「大山鳴動して鼠一匹」の意味とは?使い方や類語・対義語も解説

「大山鳴動して鼠一匹」ということわざを知っていますか?大きな「大山」に対し、小さな「一匹の鼠」という対照的な二つが登場する面白い表現となりますが、一体どのような意味があるのでしょうか?

今回は「大山鳴動して鼠一匹」を解説したいと思います。意味と由来をはじめ、使い方と例文、類語と対義語、そして英語と中国語表現を含めてまとめました。

ことわざ「大山鳴動して鼠一匹」とは?

「大山鳴動して鼠一匹」の意味は”大騒ぎに比べて実際の結果が小さい”

「大山鳴動して鼠一匹」の意味は、“事前に大きく騒いだわりには、期待した結果が小さなこと”です。

「鳴動」とはうなりを上げて動き揺れることを指しますが、もともと「大山が激しく動いたので、大爆発でもするのかと思いきや、何とも小さな鼠が中から出てきた」というところから出来たことわざとなります。

「大山鳴動して鼠一匹」の読み方は”たいざんめいどうしてねずみいっぴき”

「大山鳴動して鼠一匹」の正しい読み方は“たいざんめいどうしてねずみいっぴき”です。「大山」を”おおやま”、また「鳴動」を”みょうどう”などと読まないように気を付けましょう。

「大山鳴動して鼠一匹」の由来は古代ローマの詩人の言葉

「大山鳴動して鼠一匹」という重々しく古風な響きから「由来は中国なのでは?」と思う人も多いことでしょう。しかし、ことわざの由来は西洋・古代ローマの詩人「クィントゥス・ホラティウス・フラックス(Quintus Horatius Flanccus:ホラティウスとして有名)」が述べた詩の一節となります。

由来となる原文は「Parturiunt montes, nascitur ridiculus mus」で、意味は”山々は産気づき、一匹の滑稽なハツカネズミが産まれる”となります。

ちなみに、ホラティウスはありふれた自然の動きに目を留め、人生の教訓としても学べる美しい詩を書くことで知られるイタリア人詩家です。

「泰山鳴動して鼠一匹」や「大山鳴動鼠一匹」とも書く

「大山鳴動して鼠一匹」は別に”泰山鳴動して鼠一匹”や”太山鳴動して鼠一匹”と書くこともあります。ことわざの中の「泰山」は中国・山東省にある「泰山」を指しているわけではなく、一般的に「大きく高い山」を表しています。

また、同じ意味で「大山鳴動して一鼠出ず」と表現したり、「大山鳴動鼠一匹」と漢字のみで表記することもあります。

「大山鳴動して鼠一匹」の使い方と例文とは?

実際に「大山鳴動して鼠一匹」を会話で使えるように、正しい使い方とわかりやすい例文を紹介します。

大騒ぎの後で「え、何これ?」と拍子抜けする時に使う

「大山鳴動して鼠一匹」を使う場面は、日常生活の至る所でみつけることができます。

たとえば、子供が「お腹が痛い!もうダメ!」と大騒ぎし、重病かと心配し病院に飛んでいったものの、結局ただの「食べすぎ」だったとわかった…。また、イベントや劇などで観客の期待をあおって大げさに「さて、次に登場するのでしょうか?」とした後に、何ともかわいらしい小さな指人形が出てきたり、「え、何これ?」、「これだけ?」と感じるような状況で使うのが適切です。

大げさなアピールや前置きとはトンと異なり、完全に拍子抜けしてしまうような状況の時に使うと、ことわざの意味がグンと生きてきます。

「大山鳴動して鼠一匹」を使った例文

「大山鳴動して鼠一匹」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「大山鳴動して鼠一匹」というように、結婚式のフィナーレは実に質素だった。
  • 「入院だ」と大騒ぎするも、それはただの軽い二日酔いだった。「大山鳴動して鼠一匹」でる。
  • 大山鳴動して鼠一匹」ではないが、予報では大嵐でも、実際は小雨程度の時もある。

「大山鳴動して鼠一匹」の類語と対義語とは?

「大山鳴動して鼠一匹」と言い換えができる類語と、逆の意味を持つ対義語について解説します。

「大山鳴動して鼠一匹」の類語は”蛇が出そうで蚊も出ぬ”

「大山鳴動して鼠一匹」の類語には“蛇が出そうで蚊も出ぬ(じゃがでそうでかもでぬ)”があります。意味は「明らかに蛇が出そうな雰囲気や場所ながら、予想に反して極小の蚊も出て来やしない」となり、派手に騒ぎ立てるも、取り立てて事件にもならず、大したことはないというニュアンスで使われます。

「蛇が出そうで蚊も出ぬ」の逆は”藪をつついて蛇を出す”

一方、逆の意味を持つ正しい対義語は見当たりませんが、いかにも蛇がいそうな藪をつつけばば、その通りに蛇が出てくることを指す「藪をつついて蛇を出す」が挙げられるでしょう。意味は転じて「事態は収まっているのに、余計なことをして災難を招く」となります。

覚えておきたい「鼠」を使ったことわざ3選

「大山鳴動して鼠一匹」のように、ことわざに「鼠」が登場することわざを3つ紹介します。

「鼠に投げんとして器に忌む」

器の横にいる鼠にものを投げつけようとしても、器にあたって壊すのが心配で投げることができない、つまり「君主に使える悪い家来を追い払おうとしても、うっかり君主に被害を与えてしまうことを恐れる」という意味があります。

「鼠壁を忘る、壁鼠を忘れず」

鼠は昔噛んだ壁を忘れてしまっても、壁には噛んだ後が残るため、壁が鼠を忘れることはないことを指し、転じて意味は「仇や敵は永遠に忘れることはない」となります。

「鼠は沈む船を去る」

鼠はこれから起こることを予知する能力がある、ということをストレートに表現することわざです。「悪い出来事が起こる前に、この場所(環境)を離れましょう。」というように、注意喚起の意をもって比喩的に使われます。

「大山鳴動して鼠一匹」の英語と中国語表現とは?

「大山鳴動して鼠一匹」は英語で”Much ado about nothing”

英語で「大山鳴動して鼠一匹」を表す時は、意味を要約してから適切なフレーズに直しましょう。最も、シンプルで理解しやすいのが「空騒ぎ(結果のないことに対して騒ぐこと)」を意味する“Much ado about nothing”です。例文を挙げてみましょう。

  • Rumor said there would be huge change in personnel but it ended up only for CEO. It was sort of much ado about nothing.
    大規模な人事異動があると噂されたが、実際は社長交代だけだった。まさに「大山鳴動して鼠一匹」である。

「大山鳴動して鼠一匹」は中国語(中文)で”雷声大,雨点小”

中国では「雷声大,雨点小(léi shēng dà、yǔ diǎn xiǎo)」と言います。大きな騒ぎのわりに、実際は小さい結果であることを意味する表現です。

まとめ

「大山鳴動して鼠一匹」は古代ローマの詩人が書いた詩の一節で、意味は「大騒ぎするも、実際は小さな結果であること」となります。意味をかみ砕いて解釈すれば、結果的には「思ったほどではない」「何とも拍子抜けする」といったニュアンスが強いことわざとも解釈できるでしょう。

ビジネスシーンでたとえるなら「バラエティ豊かで色とりどりのデザインを多数用意しています」と言われ、訪問したら「シンプルなデザインが2,3個しかなかった」というように、「大げさだな」と感じるような状況がピッタリ当てはまります。ぜひ、ご自身の語彙集に追加してみて下さい。