ことば検定などでも出題されることがある「けんもほろろ」ということわざの意味を知っていますか?今回は「けんもほろろ」の意味や由来、具体的な例文を交えた使い方や反対語などについて解説します。類語の「取り付く島もない」との違いや英語表現などもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
「けんもほろろ」とは?
ことわざ「けんもほろろ」の意味は”あっけなく拒絶する”
「けんもほろろ」の意味は、“あっけなく拒絶する・簡単に退ける”です。「けんもほろろ」にあてる漢字はなく、すべて平仮名で”けんもほろろ”と書きます。
人に何かを頼まれたり、依頼されたときに、言葉少なにそれを断り、相手の気持ちを拒絶する様子をあらわします。
近年では「けんもほろろ」を略して”けんほろ”と使うこともあるようです。
「けんもほろろ」は鳥の鳴き声や母衣打ちが由来
「けんもほろろ」の由来・語源は「鳥」の「雉(きじ)にあると言われています。
雉の鳴き声である「ケーンケーン」と聞こえる音と、「突っ慳貪(つっけんどん)」などと使われる「慳貪」をかけて「けん」、「ほろろ」は雉の飛び立つときの羽根の音と言われています。
この飛び立つときの羽根を羽ばたかせる音は「母衣打ち(ほろうち)」とも言われ、これも雉が飛び立つときの音と上手く掛け合わせることができたようです。
つまり、「けんもほろろ」の由来・語源は「慳貪な対応」と言いたいところを、雉の鳴き声や羽ばたくときの音に掛けて、「けんほろろ」となり、使われ続ける内に「けんもほろろ」となった、と言われています。
「けんもほろろ」に刀は無関係
「けんもほろろ」という言葉を耳で聞くと、相手に突っぱねられるというイメージも手伝って、「剣」「刀」という文字を連想しやすいでしょう。
しかし「けんもほろろ」に、刀や剣は関係がありません。先にお伝えした通り、「けんもほろろ」は平仮名で書くため、あて字としても「刀」や「剣」が入ることはありません。
「けんもほろろ」の使い方と例文とは?
「けんもほろろ」だけで状況を表す
「けんもほろろ」という言葉は「あっけなく拒絶する」という意味を持っているため、自分や誰かが、相手からいとも簡単に拒絶された場合に使いますし、自分が何かを依頼され、それをあっけなく拒絶した場合にも「けんもほろろ」を使うことができます。
- 「クライアントに値上げの交渉をしたけれど、残念ながらけんもほろろだった」
- 「彼に頼んでももうすぐ定時だから、きっとけんもほろろだろうな」
- 「あんな条件飲めるわけがないから、けんもほろろ、早々にお帰りいただいた」
「けんもほろろに」で簡単に断られる様子を表す
「けんもほろろ」に、助詞の「に」をつけて「けんもほろろに」とすれば、さらに詳しい状況を説明できるようになります。「けんもほろろに」の後に、その状況の結末を持ってくると、まとまりのある言葉や文章になるだけでなく、状況を具体的に伝えることもできます。
- 「ダメ元で課長に掛け合ってみたけれど、けんもほろろに突っ返されたよ」
- 「先週はあんなに乗り気だった彼が、今日になってけんもほろろに断ってきた」
- 「あまりにしつこく依頼されるから、今日はけんもほろろに絶対にできないと言ってやった」
「けんもほろろ」の同義語・対義語とは?
類語「取り付く島もない」との違いは拒絶の程度
「けんもほろろ」と似た意味を持つ言葉に「取り付く島もない」があります。「取り付く島もない」とは、相手の態度が冷たく、なかなかきっかけがつかめないという意味です。
この場合の「島」とは、頼りになるところ、よりどころという意味を持っています。つまり、頼りにしたいのに、そのきっかけがつかめずに近寄ることも難しいという意味です。
「けんもほろろ」との違いは、相手の拒絶の程度です。「けんもほろろ」は、あっけなく拒絶はされても、一応相手と話したりお願いをしたりすることができています。
しかし「取り付く島がない」は、そもそも相手とコミュニケーションを取ることすら難しいほど、相手の態度が硬化しているという状態です。
対義語は「かゆいところに手が届く」
「けんもほろろ」の反対の言葉は「親切」「快い対応」などです。これらの意味に近いことわざだと「かゆいところに手が届く」があります。
「かゆいところに手が届く」とは、相手がこちらに対して親切に気配りをしてくれるという意味です。ニュアンスとしては「けんもほろろ」の対義語としてやや違和感があるかもしれません。
しかし、かゆいところに手が届くような親切で配慮が行き届いた対応であれば、何かを依頼しても簡単に拒絶されるとは考えにくく、結果的には「けんもほろろ」の対義語と言うことができます。
「けんもほろろ」の英語表現とは?
「けんもほろろ」は英語で”rebuff”
「けんもほろろ」は日本独自のことわざであるため、まったく同じ意味を持つ英語はありません。しかし、「けんもほろろ」な態度という意味であれば“rebuff”を使うことができます。
「rebuff his offer」などとすれば、「彼の依頼をけんもほろろに断る」と意訳することができます。
まとめ
「けんもほろろ」は、テレビや雑誌などでもたびたび目にすることわざです。「けんもほろろ」の意味を正しく知っていれば、その言葉を聞いただけで、いかに簡単にあしらわれてしまったのか、という状況をリアルにイメージすることができるでしょう。ぜひ、この機会に「けんもほろろ」を自分や誰かの状況に当てはめて、使ってみてください。