「風前の灯火」の意味と由来とは?使い方や例文と類語・対義語も!

「風前の灯火」は書籍や映画・ゲームなどのタイトルにも使われることのある、比較的一般的なことわざで、「危険が迫っていること」を意味する言葉です。今回は「風前の灯火」の意味と読み方について紹介します。また、使い方について例文を用いて解説するとともに、類語・対義語と英語での表現についてもお伝えします。

ことわざ「風前の灯火」とは?

「風前の灯火」の意味は”非常に危険な状態であること”

「風前の灯火」の意味は、“物事が非常に危険な状態であること”です。いまにも滅びてしまいそうなほど危険な状態であることを表したことわざです。物事が危険な状態にあるだけでなく、人や動物など生き物の「命」が”いまにも滅びてしまいそうな状態”の意味もあわせ持っています。

「風前の灯火」の読み方は”ふうぜんのともしび”

「風前の灯火」の読み方は、“ふうぜんのともしび”です。

「風」は「かぜ」「かざ」「ふう」など複数の読み方をする漢字ですが、「風前」は「ふうぜん」と読みます。また、「灯火」という言葉は「とうか」と読む場合もありますが、ことわざ「風前の灯火」においては「ともしび」が正しい読み方です。

「風前の灯火」の由来

「風前の灯火」は、それぞれの言葉の意味に由来しています。「風前」とは「風が吹く真正面」や「風が当たる場所」を、「灯火」とはろうそくやランプなどの「火をつけた灯り」をそれぞれ意味する言葉。「風前の灯火」とは、「風の真正面にある火」を例えとしたことわざとなります。風の真正面に置いた火はいますぐにも消えてしまいそうな頼りなげな様子であることから、「非常に危険な状態であること」の意味となっています。

「風前の灯火」の使い方と例文とは?

「いまにも滅びそうな」危機的状況で使う

「風前の灯火」と言う言葉は、「いまにも滅びそうな」危機的な状態である場合に使います。もう少し時間が経てば滅びるような状態、また何かのきっかけがあればすぐにでも滅びてしまうような不安定な状態を指しています。また、「風前の灯火」は、人や物・物事など使う対象を選ばず使うことができる言葉です。

「風前の灯火」を使った例文

「風前の灯火」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 風前の灯火の状態に陥った会社を、短い期間でよくぞここまで立て直しできたものだ。さすが、彼が見込んだだけのことはある。
  • もうこれ以上何の打つ手も見当たらず、逃げることすらままならない状態だ。見渡す限りの四方八方を無数の敵に取り囲まれており、我が軍は風前の灯火だ。
  • 危篤の知らせを受けて急ぎ病院に駆けつけたが、既に風前の灯の状態にあり、目を合わせることも言葉を交わすこともできなかった。

「風前の灯火」の類語・別の表現とは?

「風前の灯火」の類語は”風の前の塵”

「風の前の塵」(かぜのまえのちり)とは、「風前の灯火」同様”危機が迫っていること”を意味する言葉です。「風の前の塵」とは、塵は風が吹くとすぐに飛んでいってしまうことを例えたことわざで、「はかないこと」を意味しています。「風の前の塵」と聞くと、古典である「平家物語」の一節「ひとえに風の前の塵に同じ」を思い起こす方も多いことでしょう。

類語「泥舟に乗る」は”危機的な状況にある”の意味

「泥舟」(どろぶね)とは泥で作った船のこと。しかし泥でできた船は壊れやすく、いつ沈むかもしれない危険な状態のものです。いまにも沈んでしまいそうな「泥舟に乗る」とは、「風前の灯火」と同じ”危機的な状況にある”の意味を持った類語となります。

四字熟語「絶体絶命」も「風前の灯火」の類義語

「絶体絶命(ぜったいぜつめい)」とは、”追い詰められた状態・危機が差し迫った状態”の意味を持つ四字熟語です。したがって、「風前の灯火」の”非常に危険な状態であること”の類義語であると言えます。

「風前の灯火」の別の表現

「風前の灯火」は、”風前の灯”や”風の前の灯火”と別の言い方をすることもあります。なお、「風前の灯火」を、「空前の灯火」とするのは間違い表現です。「空前の灯火」は実際には存在しない言葉であるため、「風前」と「空前」を間違って使わないように注意しましょう。

「風前の灯火」の対義語とは?

対義語は「灯滅せんとして光を増す」

「灯滅せんとして光を増す」の読み方は、”とうめっせんとしてひかりをます”です。「灯りが消える前に一瞬強く輝く様子」を例えとした言葉です。意味は”物事が滅びる前に一時的に勢いを取り戻す”となり、「風前の灯火」の意味である”いまにも滅びそうな危機的な状況”の反対語ということができます。

「風前の灯火」の英語表現とは?

英語では「A candle flickering before the wind」

「風前の灯火」の英語表現には、“A candle flickering before the wind”を使います。

「flickering」とは”flicker”の現在分子形で「ちらちらする・点滅する」などの意味をもつ言葉。「A candle flickering before the wind」直訳すると”風の前で点滅するろうそく”となり、ことわざ「風前の灯火」と同じ意味として使うことができます。

“precarious situation”も「風前の灯火」の英語表現

「precarious」とは「不安定な」の意味を持つ形容詞です。“precarious situation”とは、「不安定な状況」の意味を持っており、「風前の灯火」を表す英語表現として使うことができます。

なお、「be in an extremely precarious situation」と使う場合は、「風前の灯火の状態にある」の意味となります。

まとめ

「風前の灯火」とは「非常に危険な状態」や「いまにも滅びそうな状態」を意味することわざ。風の前に置いたろうそくの火のように、いまにも消えそうな危機的な状態であっても、再び持ち直して盛り返した事例もあります。「風前の灯火」の状態に陥ったとしても最後まで諦めない、そのような強い気持ちを持って何事にも挑んでいきたいものです。