「させていただく」とはビジネスシーンでもよく使われている敬語ですが、うまく使えないと感じることはありませんか?今回は「させていただく」の意味と正しい使い方を例文とともに解説して、誤用や言い換え表現も紹介します。これできっと「させていただく」を使うときに、ひやひやドキドキしなくなりますよ。

「させていただく」の意味

「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語
「させていただく」は、使役動詞「させる」と、「もらう」の謙譲語「いただく」で成り立っています。「させていただく」は助動詞的に使われるので、主となる動詞の後に続けます。
例文:
- 「来月のスケジュールを変更させていただきます」
- 「満席のため、相席させていただきます」
「させていただく」の意味は「遠慮しながら行うこと」
「させていただく」は「自分の行為や動作を、相手の許可を得たうえで、遠慮しながら行う」といった意味合いを持たせることができる謙譲表現です。相手の許可を得て、遠慮する気持ちという2点を意識して使うと、「させていただく」という表現を丁寧に使うことができます。
例文:
- 「本日の例会に出席させていただきます」
- 「上司の許可が得られましたので、この予算案で決定させていただきます」
漢字を使った「させて頂く」は間違い
「させていただく」を漢字で「させて頂く」と表記されることがありますが、これは誤りです。正しくはひらがなで「させていただく」と書きます。補助動詞はひらがなで表記しますので、補助動詞である「させていただく」はひらがなで表記します。
なお、「いただく」を「頂く」と漢字で書く場合は、何かを「もらう」時や、「食べる」「飲む」といった意味の謙譲語として使う場合です。
「させていただく」の正しいの使い方と例文

「許可」と「恩恵」を受けたときに使う
「させていただく」という表現は、人から許しを得たことを行うときに、その許しを得たことを感謝して敬意を払っているといった状況で使います。したがって「させていただく」とは、「相手の許可を得て」「その恩恵を受ける」ときに使われる謙譲表現です。
「させていただく」の正しい例文
相手から許可を得るとき:
- 「スケジュールを変更させていただきます」
- 「こちらは処分させていただきます」
- 「後ほど、お電話させていただきます」
- 「体調がよくないので、早退させていただけますか」
相手から依頼を受けたとき:
- 「それではこの資料のコピーを取らせていただきます」
- 「ご挨拶をさせていただくことになりました、○○と申します」
「させていただく」の誤用に注意

「させていただく」の二重敬語に注意
「させていただく」を使うときに、敬語表現を重複して使う二重敬語にして使われる間違いがあります。たとえば「拝見させていただく」はよく聞かれる表現ですが、「拝見する」は「見る」の謙譲語であり、「させていただく」も謙譲語なので二重敬語となり間違った表現です。正しくは「拝見します」です。
二重敬語の間違った例としては、ほかにも「お読みさせていただきます」や「頂戴させていただきます」などが挙げられます。
「させていただく」で冗長的にしない
以下の「させていただく」の使い方は、文法的に間違いではないものの、相手への許可が必要ないのに許可を取ろうとしているかのように聞こえるので、回りくどい言い方になっています。
冗長的な例:
- 「本日は司会を務めさせていただきます○○と申します」
- 「添付資料について、ご説明させていただきます」
- 「ではこれより、ご案内申し上げてさせていただきます」
冗長的な表現をしないためには、「です・ます」や「いたします」を使います。場面によっては、すっきりとした表現にした方が好感が持てるでしょう。
- 「本日は司会を務めます○○と申します」
- 「添付資料について、ご説明いたします」
- 「ではこれより、ご案内いたします」
「させていただく症候群」に要注意
「させていただく」を乱用して使う人のことを「させていただく症候群」といい批判されたことがありました。2010年頃、ある政治家が「させていただく」を乱用し自信のなさが表れた表現だとしてバッシングを受けました。
「させていただく」さえ使えば丁寧になるというのは間違った考え方です。「させていただく」を使いすぎるとかえって謙虚さがなくなりますので、乱用しないようにしましょう。
「させていただく」の言い換え表現は?

「させていただく」の言い換えは「いたします」
「させていただく」の言い換えには、「いたします」が使えます。「いたします」は漢字で「致します」と書くこともできる謙譲表現です。意味は「率先して○○をすること」です。
「いたします」でスッキリとした敬語になる
「させていただく」を乱用するとくどい表現になるので、「いたします」で言い換えてみましょう。すると、「させていただく」よりもずっとすっきりとした言い方で、敬意も表す表現になります。
例:「早退させていただきます」 ⇒ 「早退いたします」
「させていただく」の英語表現とは?

「させていただく」は英語で「Let me …」
「させていただく」を英語で表現するなら「Let me」で始めた文章を作るといいでしょう。「let」という動詞は使役動詞で、かつ相手からの許可を得るという意味も含まれています。また優しい言い方を意識すれば、より相手を気遣った表現になるでしょう。
例文:
- “Let me read the report.”
「レポートを読まさせていただきます」 - “Let us close the shop at 6 p.m. today.”
「本日は午後6時に店を閉めさせていただきます」
まとめ
「させていただく」とは「させてもらう」の謙譲表現の補助動詞です。丁寧に言おうとして「させていただく」を使いすぎるとしつこい表現になるので、「です・ます」や「いたします」などを組み合わせて、相手を不快にさせずにコミュニケーションを取るようにしてみましょう。