「好きこそ物の上手なれ」ということわざは学生だけでなく、ビジネスマンとなってからも比較的頻繁に耳にするかもしれません。今回は「好きこそ物の上手なれ」の意味や語源・文法・使い方と例文などについて解説します。類似した意味を持つ類語や逆の意味を持つ対義語もご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
「好きこそ物の上手なれ」とは?
「好きこそ物の上手なれ」の意味は”好きなことは上達しやすい”
「好きこそ物の上手なれ」の意味は、“好きなことは上達しやすい”です。比較的広く認識されていることわざで、日常でもよく耳にします。
どんな物事でも、上手くなったり深く知ったりするためには、その物事に興味を持つことが大切と言われています。興味を持つことで、その物事を好きになり、そこから上達が始まる、という古くから言い伝えられてきたことを、そのままことわざにしたのが「好きこそ物の上手なれ」です。
「好きこそものの上手なれ」とも書く
「好きこそ物の上手なれ」ということわざは、基本的には”物の上手なれ”と書きますが、本などによっては「好きこそものの上手なれ」とひらがなで書かれていることもあります。どちらも意味は同じですし、どちらが間違いということもありません。
厳密に言えば「物」は物質として手に取ることができるもの、「もの」は比較的抽象的、または物質が限定されていない場合に使います。たとえば、バイオリンが上手な人は「好きこそ物の上手なれ」となり、走ることが得意な人は「好きこそものの上手なれ」ということです。
「好きこそ物の上手なれ」の語源・由来と文法
語源・由来は「好きであることが上達の秘訣」という教え
ことわざは、どれも昔の人が言い伝えてきたことが元になっています。「好きこそ物の上手なれ」も同様で、語源や由来というのは特に明かされておらず、昔からの教えがそのままリズムの良いことわざとなっています。
昔から何かが上手になったり、得意になったりする人はみんな、「それが好き」という共通点があったと言います。それが「上手だから好きなのではなく、好きだから上手になったのだ」と解釈され、現代に伝わることわざとなったようです。
論語では「之を知る者は、之を好む者に如かず」
中国の思想家だった孔子と、その弟子の問答を集めた「論語」の中に、「好きこそ物の上手なれ」と似た意味を持つ言葉があります。それが「之を知る者は、之を好む者に如かず 之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」です。
これは、日本語にすると「それが好きな人、楽しむ人にはかなわない」という意味になります。「好きこそ物の上手なれ」と同じで、物事は好きな人や楽しむ人ほど上達する、ということです。
文法上「こそ」の結びは”なれ”
「好きこそ物の上手なれ」ということわざを聞いたときに、疑問に感じやすいのが「こそ」と「なれ」の意味です。「こそ」とは直前に来る言葉を強調する役割をします。「好きなことは特に」という意味を「好きこそ」で表すということです。
「なれ」とは普段聞き慣れない言葉ですが、文法上では「こそ」で始まる文章の結びは「なれ」と決まっています。この「なれ」は断定の意味を持つ助動詞の「なり」を已然形にしたものです。現代語に直すと「~だ」という意味になります。
「好きこそ物の上手なれ」の類義語・反対語とは?
「好きこそ物の上手なれ」の類語は”好きは上手の基”
「好きこそ物の上手なれ」の類語はいくつかありますが、比較的使いやすいのは「好きは上手の基(すきはじょうずのもと)」です。
「好きは上手の基」とは、物事が上手な基(コツ)は好きであることだ、という意味のことわざです。「好きこそ物の上手なれ」と同じ使い方で、ほぼ同じ場面で使うことができます。
「好きこそ物の上手なれ」の反対語は”下手の横好き”
「好きこそ物の上手なれ」の反対の意味を持つ対義語もいくつかあります。その中でも、耳にしたことがあるという人が多いのは「下手の横好き(へたのよこずき)」です。
「下手なくせにそれが好きな人」を指して「下手の横好き」といいます。「横好き」の「横」とは、その道に外れている、道理に合わない、という意味です。
つまり「その人は好きなものの道理に合わないことをしていて下手である」ということを言っています。
「好きこそ物の上手なれ」の使い方と例文とは?
「好きこそ物の上手なれ」は人を褒めるときに使う
誰かが何かを上手にしていたり、得意としていることを「好きこそ物の上手なれ」ということわざで表すことができます。自分以外の人が、何かを好み、それを得意としていることを「好きこそ物の上手なれ」ということわざで褒めることができるのです。
- 「彼の作るプログラムにはいつも感心させられる、まさに好きこそ物の上手なれだね」
- 「彼女は幼いころから運動が好きだったそうだが、やはり好きこそ物の上手なれで、ついには今度の大会に出場するほどになった」
ビジネスや勉強をまずは好きになれという意味で使う
ビジネスシーンでは、これから仕事を覚える人などに、まずはその仕事を好きになるところから始めるよう、教育することがあります。また、これは勉強などにも通じ、勉強ができるようになりたいのであれば、まずは勉強自体を好きになることが大切、という意味で「好きこそ物の上手なれ」を使うことがあります。
- 「どんな仕事も、好きこそ物の上手なれだよ、まずは興味を持ってみよう」
- 「勉強がいやだと思うからできない、まずは好きこそ物の上手なれで、好きになるところから始めてみてはどうかな」
座右の銘・名言としても使われる
どんな物事にも興味を持って、自分のものにする人間になりたい、と考える人もいます。そういう人の座右の銘としても「好きこそ物の上手なれ」は良く挙げられているようです。
座右の銘にことわざを使う人や、偉人の中にもことわざを使った名言を残している人もいます。「好きこそ物の上手なれ」はそのような使い方をされることもある、大変有名なことわざです。
「好きこそ物の上手なれ」の外国語表現とは?
英語では「What one likes, one will do well」
「好きこそ物の上手なれ」は日本語のことわざなので、英語圏の人に伝えるには英訳する必要があります。
「好きこそ物の上手なれ」は英語で「What one likes, one will do well」です。「好きなことは上手にできる」という意味の言葉で、日本語の「好きこそ物の上手なれ」と同じ意味で使うことができます。
中国語では「兴趣是最好的老师」
「好きこそ物の上手なれ」は中国語にもすることができます。中国語では「兴趣是最好的老师」です。
「兴趣是最好的老师」は中国語の格言で、日本語の「好きこそ物の上手なれ」と同じ意味で使うことができます。
フランス語では「On ne fait bien que ce qu’on aime」
「好きこそ物の上手なれ」をフランス語を話す人に伝える場合は、フランス語に訳す必要があります。フランス語では「On ne fait bien que ce qu’on aime」です。
「On ne fait bien que ce qu’on aime」はフランス語のことわざのひとつで、日本語の「好きこそ物の上手なれ」と同じように使うことができます。
まとめ
「好きこそ物の上手なれ」ということわざは、比較的幼いころから耳にしてきたという方も多いかもしれません。何事も好きになることから上達が始まる、という言葉は子供だけでなく大人にも共通しています。
ぜひ「好きこそ物の上手なれ」ということわざをきっかけに、自分が好きなものを見直してみてください。