「なにを言っても彼女には糠に釘」のように日常的にもわりとよく聞かれる「糠に釘」ということわざ。でも、この糠に釘って変な組み合わせですよね。この奇妙な組み合わせで、どのような意味のことわざなのでしょうか。
そこで今回は「糠に釘」の意味と由来、正しい使い方や例文を解説します。類語と英語表現もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ことわざ「糠に釘」とは?
「糠に釘」の意味は”効き目がないことのたとえ”
「糠に釘」の意味は、“効き目がないことのたとえ”です。「ぬかにくぎ」と読みます。
人に意見を言ったとしても、その人は聞く耳を持たず、なにも効果がないといった状況で使われるたとえであり、ことわざです。
「糠に釘」の由来
「糠に釘」ということわざは、糠のようにやわらかいものに釘を打ち入れても刺さるどころか、すぐに抜けてしまいます。
つまり何も手ごたえがないことから、「糠に釘」ということわざが生まれました。
糠とは「主に米を精白したとき残るカス」
「糠に釘」の「糠」とは、穀類の中でも、特にお米を精白したときに残る皮のカスや胚芽のことをまとめて「糠」と言います。
糠には食物繊維やビタミンの中でもB類とE、そしてミネラルなどが豊富に含まれていることから、飼料や肥料として利用されています。
また日本ではその栄養分を利用した漬物であるぬか漬けを作るための「ぬか床」としても使われています。
「糠に釘」の使い方と例文とは?
「効果がないこと」のたとえとして使う
「糠に釘」ということわざは、その人のことを思って言ったことでも受け入れられることなく効果がないといった時のたとえとして使われます。
このことわざが使われるとき、使う人はその人に対しては呆れてしまうといった心情が込められています。
「糠に釘」を使った例文
「糠に釘」を使った例文をご紹介しましょう。
- 「いくら注意しても彼には釘に糠だ」
- 「最近の若者とって年上の説教なんて、まるで釘に糠だ」
- 「食後に食器を下げるように何度言っても釘に糠で、まったく手伝ってくれない」
- 「いろいろ対策を打ち出したものの、すべてが釘に糠。株価の下落が止まらない」
「糠に釘」の類語とは?
類語は「豆腐に鎹」や「暖簾に腕押し」など
「糠に釘」と同じ意味のことわざはたくさんあります。そこでその中から特に有名なものを紹介します。
- 「豆腐に鎹」(とうふにかすがい)
「豆腐に鎹」とは「いくら意見を言っても、少しの手ごたえがなく、効き目もないことのたとえ」です。
鎹(かすがい)とは、材木と材木をつなぎ部分を補強するためのコの字型をした金具のことです。
たまに「豆腐」と「糠」を混乱してしまって、「糠に鎹」という言い間違えが聞かれます。正しくは「豆腐に鎹」であり「糠に釘」です。
- 「暖簾に腕押し」(のれんにうでおし)
「暖簾に腕押し」とは、「相手に対するときに、力を入れても手ごたえがないことから、張り合いのないことのたとえ」です。
力比べをして競おうにも相手が暖簾のように力もなく弱い相手なら、対抗相手として手ごたえがありません。そのように手ごたえのない相手のたとえとして生まれたことわざです。
例文:
「だいぶ前からヘッドハンティングの話を持ち掛けていたが、彼には暖簾に腕押しで転職に応じてくれそうにない」
- 「石に灸」(いしにきゅう)
石にお灸をすえても焼けず灸がほぐれることもないことから、「何の効き目もなく反応もないことのたとえ」です。
例文:
「いくら説得しても無駄。彼女には石に灸だよ」
「糠に釘」の英語表現とは?
「糠に釘」の直訳は”nail in the rice bran”
「糠に釘」を英語で直訳すると、糠は「bran」ですが、「bran」だとどの穀類から残るふすま(皮の屑)かがわからないので、より詳しく米のふすまだということを言うために「rice bran」と言います。
そして釘は「nail」ですから、「糠に釘」は“nail in the rice bran”になります。
「糠に釘」の意味の英訳
「糠に釘」の意味は、「効き目がない」とは「効果がない」といった意味から、“having no effect”(効果がないこと)と訳したり、「努力しても無駄」と言い換えて “waste of effort”と英訳することもできます。
例文:
“Advice to him is a waste of effort.”「彼にアドバイスしても糠に釘だよ」
“In spite of having no effect she has continued to take the medicine.”「糠に釘にも関わらず、彼女はその薬を飲み続けている」
「糠に釘」と同じ意味の英語のことわざ
「糠に釘」と同じ意味になることわざやたとえが英語にもあります。「効き目がない」という意味を伝えるのに、様々なものを使って表現しているのが興味深いです。
- “All is lost that is given to a fool.”「愚か者に与えられたものはすべて失われる」
- “He catches the wind with a net.”「彼は網で風を捕まえる」
- “beating the air.”「空気を叩くこと」
- “water on a duck’s back.”「アヒルの背中の上の水」
糠に役立つ釘もある「ぬか床に釘」
「糠に釘」といったら「効き目のないことのたとえ」ですが、糠に釘を入れて役に立つこともあります。
それはナスでぬか漬けを作るときに、ぬか床にナスと一緒に釘を入れておくと、ナスが変色するのを防ぐことができます。
ナスの色素であるナスニンとヒアシンは、糠に含まれる酸性成分と結びつくことでその効果が弱まり、ナスの色がこげ茶などの暗い色に変ってしまいます。ところが釘と一緒にナスを糠に漬けると、釘の鉄分がナスの色素と結びつき、その効果が保たれます。
その結果、きれいなナスの色のままぬか漬けができるのです。
まとめ
「糠に釘」とは「効き目がないこと」という意味のことわざです。人の話を聞かない、話をしても効き目がないといった状況で使われることわざです。似たことわざも多いことから言い間違えには注意しましょう。