「風上にも置けない」の意味とは?由来と類語と一緒に英語表現も

社会の声に耳を傾けながら生活していると、自然と多くのことわざを耳するようになります。中でも「風上にも置けない」は日常生活でもよく使われる一つではないでしょうか?

今回は相手をののしる時に使う「風上にも置けない」に注目し、言葉の由来と意味や使い方をはじめ、類語と対義語、英語と中国語表現についてまとめています。さて、気になる由来とは?

「風上にも置けない」の意味と由来とは?

「風上にも置けない」の意味は”卑劣な者を憎しみ罵る”

「風上にも置けない」の意味は、“性質や行動などが卑劣である時、憎しみ罵ること”です。つまり、相手の言動や性格を含めて、憎しみの気持ちを持って放たれる言葉となります。人道に外れ、卑劣で卑怯、鼻持ちならないと感じた時に相手を蔑む(さげすむ)意を持って放たれる表現の一つです。

また、広い意味では「卑劣を逸しているので、仲間としては到底扱うことができない」というニュアンスを含む表現でもあります。

「風上にも置けない」の由来は科学的な根拠”悪臭は風下へ”

普段何気なく口にすることわざでも、科学的な観点で見たものを比喩的に用いるものは案外少ないかもしれません。実は、その一つが「風上にも置けない」です。

悪臭を発する物質を風上に置くと、風下は風上の悪臭の影響を多分に受けて、臭くて困ってしまいます。風上に嫌なニオイを放つものがあると、その臭いが風下にどんどん溜まってしまい、非常に臭くなってしまうのです。

つまり、「風上にも置けない」は「風上の悪臭は風下に向かってやってくる。(つまり、風下にいる人はたまったものではない)」という科学的な根拠から来ています。

「風上にも置けない」の使い方と例文とは?

「風上にも置けない」の使い方と状況に触れながら、実際に会話文を作ってみましょう。

「風下にも置けない」は誤用

「風上にも置けない」で最も多い誤用例は「風下にも置けない」と「風上」では「風下」を使うケースです。誤用が生まれた経緯は「風上はもとより風下に悪臭が漂っても、被害は少ない。しかし、それにも及ばず価値がない」という意味で生まれた誤用だと推測されます。

友達同士や家族の間では冗談で通じる表現かもしれませんが、正式な場所では不適切な使い方となりますので気を付けましょう。

「風上にも置けない」を使う時は”強い怒り”を伴う

「風上のも置けない」という表現は、笑顔や照れた表情で使われることはほぼありません。何がどう転んでも「同じ人として仲間であるとは到底考えることができない」といった、強い怒りの気持ちを伴うのが通常です。

相手をそこまで不快にさせてしまった経緯は人さまざまです。しかし、逆にそこまでよほどひどいことをしたり、低劣で野卑な言動をしない限り「風上にも置けない」という表現は使われないかもしれません。

「風上にも置けない〇〇」と形容詞的な使い方も

「風上にも置けない」は「~は風上にも置けない」という使い方の他に、「風上にも置けない〇〇(人、奴、行為、態度など)」のように形容詞的な使い方をすることもあります。

たとえば、その態度が許せない、その言動が許せない時は、「風上にも置けない態度」や「風上にも置けない言動」と表現することができます。

「すみに置けない」や「気が置けない」を同じ意味で使うのは誤り

「風上にも置けない」に似た言葉に「すみに置けない」や「気が置けない」があります。しかし、この二つは「風上にも置けない」と異なる意味を持つため、意味や使い方を混同しないようにする必要があります。

ちなみに「すみに置けない」は「あなどれない」、「気が置けない」は「親密な間柄」を表す言葉となります。混同しないように気を付けましょう。

「風上にも置けない」を使った会話例文

「風上にも置けない」を使った会話例文をご紹介しましょう。

  • 10年間も世話になった上司に罵倒を繰り返すなんて、人間の「風上にも置けない」奴だ。
  • チームの「風上にも置けない」と言われないように、誇りとプライドを持って戦う。
  • ライバル会社に卑劣な手で潰された。同業者とは思えぬ「風上にも置けない」行為だ。

「風上にも置けない」の類語や対義語とは?

「風上にも置けない」と言い換えのできる類語にはどのような言葉があるのでしょうか?反対の意味を持つ対義語と併せて紹介します。

「風上にも置けない」の類語は”非道徳的な”や”倫理にもとる”など

「風上にも置けない」の類語は、意味の解釈から考えるとたくさんあります。たとえば、“非道徳的な”“倫理にもとる”、また“人の道を外れる”“反倫理的な”などが挙げられるでしょう。

また、「反社会的な」も類語に属すると考えられますが、個人的な感情を含む強い表現の一つでもありますので、相手や状況を観察してから使うようにすることが大切です。

その他、カタカナ語の類語に「インモラルな(モラルの無い)」や「モラルに反した」また「モラルハザードな(モラルに触れる)」がありますが、文脈に沿う形で適語を選ぶようにすることが大切です。

「風上にもけない」の対義語は”道徳心のある”や”心清く正しい”など

一方、「風上にも置けない」の対義語にあたるのは、“道徳心のある”“心清く正しい”、また“人道にのとった”“倫理観のある”などです。

また、相手を尊敬し褒めたたえる気持ちが強ければ、「高潔」や「卑しさのかけらもない」を使うこともできます。

「風上のも置けない」を英語や中文とは?

「風上にも置けない」を英語と中国語で表現してみます。国際化を意識して、外国語のボキャブラリーも増やしていきましょう。

「風上にも置けない」は英語で”inhumane”や”unethical”など

英語で「風上にも置けない」を言う時は直訳しても意味が通じません。まず、「非人道的」や「非倫理的」というように、相手に理解できるよう意訳をしましょう。

最も適切な表現なのは「inhumane(非人道的)」「unethical(非倫理的)」です。たとえば、「風上にも置けない態度だ」なら「It was inhumane(unethical) behavior」となります。

「風上にも置けない」は中文で”非人道的行为”

中国語で「風上にも置けない」を言う時は“非人道的行为”とするのが一般的でしょう。日本語としても解釈できる表現ですが「行為」の「為」が「为」となる点が異なります。

まとめ

「風上にも置けない」は、到底、同じ人として仲間と思えないと感じた時に、怒りを込めて放たれる言葉です。人道に反した行為や性質に対し、相手をののしる意を持って使われますが、このことわざが会話や文章に登場する時は、よっぽどひどい経験を味わった後であることがほとんどです。

ビジネスでも相手や行為(手口や戦略)を批判する場面で「風上にも置けない」を使うことがありますが、面と向かって言葉を放ち、喧嘩にならないように気を付けましょう。