「紺屋の白袴」と聞いて、紺屋とは何かすぐに思いつきますか。どうも色と関係ある仕事のようだと思えることわざですが、今回はこの「紺屋の白袴」の意味と由来のほかに、類語や英語表現も解説します。さらに、その正しい使い方を例文と併せて説明します。
「紺屋の白袴」の意味や読み方とは?
意味は”他人のことで忙しく、自分のことをする暇がない”
「紺屋の白袴」の意味は、“他人のことで忙しく、自分のことをする暇がない様子”です。
紺屋とは元は藍染め屋だったのですが、広く染物屋のことを指すようになります。その染物屋が繁盛した江戸時代では、染物屋という仕事は、染物の専門的知識が必要なだけでなく、その時々の流行にも対応しなくてはならない大変忙しい仕事のひとつでした。
そんな染物屋は客の袴は染めるので忙しく、その忙しさは自分の袴を染める時間すらないほどだったことから生まれたことわざです。
「紺屋の白袴」の読み方は”こうやのしろばかま”
「紺屋の白袴」の読み方は、“こうやのしろばかま”です。
「紺屋」を「紺」という字をそのまま読み「こんや」と読み違えることがあります。確かに「紺屋」は「こんや」と読まれていたこともあったのですが、なまった「こうや」と読む方が定着しました。
また「白袴」も「しろはかま」といった読み間違いもよく聞かれます。正しくは、濁って「しろばかま」または「しらばかま」です。
「紺屋の白袴」の使い方と例文とは?
「まるで紺屋の白袴のようだ」と使う
「他人のことばかりに忙しく、自分にために割く時間がない人」や、「専門的な知識を持ち合わせていながら、その知識を自分には使わない人」などをたとえるときに、「紺屋の白袴」が使われます。
その使い方は、このことわざをたとえとして用いるので、「まるで紺屋の白袴のようだ」とか「紺屋の白袴とはよく言ったものだ」のような表現になります。
「紺屋の白袴」を使った例文
「紺屋の白袴」を使った例文をご紹介しましょう。
- 「友人の勉強を見てばかりいて、自分の勉強をする時間が無くなってしまった。これではまるで紺屋の白袴だ」
- 「紺屋の白袴で、彼は経営コンサルタントとして世間に知られていたのに、自分の会社は潰れたそうだ。」
- 「高級料亭だっていうから、いいまかないを期待して働き始めたのに、大したものが出てこない。紺屋の白袴とはよく言ったものだ」
「紺屋の白袴」の類語・似たことわざとは?
類語①「医者の不養生(いしゃのふようじょう)」
「医者の不養生」とは医者は患者の健康ばかり気にしているものの、自分の健康には気をつけないというよくある医者の態度から生まれたことわざです。
その意味は「人に養生を勧めながらも、自分のことはいい加減な医者の態度」、または「理屈をわかっていて他人には言うものの、自分は実行しない態度」です。
類語②「髪結い髪結わず(かみゆいかみゆわず)」
「髪結いの乱れ髪」という同義のことわざもありますが、「髪結い髪結わず」とは、髪結いは人の髪を結ってばかりで、自分の髪を結う時間がない、自分のことにまで手が回らないという意味のことわざです。
類語③「易者の身の上知らず(えきしゃのみのうえしらず)」
易者とは占い師のことで、「易者の身の上知らず」とは易者は他人の身の上ばかり占っているものの、自分の身の上のことはわからないという意味のことわざです。
「紺屋の白袴」の英語表現とは?
「紺屋の白袴」の英訳
「紺屋」とは「染物師」のことなので英語では「dyer」です。
「白袴」の「袴」は日本の文化なのでそのまま「Hakama」とするか、説明的に「long pleated culotte-like Japanese trousers」(長いプリーツ状の日本のズボン)のように訳されます。これに「白」の意味である「white」をつけます。
「紺屋の白袴」を直訳すると「white long pleated culotte-like Japanese trousers of dyer」となります。
英語で「紺屋の白袴」と似ていることわざ
「紺屋の白袴」と同じ意味の英語のことわざもいくつかあります。英語圏にも、自分の仕事が忙しく自分のことにまで手が回らない職業がいろいろとあるようです。
- ”The tailor’s wife is worst clad.”
「仕立て屋の妻はひどい」 - “The shoemaker’s children go barefoot.”
「靴屋の子供たちははだしで歩く」 - “The dyer wears white.”
「染物師は白い服を着る」 - “Specialists often fail to apply their skills to themselves.”
「専門家はよく持っている知識を自分たちに使わない」
まとめ
「人の世話で忙しく、自分のことをする暇がない」という意味の「紺屋の白袴」ですが、紺屋が白袴をはいていたのには、実は職人の誇りであったとも言われています。
染料を扱う職人が白い袴をはきながらも自分の袴に一滴もの染料を落とさずに仕事ができれば、それほどに技術が高いことを証明することになります。つまり染物屋が白袴をはいていたのは、職人気質の表れだったとも言われています。
「紺屋の白袴」は「他人の世話ばかりに忙しく、自分のためにかける暇がない」という意味のことわざです。「紺屋の白袴のようだ」のように、たとえとしてこのことわざを使います。