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「物議を醸す」の意味と由来は?間違い表現や例文・類語も紹介

「物議を醸す」という言葉は、政治ニュースや新聞などでよく使われる少しかしこまった言葉です。近年では「物議を呼ぶ」など間違った表現で使われていることも多く、大切な場面で恥ずかしい思いをしてしまう人もいます。今回はそんな「物議を醸す」について、意味から由来、そして使い方や例文まで詳しく解説していきます。便利な類語と英語表現も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

「物議を醸す」とは?

「物議を醸す」の意味は”世間の議論を引き起こす”

「物議を醸す」の意味は、”世間の議論を引き起こす”です。読み方は、「ぶつぎをかもす」です。噛み砕いて説明するなら、「人々の間であることについて議論が起きる」「世の中で賛否両論の意見が出る」となります。「醸す(かもす)」には「ある物事・事態を作り出す」という意味があることから、何もなかった状態から何かが生まれる様子を表現しています。

由来は「酒や醤油を醸造すること」

「醸す」のもともとの意味は、米や大豆、麹を加えることで酒や醤油を作る、つまり“醸造する”ことを指します。この工程が転じて、「ある物事・事態を作り出す」という意味として使われるようになったとされています。なぜ「物議」という言葉と組み合わさり慣用句となったのかは、未だはっきりとした説はわかっていません。

「物議を呼ぶ」や「物議を交わす」は間違い

「物議を醸す」は、「物議を呼ぶ(ぶつぎをよぶ)」や「物議を交わす(ぶつぎをかわす)」と間違えて使われることが多々あります。しかし、この表現は意味合いが非常に似ている「議論を呼ぶ(ぎろんをよぶ)」と混同してしまった言葉で正しくはありません。「物議になる」という表現に関しては、言葉的には間違いではありませんが、慣用句としては辞書上には存在していません。

「物議を醸す」の使い方と例文とは?

疑問や問題が起きた時に使う

「物議を醸す」は決して悪いことに対して使うルールはありませんが、ニュースや新聞のようなメディアでは“疑問の声”や“問題視されているようなネガティブな事柄”に使われることが多い傾向があります。それはビジネやかしこまったシーンでも同じことが言えます。

「物議を醸し出す」はニュアンスが異なる

「醸す」を変形して「醸し出す」と表現されることもあります。どちらの言葉も“雰囲気などを作り出す”という意味をもちますが、「醸し出す」は「醸す」と違い“気がついたら議論が起きていた”というようなニュアンスになり、“議論が起こる”のようなはっきりとした意味を伝えることはできません。

「物議を醸し出す」は言葉的には間違いではありませんが、「物議を醸す」と微妙にニュアンスが違うので使う場面は異なります。

「物議を醸す」を使った例文

「物議を醸す」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • その件について物議を醸すときがいつか来る
  • 歴史的建物の改修について物議を醸している
  • 首相の発言が物議を醸し、大きなニュースになっている
  • 物議を醸し、世間を騒がせたあの事件を忘れることはできない
  • 後輩の態度が上司の間で物議を醸している

「物議を醸す」の類語とは?

「物議を醸す」の類語は”議論を呼ぶ・議題にのぼる”

「物議を醸す」の類語には、ビジネスシーンなどでも使える「議論を呼ぶ」と「議題にのぼる」の2つを紹介します。

「議論を呼ぶ」は、“大きな問題に発展する”や大論争を起こす“といった意味をもつ言葉です。「物議を醸す」よりも大きな事態になりそうな状況に使われます。

「議題にのぼる」は、“話題や問題が人々に取り上げられる”という意味をもつ言葉です。「のぼる」には“意図的に上にいく”という意味があるため、「物議を醸す」よりもしっかりとした考えや目的のもと“ある事”が起こる様子を伝えることができます。

「騒ぎを起こす」も似た意味を持つ言葉

「騒ぎを起こす」は“人に迷惑をかけるような事を生じさせる”という意味があり、世間や人々の中で議論を引き起こす「物議を醸す」と似た意味をもっています。ただ「騒ぎを起こす」には、議論など誰かとやり取りするようなニュアンスはありません。

「物議を醸す」の英語表現とは?

英語表現は「arouse criticism」

「物議を醸す」は、“喚起する”という意味をもつ動詞「arouse」と“批判”や“批評”という意味をもつ名詞「criticism」を組み合わせ「arouse criticism」と表現します。

  • 「彼の意見が大いに物議を醸している」

“His opinion is arousing much criticism.”

「cause a scandal」でも表現できる

“引き起こす”や“もたらす”という意味をもつ動詞「cause」と、“物議”や“中傷”という意味をもつ名詞「scandal」を使って「cause a scandal」と表現することもできます。この表現は「arouse criticism」よりもネガティブな意味合いが強調されています。

  • 「彼の政治的発言は物議を醸すだろう」

“His political statements will cause a scandal.”

まとめ

「物議を醸す」は、日常会話というよりニュースや新聞などのメディア、またビジネスなどのかしこまったシーンでよく使われる慣用句です。「世間の議論を引き起こす」と意味だけみると悪いニュアンスは感じられませんが、基本的には“問題視されるようなネガティブな事”に対して使います。「物議を呼ぶ」や「物議を交わす」などといった表現が広まっていますが、こちらは間違いなので使わないよう気をつけましょう。