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「ローマは一日にして成らず」の意味と出典とは?英語や類義語も

「ローマは一日にして成らず」とは、ローマ帝国が長い年月をかけて築かれたことをたとえて使われることわざです。しばしば出会うフレーズですが、言った人は誰なのか、出典は何かということはあまり知られていません。

そこでこの記事では、「ローマは一日にして成らず」がどのようにできたのかを解説し、そこから明らかになる意味と使い方も紹介します。あわせて英語やフランス語の言い方や、類義語なども紹介します。

「ローマは一日にして成らず」とは?

意味は「大きなことを成し遂げるには時間がかかる」

「ローマは一日にして成らず」の意味は、”重要なことや大きな目標を成し遂げるためには時間がかかる”です。

ヨーロッパでは、ギリシャ神話の英雄の子孫である、双子の兄弟ロムルスとレムスによって、紀元前753年にローマが設立されたとする神話から始まるローマ帝国の長い歴史がよく知られています。

「ローマは一日にして成らず」の「ローマ」とは、現在のイタリアの都市であるローマではなく、古代ローマから始まり、のちに皇帝によって治められたローマ帝国のことを指しています。ローマ帝国は500年の長い年月を経て築かれた、古代ヨーロッパ最大の帝国でした。

また、「全ての道はローマに通ずる」ということわざもヨーロッパが起源です。ローマ帝国時代から世界各地への道がローマに通じていたこと、さらに古代文化は古代ローマからヨーロッパに広まったという文化的な意味も含んでいます。

「ローマは一日にして成らず」「全ての道はローマに通ずる」ということわざは、ヨーロッパ文化の中心がローマにあったことから、ヨーロッパで古くから共有されていたことわざだといえます。

ちなみに、塩野七生の代表作『ローマ人の物語』の第1巻の副題は「ローマは一日にして成らず」です。この第1巻は、ローマ建国からローマ帝国が誕生するまでの500年間を描いた作品です。

「ローマは一日にして成らず」の出典はヨーロッパのことわざ

日本でもよく知られた「ローマは一日にして成らず」のことわざの出典は、小説『ドン・キホーテ』であるとされていました。しかし、スペイン語の原書を英訳する際に、スペイン固有のことわざの箇所がイギリス人にはなじみが薄いため、「ローマは一日にして成らず」の表現に英訳されたのだということがのちにわかりました。

日本語訳に訳されたのはその英訳からだったため、邦訳の『ドン・キホーテ』には、原書にはない「ローマは一日にして成らず」の表現が出てくるのです。

現在「ローマは一日にして成らず」の表現が文献上で確認できる古いものとしては、12世紀のフランスで書かれたことわざ集や、中世フランスの文学作品『狐物語』であると言われています。

『狐物語』は、複数の作者によって書かれた狐のルナールを主人公とした短編物語を、複数篇集めた物語集です。その作者は、中世時代の有識者階級である聖職者たちだとされています。その作者たちは、ラテン文学やラテン語で書かれた古典からテーマを採り上げていたことがわかっているため、「ローマは一日にしてならず」のことわざのもとはラテン語で成立していたのではないかと思われます。

これらのことから、「ローマは一日にして成らず」のことわざは、中世またはそれ以前のヨーロッパのことわざが起源だと考えられます。

「ローマは一日にして成らず」の英語・フランス語・ドイツ語表現

「ローマは一日にして成らず」は欧米でよく使われることわざです。外国語表現をいくつか紹介します。

  • 英語:「Rome wasn’t built in a day」
  • フランス語:「Rome ne s’est pas faite en un jour」
  • ドイツ語:「 Rom ist nicht an einem Tag erbaut worden」

「ローマは一日にして成らず」の使い方と例文とは?

「ローマは一日にして成らず」のビジネスにおける使い方と例文を紹介します。

一朝一夕には完成しないことを伝える「ローマは一日にして成らず」の使い方

大きな仕事や事業は一朝一夕には成し遂げることはできないことを伝えたいとき、「ローマは一日にして成らず」はたとえのことわざとして最適です。500年という歳月をかけて築かれた帝国をたとえることで、その重みを加えることができます。

「ローマは一日にして成らず」を使うビジネス例文

  • ローマは一日にして成らずというとおり、大きな目標を達成するためには小さな積み重ねが大切だ
  • ローマは一日にして成らずなのだから、大きな目標に躊躇することはない
  • ローマは一日にして成らずを忘れずに、力を合わせて大事業をやり遂げよう

「ローマは一日にして成らず」の類義語とは?

「ローマは一日にして成らず」の類義のことわざを紹介します。

「千里の道も一歩から」の意味は”手近なところから努力を重ねて大きな成果を得る”

「千里の道も一歩から」とは、「手近なところから努力を重ねて大きな成果を得る」という意味です。出典は中国古典の『老子』で、大木もつぼみから成長し、千里の道のりも足元の一歩から始まるという一節からできた故事成語です。

「千里の道も一歩から」は「ローマは一日にして成らず」とほぼ同じ意味だといえますが、出典が明らかなことから、教訓的によく引き合いに出されるのは「千里の道も一歩から」の方が多いかもしれません。

「大器晩成」の意味は”偉大な人物は大成するのに時間がかかる”

大きな器は完成するまでに時間がかかることから、偉大な人物も大成するのに時間がかかるということを意味することわざです。「大器晩成」は人物に対して使われます。

「塵も積もれば山となる」の意味は”小さな事をおろそかにしない”という教訓

「塵も積もれば山となる」とは、小さな事をおろそかにしてはならないという、教訓の意味が強いことわざです。

「ローマは一日にして成らず」は、完成するには長い年月が必要だという時間の積み重ねに焦点が当てられていますが、「塵も積もれば山となる」は、小さなことの積み重ねという行為に焦点が当てられています。

まとめ

「ローマは一日にして成らず」とは、大きなことを成し遂げるには、長い時間が必要だということを伝えることわざです。古くは中世のフランス文学に登場し、ヨーロッパにおいて古くから用いられていることわざですが、最初に言った人が誰なのかはわかっていません。

その意味を理解するためには、「ローマ帝国」の長い歴史や、ローマから広まったヨーロッパの文化的背景を知っている必要があるため、欧米に比べて日本ではあまりしっくりしないことわざであるかもしれません。