「三猿」は、目や耳、口を隠している3匹の猿の像を指す言葉です。この3匹の様子を聞いて、日光東照宮の「見ざる聞かざる言わざる」を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか?今回はそんな「三猿」が示す意味や由来、そしてあまり知られていない“四猿”や世界の三猿について紹介します。最後に英語表現も解説しますので、参考までにご覧ください。
「三猿」の意味とは?
「三猿」の意味は”見ざる聞かざる言わざる”
「三猿」の意味は、“見ざる聞かざる言わざる”です。目・耳・口を両手で隠している3匹の猿を指します。
その意味とは、“他人の欠点や過ち、自分にとって不都合なことは見たり聞いたり言ったりしない方がいい”というもので、“弱点を突くような人やうわさ好き、口の軽い人など印象の悪い人にはならないように”という一種の教訓のようなが思いが込められています。
意味が違う「お元気三猿」も有名
不老長寿のご利益があると言われている埼玉県の秩父神社には、日光東照宮にある目・耳・口を隠している三猿とは真逆のユニークな三猿が存在しています。その像は「お元気三猿」と呼ばれ親しまれており、目も耳も口も隠していません。示す意味も日光の三猿とは逆で「よく見る、よく聞く、そしてよく話す」ということを表し、「現在の情報社会に対しての教訓のよう」ということで密かに人気を集めています。
京都には別の意味をもつ猿がいる
京都の大黒山金剛寺には、目・耳・口を隠した三猿以外の“猿”が存在しています。その猿とはカラフルな布地で作られた手のひらサイズの「くくり猿」というお守りで、境内の至るところに奉納されています。
名前の通り「くくり猿」は手足をくくられています。その身動きが取れない姿は「人間が持つ欲望」をたとえていて、「欲に走らないこと」「自分の欲望をコントロールすること」という意味を示しています。「くくり猿」に願い事を託し、その代わり自分の欲を1つ我慢することで願いが叶うと考えられています。
「三猿」の由来とは?世界各地に存在?
「三猿」の由来は孔子の論語という説も
日本のあちこちに存在する「三猿」の由来は複数あり、いまだに解明されていません。その中でも有力とされている説は、8世紀頃シルクロードを経由し、日本に伝わったと言われている中国の思想家“孔子(こうし)の論語”と言われています。
“論語”とは孔子の教えを弟子達が記録したもので、人の考え方や生きる道、道徳などが書かれています。その教えの中に「礼儀に背くようなことには注目しない、耳を傾けない、言わない、しない」と言った4つの教訓があり、このことをわかりやすく表現するために身近な動物「猿」と使ったとされています。
もともとは「四猿」だった説も
“見ざる聞かざる言わざる”で知られている「三猿」ですが、実は「四猿」(しざる)だったという説もあります。これは先ほど説明したように、論語の 4つ目の教訓が関係しています。
「礼儀に背くようなことはしない」という教訓は、 “両手で股間をかくす猿”で表現され、性的なことへの注意を示していると言われています。日本ではこういった性的な表現は良くない、また「四猿」の“四(し)”が“死”を連想させ縁起が良くないという意味で「三猿」になったと考えられています。
「三猿」は世界各国に存在する
「三猿」は、中国や日本以外にも存在しています。
例えばインド独立の父と呼ばれているガンディーは「悪は見ない、聞かない、言わない」という教訓を、またアメリカの教会なのでは「わいせつなものは見ない、聞かない、下品なことや嘘は言わない」ということを教えるために、3匹の猿を引き合いに出しているという説があります。
こういった教訓や教えを伝えるために三猿が使われている国は、中国・日本を含め10カ国以上もあり、ヨーロッパからアフリカ諸国まで広がっていると言われています。
「三猿」の英語表現とは?
「三猿」の英語表現は”Three wise monkeys”
「三猿」は、”賢い“という意味をもつ「wise」を使って”Three wise monkeys(直訳:3匹の賢い猿)”と表現します。「wise」が、”自分にとって都合が悪いことや余計なことを見たり聞いたり他の人に話したりしない“という「三猿」の意味を表しています。
「〇〇 no evil」を使って表現もできる
「三猿」は、“(道徳的に)悪い”や“不正”という意味をもつ「evil」を使い「see no evil, hear no evil, and speak no evil」とも表現できます。順序を変えた「hear no evil, see no evil, and speak no evil」でも間違いではありません。
まとめ
両手で目・鼻・口を隠している3匹の猿の像「三猿」は、「見ざる聞かざる言わざる」ということわざの意味を示した言葉です。この「三猿」は日本特有のものではなく世界10各国以上に広まっていて、それぞれ「自分や相手にとって悪いことを見ない、聞かない、言わないことが生きる上で良いことだ」という教訓を伝えています。
会話の中で使われることは非常に少ないですが、生きる上で大切なライフスキルが込められたことわざなので、自分の人生に生かすためにも覚えておくといいでしょう。