「素早く利を得ること」や「抜け目なく油断できない」を意味する、「生き馬の目を抜く」ということわざ。「なぜ生きた馬なのか?」「使い方や類語を知りたい」という方に向けて、「生き馬の目を抜く」の意味や由来、類語を紹介します。例文や「馬」に関することわざも紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
「生き馬の目を抜く」の意味や由来・語源とは?
「生き馬の目を抜く」の意味は”素早く利を得ること”
「生き馬の目を抜く」の意味は、“素早く行動し、利を得ること”です。単に「素早く利を得る様子」を表したのではなく、「他人を出し抜いて利を得る」という意味合いも含まれているため、悪い意味でも使われます。
「抜け目なく油断できない」という意味も
「生き馬の目を抜く」には、“抜け目なく油断できない”という意味もあります。例えば、「管理職は向いていないと言っていたAさんだが、同期のなかで最も出世した。生き馬の目を抜くとはまさに彼のことだ」という例文。上記の例文では、出世に興味のない様子だったAさんが最も出世していることから、「抜け目なく油断できない」という意味で「生き馬の目を抜く」が使われています。
「生き馬の目を抜く」の由来は比喩にある
多くのことわざは、昔あった出来事が由来して生じ、現代でも使われています。しかし、「生き馬の目を抜く」は、「素早い様子」を「生きている馬の目を抜きとる」ことで例えた、比喩(ひゆ)表現からできたことわざです。
「馬」に例えた理由は2つあり、1つ目は昔から人と深い関わりを持っていた動物だったからということ。2つ目は、深い関わりを持つ動物の中でも、足が速い動物であることから「馬」が使われています。
「生き馬の目を抜く」の使い方と例文とは?
「危険が多い街」を表す”生き馬の目を抜く東京”
「生き馬の目を抜く」を使った言い回しのなかに、「生き馬の目を抜く東京」があります。地方から都会に出る人へ向けられた言葉で、中でも東京は多くの人で溢れかえっています。たくさんの人がいれば、「他人を出し抜いて利益を得ようとする者」や「生じた隙に入り込もうとしてくる者」がいてもおかしくありません。
「良い人だけでなく悪い人もいるよ」と、注意する言い回しとして、「生き馬の目を抜く東京」が使われます。
「生き馬の目を抜く」を使った例文
「生き馬の目を抜く」を使った例文をご紹介しましょう。
- 生き馬の目を抜くと言われる金融業界だ。わたしには上手くやっていく自信がない
- 生き馬の目を抜くほどと言われている同僚がいる。仕事は速いが、一緒には働きたくない
「生き馬の目を抜く」の類語とは?
同じ意味をもつ「生き馬の目を抉る」
「生き馬の目を抜く」と同じ意味をもつ「生き馬の目を抉る」は、類語に当てはまります。「抉る」は「くじる」と読み、「中に入っているものを、えぐって取り出す」という意味があります。「抉る」は「えぐる」とも読めるため、読み間違いに注意しましょう。
「生き牛の目を抉る」も類語
「生き馬の目を抉る」の「馬」の部分を「牛」に変えた、「生き牛の目を抉る」も類語です。生きた牛の目をくり抜くことで、「素早く利を得る様子」や「抜け目ない様子」に例えています。「馬」と「牛」の2種類がありますが、「馬」の方が速く走れることから、「生き馬の目を抜く」や「生き馬の目を抉る」が主流となっています。
「生き馬の目を抜く」の英語表現とは?
「生き馬の目を抜く」は英語で”water sleeps, the enemy wakes”
「生き馬の目を抜く」の英語表現には、「water sleeps, the enemy wakes」が当てはまります。日本語にすると「水は眠っても、敵は眠らない」という意味があり、「油断できない様子」を意味しています。
馬に関することわざ・慣用句を紹介
効果のない様子を表す「馬の耳に念仏」
「馬の耳に念仏」とは、「人の意見などを聞き入れようとせず、効果がないこと」を意味することわざです。馬に念仏を聞かせたところで、念仏の価値がわからず効果がないことから、「馬の耳」が使われています。
「気が合う」を意味する「馬が合う」
「気が合う」「意気投合する」を意味することわざが、「馬が合う」です。乗馬では、馬と乗り手の息が合わなければ、上手く馬を走らせることができません。馬と乗り手の息が合い、上手く走れたことから「馬が合う」ということわざができました。
「身なりから立派に見える」を意味する「馬子にも衣装」
「馬子(まご)にも衣装」とは、「どんな人でもしっかいとした服装をすれば立派に見える」という意味のことわざです。「馬子」とは、「馬の子」ではなく「馬に人や物資を乗せて運ぶ役割」の人を指しています。
低い身分に分類されていた「馬子」でも、服装を整えてあげれば立派に見えることから、「身なりによって立派に見える」という意味で使われています。
「軽率な行い」を意味する「尻馬に乗る」
「尻馬(しりうま)に乗る」とは、「何も考えずに他人の言動に便乗し、軽率な行いをすること」を意味することわざです。「尻馬」とは、他人が乗っている馬の後部を意味し、自分で手綱をとっておらず人任せになっていることを意味します。
ついでに他の用事を済ませる「行き掛けの駄賃」
「行き掛けの駄賃」とは、「用事のついでに、他の用事も済ませてしまうこと」を意味することわざです。ことわざ自体に「馬」は入っていませんが、元々は「馬子」が由来してできたことわざです。
馬に人や物資を乗せて運搬する仕事をしている馬子が、荷物を取りに行くついでに、他の荷物を運んで駄賃を得ていました。上記の出来事から、「ついでに用事を済ませること」を意味することわざとなっています。
まとめ
「生き馬の目を抜く」とは、「素早く利を得る」「抜け目なく油断できない」を意味することわざです。故事が由来してできたのではなく、「生きた馬の目をくり抜く様子」という比喩表現から出来上がりました。類語には「生き馬の目を抉る」や「生き牛の目を抉る」が当てはまるため、状況に応じて使い分けてください。