”を意味する言葉です。“恐ろしい”などの特定の感情は含まれていませんが、“泣く子も黙る相手を圧倒する”という意味合いは似ています。
「非の打ち所がない(ひのうちどころがない)」
「非の打ち所がない」は、“少しも欠点がない”や“完全”という意味をもつ言葉です。「泣く子も黙る」のような威圧感は含まれませんが、誰も太刀打ちできない圧倒的な存在であることは伝えることができます。
「押しも押されもしない」は似た意味を持つ言葉
「押しも押されもしない」は、“実力がある”や“ビクともしない”という意味をもつ言葉で、「泣く子も黙る」の圧倒的な存在である意味合いと似ています。“恐ろしい”という印象よりも、“実力者”や“不動のもの”といった印象を強く与えます。
「泣く子も黙る」の英語表現とは?
「泣く子も黙る」の英語表現は「intimidating」「crushing」
「泣く子も黙る」は、“驚異的な”や“脅す”という意味をもつ形容詞「intimidating」で表現します。精神的なダメージを与えるほどの存在なら、“圧倒的な”や“(攻撃が)壊滅的な”という意味をもつ形容詞「crushing」で表現してもいいでしょう。
「It’s fearful enough to silence a crying child」とも表現できる
「泣く子も黙る」は、「It is fearful enough to silence a crying child(直訳:子供を静かにさせるには十分に恐い」と一文で表現もできます。主語を変えることで応用して使えます。
「彼の顔は泣く子も黙るほどだ」
→”His face is fearful enough to silence a crying child.”
まとめ
「泣く子も黙る」は、利かん坊も泣き止んでしまうほどの圧倒的な存在を意味することわざであり、使い方や使う場面によって恐い印象や憧れている様子などニュアンスを変えて表現できる言葉でもあります。劇などの作品に使われることが多い言葉ですが、日常会話で使っても問題はありません。もしことわざを使わず自然な表現にしたい場合は、類語で紹介した言葉を使うといいでしょう。