「十把一絡げ」とは?読み方と類語に気になる方言説も(英語付き)

日本には読み方の難しい言葉がたくさんありますが、その中の一つに「十把一絡げ」があります。数字の「十」と「一」が入る言葉となりますが、一体どのような意味があるのでしょうか?

今回は「十把一絡げ」をピックアップし、言葉の意味と由来をはじめ、方言説、使い方とその例文、類語と対義語、また英語や中国語の表現をまとめています。これを機会に、語彙力アップを目指してみませんか?

「十把一絡げ」とは?

「十把一絡げ」の意味は”多くの物を区別なく一緒くたにする”

「十把一絡げ」の意味は、“多くのものを区別なく一緒くたにする”です。多数あるものを種類や特徴の区切りなくまとめたり、差別なく全部一つにまとめて扱うというニュアンスがあり、ないまぜにすることを意味します。

「十把一絡げ」の読み方は”じっぱひとからげ”

「十把一絡げ」 の読み方は、“じっぱひとからげ”です。

ちなみに、現代では「十」は「十個(じゅっこ)」や「十分(じゅっぷん)」というように、「じっ」ではなく「じゅう」読むのが普通でしょう。もちろん、この読み方の方が語呂も良く読み心地もよいのですが、常用漢字表では「じっ」の音が記載され、「十個」を「じっこ」、また「十分」を「じっぷん」と読むのが正しい慣用とされています。

「十把一絡げ」の語源は”束をひもで結ぶ”

「十把一絡げ」はもともと「たくさんあるものを束にして、縄やひもで縛る」ことから生まれた言葉で、「十個のものを一つの束に結ぶ」ことを表現した慣用句となります。ちなみに「絡げ」の「絡げる」とは「縛り束ねる」や「くくる」という意味を持つ言葉です。

「十把一絡げ」は方言?

中京地方では「絡げる」を「十把一絡げ」と同じように「しばり束ねてくくる」という意味で普通に使っているようです。また、他の地方では「着物の裾をあげること」を「裾を絡げる」と言うところもあります。方言というよりは、昔ながらの表現をそのまま大切に使っていると解釈したほうが良いのかもしれません。

「十把一絡げ」の使い方と例文とは?

「十把一絡げ」の使い方と例文が理解できたら、今度は実際に会話や文章で使ってみましょう。「十把一絡げ」の使い方と気を付けたい点をわかりやすい例文と併せて挙げてみます。

「面倒くさいから…」というニュアンスを与えないように

「十把一絡げ」とは「一緒くたにまとめる」また「一つでは価値がないからひとくくりにする」というニュアンスを持つ表現です。日常でもビジネスシーンでも、複数のものや多数のことがらを扱う場面に遭遇しますが、ことに取引の発生するビジネスにおいては、相手に不快な感情を与えないように考慮する必要があります。

たとえ、どれも同じように見える商品でも、相手にとっては特別なものであり(価値があり)「それぞれ分ける必要がある」「丁寧に扱うべきである」と考えるかもしれません。そのような状況で「十把一絡げ」を使ってしまうと、相手に「面倒だから一緒くたにする」また「粗末に扱う」といった誤解を与えることがあるかもしれません。ぜひ、「十把一絡げ」をビジネスシーンで用いる時は、相手の状況や考えをじっくり読んでから使うようにしましょう。

「十把一絡げ」を使った例文

「十把一絡げ」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 母の家では香辛料も調味料も「十把一絡げ」に戸棚に置かれている。
  • 東京出身というだけで都会育ちだと、いつも「十把一絡げ」にされてしまう。
  • 彼の誤った発言を「十把一絡げ」にして考えるのはどうかと思う。
  • クラスの生徒全員を「十把一絡げ」で見てしてしまうと、せっかくの個性が生きてこなくなる。
  • 「十把一絡げ」にするなよ。このありふれたTシャツだって僕にとっては意味のあるんだから。

「十把一絡げ」の類語と対義語とは?

「十把一絡げの類語と対義語について解説します。

「十把一絡げ」の類語は”一括”や”ごちゃまぜ”など

「十把一絡げ」という表現が相手に対し堅苦しいと思われる時は、別のわかりやすい言葉を選ぶことも大切です。

「十把一絡げ」の類語で最も使いやすい類語は「一括」や「ごちゃまぜ」、また「一緒くた」や「全部まとめて」となります。その他に、多くのものごとの根源が一つであることを指す「一元的」や、全体を一つの並びとして扱う「押し並ぶ(おしなぶ)」も、意味の上では類語と解釈できるでしょう。

「十把一絡げ」の対義語は”個別扱い”や”多元的”

「十把一絡げ」の正式な対義語は見つかりませんが、意味の上から反対となる言葉を探すと「個別扱い」や広い意味では「多元的」などが挙げられるでしょう。

「多元的」は思考やものごとの根源が多くあるさまを表す言葉で、類語で挙げた「一元的」の対義語となります。

また、「十把一絡げ」が放つ言葉のニュアンスを「一緒くたに粗末に扱う」と捉えるなら、「一つ一つ丁寧に扱う」も対義的な文章としては適切と言えるかもしれません。

「十把一絡げ」を英語や中国語とは?

「十把一絡げ」を英語や中国語で表現してみましょう。会議で多くの意見を一つにまとめる時や、多数のレシートを一括するときなど、使えるシーンは意外と多いかもしれません。

「十把一絡げ」は英語で”lump together”

日本独特の表現が特徴的な「十把一絡げ」ですが、英語に訳す時はできるだけシンプルに意訳をしましょう。そうすると「多くの物を一括する」という意味で最も一般的に使われる単語は「lump」となりますが、加えて「一緒くたにする」という意味を強めるために、後ろに「together」や「all together」をつけると、より丁寧な表現となります。

また、英語のフレーズによくある比喩表現をするなら「put all in one bag(全部を一つのバッグに入れる)」も状況に限らず使うことができます。

「十把一絡げ」を使った英語例文

  • I have got a massive amount of receipts from Sales Team. Can I just lump them together?
    営業部から数えきれない程の領収書が送られてきたよ。十把一絡げで処理してもいい?
  • There was so many different opinions have been expressed but I am going to just put all in one bag as one claim for now.
    複数の意見が出たが、とりあえず十把一絡げで「クレーム」としてまとめるか。

 

「十把一絡げ」の中国語は”眉毛胡子一把抓”など

「十把一絡げ」の中国語表現はいくつかありますが、代表的なものは「眉毛胡子一把抓」や「全都放在一起」、また「不分清红皂白」などになります。

まとめ

「多数あるものを差別なく一つにまとめる」という意味を持つ「十把一絡げ」は、「十あるものを一つの束で結ぶ」というところから生まれた言葉です。

複数あるものごとを差別なくひとまとめにすることが軸の意味となりますが、捉え方によっては「粗野に扱う」「個性や特徴を無視して一つにひっくるめる」という意味とも解釈できるので、ビジネスシーンでは相手に不快な印象を与えないように気を付ける必要があります。

しかし、スピードを何よりも重んじる環境では、効率よい手段として良い意味で「十把一絡げ」を使うこともできるでしょう。状況にあわせて正しく「十把一絡げ」を活用しましょう。