「売り言葉に買い言葉」の意味と使い方!類語と隠れた心理とは

日常的に使われる表現に「売り言葉に買い言葉」があります。喧嘩を売るような口調で相手にものを言い、それに乗っかるように言い返す様子を表す時に使われますが、「売り言葉に買い言葉」の後は必ず苦々しい感情が残るものです。

ここでは「売り言葉に買い言葉」の意味と使い方をはじめ、類語や英語表現などを解説しています。「売り言葉に買い言葉」に隠れた心理と併せてみていきましょう。

「売り言葉に買い言葉」の意味や由来とは?

意味は「相手の喧嘩腰な言葉に対し応酬すること」

「売り言葉に買い言葉」の意味は、“相手の喧嘩腰な言葉に挑発され、相応の言葉で言い返すこと”です。相手が放った暴言に対して黙っていることができず、受け手も負けじと言葉の応酬に出ること」を意味しています。

「売り言葉」は故意に相手に喧嘩を吹っ掛けるような言葉のことで、「買い言葉」はそれに乗っかるように放たれる挑発的な言葉のことです。

由来は「商品を売る時の言葉と買う時の言葉」

「売り言葉に買い言葉」の正式な由来はわかっていませんが、もともと“商品を売る時の言葉と買う時の言葉”をベースに、売買の対象となる商品を「けんか」や「暴言」に見立てた比喩的な表現として使われるようになったことわざだと言われています

「売り言葉に買い言葉」の使い方と例文とは?

「売り言葉に買い言葉」はビジネスシーンで頻度の高い表現

「売り言葉に買い言葉」は、言ってみれば「相手に負けたくない」という気持ちの表れでもあります。「一円でも高く、一人でも多く」というタイトな商業取引やマーケットの世界でも「売り言葉に買い言葉」は多く使われる表現です。

プロフェッショナルが集う取引の場では、さすがに喧嘩腰になって「売り言葉」を発する場面は少ないと言えますが、相手を挑発するような言葉を巧みに使う取引戦略も無きにしも非ずです。笑顔をキープしながら「売り言葉」を相手に飛ばし、心の動揺を誘うことも「売り言葉」が持つ力とも言えます。もちろん、ここで心を乱し「売り言葉」を買ってしまうこともあるかもしれません。

ビジネスシーンで「売り言葉に買い言葉」は「喧嘩」というよりは「巧妙な駆け引き」というニュアンスが強いのも特徴でしょう。

「売り言葉に買い言葉」を使った例文

実際に「売り言葉と買い言葉」を使った例文を挙げてみましょう。

  • これじゃ、まるで売り言葉に買い言葉じゃないか。全く埒が明かないよ。
  • ののしり合いに近い売り言葉に買い言葉的な話し合いは、昼まで続いた。
  • 売り言葉に買い言葉とは言えども、どうしてそんなひどいことが言えるんだ。
  • 挑発に乗るな。相手はわざと売り言葉に買い言葉を狙った心理作戦を使っている。

「売り言葉に買い言葉」の類語と対義語とは?

「売り言葉に買い言葉」の類語は”ああ言えばこう言う”

「売り言葉に買い言葉」の類語は“ああ言えばこう言う”があります。相手が「ああ」と言えば、受け手は「こう」言うというように、会話がネガティブな状況で延々と停滞している様子を表す言葉です。「この頃、うちの息子はああ言えばこう言う」というように使います。

また、正式な類語ではありませんが、結果的に「言い合い」になった状況を表すなら「ののしり合い」や、暴言の投げ合いを皮肉的に表す「誹謗中傷合戦」、また勝手な発言が飛び交い、収集のつかないやかましい状況を表す「喧々囂々(けんけんごうごう)」なども使うこともできるでしょう。

「売り言葉に買い言葉」の対義語は”柳に風”

「売り言葉に買い言葉」の対義語は、相手の調子や言い方がきつくても、柳が風になびくように逆らわないという意味の“柳に風”です。たとえ「売り言葉」を投げられても、巧みに交わし、災いを受けることなく、サラッとやり過ごすことを表しています。

「売り言葉に買い言葉」の英語表現とは?

英語ではリズムよく「tit for tat」で表現

英語で「売り言葉に買い言葉」は決まり文句で“tit for tat(ティット・フォー・タット)”となります。職場や会議などで「売り言葉に買い言葉」の言い争いが始まったら、こそっと「tit for tat」という表現を使ってみましょう。困った顔をしながらも「また始まったね」というように、英語での会話がスタートするかもしれません。

「売り言葉に買い言葉」を使った英語例文

「売り言葉に買い言葉」を使った英語例文を挙げてみます。

  • Here they come. There is another tit for tat between my boss and one of the clients.
    また始まったよ。ボスとクライアントでの売り言葉に買い言葉が…。
  • You know tit for tat won’t solve anything. I am sick of it.
    売り言葉に買い言葉じゃ何も解決しないよ。ほんとにウンザリだ。

「売り言葉と買い言葉」に隠れた心理とは?

ここで「売り言葉に買い言葉」に隠れる、双方の心理について紹介します。「売り言葉」を放つ人を「売り手」、買い言葉を放つ人を「買い手」として心に潜む心理を見てみましょう。

「売り手」が放つ言葉は本音だとは限らない

「売り言葉に買い言葉」はビジネスシーンはもちろん、日常生活なら恋人同士や夫婦間、また親子や友達の間でもよく起こり得ることです。わざと相手の嫌なことを言ったり、不当な発言をしたりすると、相手は「本音で言っているのか」と不安になったりします。心が傷ついて、相手に対して憎悪の気持ちや不信感も募ることでしょう。

しかし「売り手」が放つ言葉が本音や本心だとは限りません。なぜなら、売り手の心の状態が不安定であったり、相手に対する個人的なコンプレックスがあったり、または短気な性格などが口火となって、うっかり口から「暴言」を履いてしまうことがあるからです。実際、後になって「さっきはごめん。本音じゃないんだ」と謝罪を受けることも多くあります。

「買い手」が怒ったり反論するのは当然の心理

一方、暴言や不当な発言を受けた「買い手」の心理はどうでしょうか?何も悪いことをしていないのに、嫌味なことを言われたり、喧嘩腰な態度で迫られたら、通常の人間の心理としては「応酬」に出るのが当然でしょう。

相手に対して怒りがこみ上げ、相手の言った不当なことに反論する、つまり「やり返す」のが人としては当たり前の行為です。多くの場合、喧嘩となるのが見え見えで、相手と同じ土俵に乗っからないように我慢するも、結局は「嫌味な言い争い」や「パンチの応酬」にまで発展することも少なくありません。

「売り言葉」への対処法は「相手の口調に乗っからない」

「売り言葉」を上手にかわしていくには、たとえるなら「お釈迦様の気持ち」となって「売り言葉を買わない」のが最もポジティブな対策と言えます。しかし、実際は、なかなかそうも行かず、ついつい「喧嘩を買ってしまう」のが人間の心理とも言えるでしょう。

「売り言葉」に乗っからない方法としては「とにかく言い返さず、相手に肯定的な答えで返す」のが効果的だと言われています。たとえば「本当にお前はお荷物なんだよ!」と言われたら「そうね。お荷物かもしれないね」と、とりあえず言っておくのです。そうすれば、負の連鎖をそこで断ち切ることができ、さらに、おのずと言い過ぎたことを相手に気づかせることもできます。

まとめ

「売り言葉に買い言葉」は「相手の喧嘩腰な言葉に、相当の言葉で言い返すこと」で、似た表現に「ああ言えばこう言う」があります。「売り言葉に買い言葉」で売買される商品は「喧嘩」であり、決定的な結論に達することもなく「負の連鎖」や「醜い言い争い」を皮肉って表す言葉として日常的に使われています。

しかし、実施には「売り言葉」も「買い言葉」も、放った本人が「そんなつもりじゃなかった」という場合も多くあり、人が持つ繊細な心理状態によって「売り言葉」を意もなく発してしまうこともあるでしょう。その時は素直に謝罪し、お互いにポジティブな関係を築けるよう努力することが大切です。