「三十六計逃げるに如かず」の意味とは?原文や由来・中国語も解説

「三十六計逃げるに如かず」ということわざは、「逃げるが勝ち」とも言い換えできる表現です。もともとの由来が中国の兵法書なので、「孫子」の言葉と勘違いされることもありますが、実は孫子が言ったことではありません。

今回は「三十六計逃げるに如かず」の意味や原文、誰の言葉なのか由来を紹介します。類語や英語と中国語の表現も紹介しているので参考にしてください。

「三十六計逃げるに如かず」とは?

「三十六計逃げるに如かず」の意味は”面倒なことは逃げるのが得策”

「三十六計逃げるに如かず」の意味は、“面倒なことは逃げるのが得策”です。三十六計のように兵法にはたくさんの種類があるけれど、形成が不利になったり、迷ったときには、逃げるのが一番の得策だという意味です。

読み方は「さんじゅうろっけいにげるにしかず」です。

「三十六計走るを上計となす」とも言う

「三十六計逃げるに如かず」は、”三十六計走るを上計となす”や”三十六策走るを上計となす”と言うこともあります。語源となった「敬則曰、『檀公三十六策、走是上計』」に、より近い表現です。

「三十六計」とは『兵法三十六計』に書かれた兵法のこと

「三十六計逃げるに如かず」の「三十六計」とは、『兵法三十六計』という兵法書に書かれた戦術のことを指します。184年から589年の間に続いた「魏晋南北朝時代」の「宋」という国の将軍であった「檀道済(たんどうせい)」が書きました。

兵法書としては、「孫子」が世界的に有名ですが、中国の民間では「兵法三十六計」が大量に流通しており、有名です。この36種類の戦術の最後に「走為上」というものがあり、「勝ち目がないなら全力で逃げて、損害を避けるべき」という内容が書かれています。

「三十六計逃げるに如かず」の原文とは?

「三十六計逃げるに如かず」の原文は『南斉書』にある

「三十六計逃げるに如かず」とは誰が言ったのか、その答えは『南斉書』の「王敬則伝」にあります。『南斉書』とは、中国の「斉」について書かれた歴史書で、479年から520年までの南斉の歴史が書かれています。「王敬則伝」には「王敬則」という人物について書かれており、このような一節が出てきます。

「敬則曰、『檀公三十六策、走是上計』」

これが「三十六計逃げるに如かず」の語源です。

原文の意味は「36種類の策の中で、逃げるのは一番優れた策だ」

「敬則曰、『檀公三十六策、走是上計』」とは、「王敬則がいうには、『壇道済の36種類の策の中で、逃げるのは一番優れた策だ』」という意味です。もともとは、敵から逃げた人を罵る言葉でしたが、現在は「逃げることが一番良い策だ」という意味に変わっています。

「三十六計逃げるに如かず」の類語や言い換えとは?

「三十六計逃げるに如かず」の類語は”逃げるが勝ち”

「三十六計逃げるに如かず」の類語は「逃げるが勝ち」です。戦わずに逃げるのは卑怯にも見えますが、勝ち目がないときや、勝っても利益がない戦いは逃げた方が自分にとって得だという意味の言葉です。

「三十六計逃げるに如かず」と同じく、戦わずに逃げた方が得策だという意味のことわざで、日本では「逃げるが勝ち」の方が、「三十六計逃げるに如かず」よりも多く使われています。

「三十六計逃げるに如かず」の外国語表現とは?

英語で表現すると「Discretion is the better part of valour.」

「三十六計逃げるに如かず」を英語で表現すると“Discretion is the better part of valour.”となります。英語圏で使われていることわざで、「Discretion」は”慎重さ”、「the better part of」は”大部分、大半”、「valour」は主に戦場においての”勇気”という意味です。

直訳すると「慎重さは(戦場で)勇気の大部分だ。」となり、危険な戦いに飛び込むよりも、慎重に考えて行動することの方が「勇気」という言葉の大部分を占めているという意味です。

「三十六計逃げるに如かず」は中国語で”三十六計、走為上計”

「三十六計逃げるに如かず」は中国語で“三十六計、走為上計”です。語源となった「壇公三十六計、走是上計」とは多少異なっており、「兵法三十六計」の最後の策として掲載されている「走為上」という漢字が使われています。

まとめ

「三十六計逃げるに如かず」とは、「面倒ごとは逃げるのが得策だ」という意味のことわざで、「逃げるが勝ち」と言い換えることもできます。

「三十六計」とは、「檀道済」が書いた「兵法三十六計」という兵法書に掲載されている36種類の戦術です。36種類の最後には、「走為上」という「勝ち目がないときは全力で逃げて損害を避けるべき」という戦術が書かれています。この記述を元に、「王敬則」という人が言った「壇公三十六計、走是上計」という言葉が「三十六計逃げるに如かず」の語源となっています。

ビジネスにおいても逃げるべきタイミングがあるかもしれません。そのようなときに「三十六計逃げるに如かず」を思い出してみてはいかがでしょうか。