「油断大敵」の意味と由来は?類語と英語表現を紹介(例文付き)

物事が順調に進んでいるときや終わりに近づいたとき、つい気を抜いてしまうことはありませんか?「油断大敵」とは「気を抜いてはいけない」という戒めの意味を持つことわざ。今回は「油断大敵」の詳しい意味と由来・語源を解説します。また「油断大敵」を使った例文と類語に加え、英語・中国語での表現もお伝えします。

ことわざ「油断大敵」の意味と由来とは?

「油断大敵」の意味は”気を抜くと思わぬ失敗をする”

「油断大敵」の意味は、“気を抜くと思わぬ失敗をすること”です。

「油断」は”気を抜くこと”や”注意を怠ること”を、「大敵」は”強く手強い敵”をそれぞれ意味しています。したがって「油断大敵」とは”油断こそが手強い敵”であり、「思わぬ失敗につながる」の意味となり、”気をぬいてはいけない・注意を怠ってはいけない”と言う戒めの言葉として使います。

「油断大敵」の由来・語源はいくつかの説がある

「油断大敵」の語源にはいくつかの説があり、そのうちの2つを紹介します。

仏教の経典が語源とされる説

「油断大敵」は、一説には原始仏教の経典「北本涅槃経」(ほくほんねはんぎょう)にある逸話が語源と言われています。

逸話は、インドの王様が家臣に対し「油を入れた鉢を持って街の中を歩くよう」命じ、油が一滴でも鉢からこぼれたときには処刑すると告げたというもの。鉢いっぱいに入れた油が一滴でもこぼれないように歩くのは極めて難しいことであり、このことが「注意を怠ると命取りになる」の意味の「油断大敵」の語源となったと言われています

古語「ゆたに」が語源とされる説

「ゆたに」とはのんびりとした様子を表す、万葉集にも使われている古い言葉です。「ゆたに」が変化して「油断」となり、「油断大敵」の言葉が生まれたとの説があります。

「油断大敵」の使い方と例文とは?

「油断大敵」は戒めの言葉として使う

「油断大敵」という言葉は、「気を抜いてしまいそう」「注意を怠ってしまいそう」と感じた時に、戒めの言葉として使います。

物事が順調に進んでいるときは、つい「気が緩んだり」「注意を怠けたり」することもあるでしょう。また勝負事においては、自分の力に絶対の自信を持っているときや、対戦相手が自分より劣っていると感じたときに「気を抜いて」しまうかもしれません。「気の緩み」や「注意を怠けること」により、思わぬ失敗や負けをまねくことがあるということを、「油断大敵」の言葉は戒めています。

「油断大敵」を使った例文

「油断大敵」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 彼は自分の能力を過信しており、周りからの「油断大敵」という忠告も全く耳に入っていない様子である。
  • 私は「油断大敵」を座右の銘としており、どんな事であっても常に気を抜くことなく取り組むようにしている。
  • 相手は格下だからとすっかり油断していたらストレート負けしてしまった。油断大敵とはまさにこのことだ。

「油断大敵」の類語・類似表現とは?

類語は「猿も木から落ちる」や「弘法も筆の誤り」など

「猿も木から落ちる(さるもきからおちる)」は、木登りが得意な猿であっても木から落ちることもあるということを例えた、”得意なことであっても時には失敗することもある”の意味を持つことわざです。つまり「油断大敵」同様”気を抜いていると思わぬ失敗をする”の意味を持っており、類語と言えます。

また「弘法も筆の誤り(こうぼうもふでのあやまり)」は、書の名人として知られる「弘法大師」であっても書き間違えはあることを例えとした慣用句です。こちらも「猿も木から落ちる」同様に、「油断大敵」と同じ意味を持つ類語となります。

「勝って兜の緒を締めよ」も”気を抜かない”の意味の類語

「勝って兜の緒を締めよ(かってかぶとのおをしめよ)」は、”うまくいっても気を抜いてはいけない。さらに気を引き締めよ”という意味を持つことから、「油断大敵」の類語と言うことができます。戦いに無事勝利して兜を脱いだ瞬間にも再び敵は襲ってこないとは限らないことを例えとしています。

類似表現「油断大敵火が亡々」は”油断大敵”と異なる意味

「油断大敵」という言葉を調べると、「油断大敵火が亡々」という言葉を見かけることがあります。「亡々」は”ぼうぼう”とひらがなで書かれることもあります。

類似した表現であることから「油断大敵」に近い”油断をすると火が広がってしまう”という意味に誤解する方がいるかもしれません。しかし、「亡」とは”なくなる”の意味を持っているため、「油断大敵火が亡々」は”油を断つと火が消えてしまう”という全く異なる意味を持つ慣用句となります。

「油断大敵」の英語と中国語表現とは?

英語では「Don’t be too sure of yourself」

英語で「油断大敵」を表現する場合は、“Don’t be too sure of yourself”を使うのが適しています。「Don’t be too sure of yourself」を直訳すると”自分自身に過信しすぎるな”の意味となり、「油断大敵」と同じ意味の英語表現としていますます。

「Security is a great enemy」も”油断大敵”の意味

「Security is a great enemy」というフレーズも、”油断大敵”の意味として使うことができます。直訳では「安心(Security)は最大の敵(enemy)である」との意味となり、「油断大敵」同様に安心を戒める言葉となります。

中国語では「粗心大意害死人」を使う

「油断大敵」は中国語では“粗心大意害死人”を使います。

「粗心大意」とは、日本語における「油断」の意味を持つ言葉です。中国語における「油断」という言葉は「油を切らす」の意味となり、日本語の「油断」のような「気をぬく」「注意をおこたる」の意味を持っていないため、混同しないよう注意が必要です。

まとめ

「油断大敵」とは、「気を抜いたり注意を怠けると、思わぬ失敗につながる」という意味を持つことわざです。自分に力があるから大丈夫、ここまでやったから大丈夫と気を抜いた時こそ、命取りとなる失敗や問題が待っていることがあるので「気を抜かないよう」にという戒めの意味を表しています。ビジネスにおいてもプライベートにおいても物事を進める際には、最後まで気を抜くことなくやりとげるということが大切と言えます。