「江戸の敵を長崎で討つ」の意味や読み方とは?使い方と例文も紹介

「江戸の敵を長崎で討つ」ということわざをご存知でしょうか?言葉が示すニュアンスから「江戸の敵なら江戸で討てばよいのでは?」と不思議に思う人もいるかもしれませんが、ここに意味における鍵が隠れています。

早速、気になることわざの語源と意味をはじめ、使い方と例文、類語と対義語、また英語での表現を含めて解説しましょう。

ことわざ「江戸の敵を長崎で討つ」とは?

意味は「意外な場所や筋違いなことで仕返しをすること」

「江戸の敵を長崎で討つ」の意味は、“意外な場所や筋違いなことで、過去の恨みを晴らし、仕返しをすること”です。

たとえば、化粧品販売員のAさん売上でBさんにどうしても勝てません。しかし、愛想がよく顧客からも支持されていることから、販売員の人気投票でトップの座を射止めました。別の方法でBさんがAさん打ち負かしたのです。ごく簡単な例ですが、意味から見れば「江戸の敵を長崎で討つ」とも言えるでしょう。

おおむね、筋の通らないことや「なぜここで?」と思うような、本件とは無関係な場所で恨みの代償を晴らすのが、このことわざの意味するところです。そのため、人によっては非論理的でつじつまの合わない敵討ちと解釈することがあるかもしれません。

読み方は「えどのかたきをながさきでうつ」

「江戸の敵を長崎で討つ」の正しい読み方は、“えどのかたきをながさきでうつ”です。「敵」の部分を「てき」と読まないように気を付けましょう。

また、漢字表記の点では「討つ(うつ)」を「打つ」や「撃つ」とするのは誤りです。「敵を討つ」という基本の熟語表現に「江戸」と「長崎」の地名を含んだことわざとなります。

由来は「江戸で成功した見世物が長崎に人気を奪われた話」から

「江戸の敵を長崎で討つ」ということわざを聞いて、「なぜ江戸の敵をわざわざ長崎で?」と疑問に思った人もいるでしょう。由来となる一説に、ある見世物師たちが体験した「屈辱を交えた人気合戦」の話があります。

ある大阪の見世物師が江戸で行った竹細工の興行で、江戸の見世物師の人気を上回る人気を獲得し大成功を収めました。しかし同じころ、大阪では長崎のオランダ船やギヤマン細工の見世物が人気を博し、大阪の見世物師を圧倒してしまったのです。

総じて、江戸で勝利を得た大阪の見世物も、大阪では長崎の見世物には及ばなかったというところから「江戸の敵を長崎で討つ」が使われるようになったと言われています。

「江戸の敵を長崎で討つ」の使い方と例文とは?

「江戸の敵を長崎で討つ」の使い方と例文について解説します。

「江戸の敵を長崎で討つ」は見当違いな行動・発言に対して使える

「江戸の敵を長崎で討つ」と使う時は、行動や発言が見当違いで、誰から見てもピントがずれている時にも使えます。

たとえば、地方の遊園地を訪れた時に人気のアトラクションに2時間も待たされたとします。もちろん、「待たされた」というイライラ感は募るでしょう。数か月後、別の遊園地に行った時に、アトラクションの係員に無意味な言いがかりをつけて、散々文句をぶつけるようなことも「江戸の敵を長崎で討つようだ」と文章に取り入れることができます。

しかしながら、この例では全く関係のない人に対して憂さ晴らしをしています。まさに、とばっちりを受けた方は運が悪いというしか言いようがありません。

「江戸の敵を長崎で討つ」と使った例文

「江戸の敵を長崎で討つ」を使った例文をいくつか挙げてみます。

  • A課長はB社員に交際を断られたようだが、会議で意見を完全無視するのはおかしいだろう。江戸の敵を長崎で討たなくたってもよいのに。
  • 自分の子供に怒鳴ったことは何回もある。しかし、今になって仇討ちをするように、親戚中に悪口を言いふらすのは、江戸の敵を長崎で討つようなものではないか?

「江戸の敵を長崎で討つ」の類義語と対義語とは?

「江戸の敵を長崎で討つ」と言い換えのできる類語はあるのでしょうか?対義語とあわせて見てみましょう。

類語は有名なことわざ「江戸の仇を駿河で取る」

「江戸の敵を長崎で討つ」と同じような意味を持つことわざは「江戸の仇を駿河で取る」です。この言葉は、ある旅人が江戸で恨まれるようなことし、その相手が恨みを晴らすために、旅人が江戸から駿河に移動するのを待って、駿河で仇討ちをするという話から来ています。

それぞれ使われるようになった経緯は異なりますが、「江戸の敵を長崎打つ」も「江戸の仇を駿河で取る」も同じようなニュアンスで使われます。

「江戸の敵を長崎で討つ」の対義語は”正々堂々”や”正面突破”など

「江戸の敵を長崎で討つ」の正式な対義語は残念ながら見当たりませんが、言葉の意味を「筋違いの仇討ち」と解釈すれば、「正々堂々」や「正面突破」などが類語に当てはまると考えられます。正攻法でまともに責めるという意味でも「江戸の敵を長崎で討つ」とは逆のニュアンスがあると言えるでしょう。

「江戸の敵を長崎で討つ」の英語表現とは?

英語表現について、例文とあわせて紹介します。

英語では「avenge on someone in an unlikely way and place」

「江戸の敵を長崎で討つ」は独特な日本語表現が用いられているため、まず「飛んだ場所と方法で仕打ちする」という表現に砕いてから英訳しましょう。そうすると「avenge on someone in an unlikely way and place」となります。

「江戸の敵を長崎で討つ」の意味を持つ英語例文

実際に使えるシーンを連想して、英語例文を作ってみましょう。

  • Mum, there is a saying avenge on someone in an unlikely way and place which I have just learnt at school today. I know my brother is pain in the neck but doesn’t mean you can harsh on me.
    お母さん、弟が言うこと聞かないからと言って、私にきつく当たらないで。江戸の敵を長崎で討つってこのこと?学校で今日習ったばかりなんだから。

まとめ

職場でも「こんなところで敵を取らなくても」と思ったことはありませんか?「江戸の敵を長崎で討つ」は、江戸で行った大阪の見世物が、江戸の見世物をしのぐ勢いで人気を博したものの、大阪では長崎の見世物に、大阪の見世物が圧倒された、という話から出来たことわざです。

しかし、この表現を使う時は「執念深く恨みやつらみを晴らす」というニュアンスが軸ではなく、筋違いのことや意外な場所で仕返しをする、という意味に重心を置いて使われます。単なる「復讐」という意味合いが主であるのではなく、復讐の方法に捻じれがあったり、場所違いであるということです。

とにもかくにも、職場では理不尽でナンセンスな攻撃があっても、その場ではクールに受け止めるように心がけましょう。