「時下」の意味とは?失礼のない用法やビジネスに使える例文も解説

「時下」は、ビジネス文書や手紙などによく使われる書き言葉です。馴染みがない人からすると難しそうな言葉に見えるかもしれませんが、いったん使い方をマスターしてしまえば非常に便利な言葉だとわかります。今回はそんな「時下」の意味や読み方、正しい使い方などを例文つきで解説していきます。

「時下」とは?

「時下(じか)」の意味は「この頃」「現在」

「時下」の意味は、「この頃」や「現在」です。ビジネスや祝辞、手紙などの冒頭挨拶によく使われます。もともと漢語だった「時下」は、日本に伝えられた後も中国語で「今」という意味で使われています。

読み方は「じか」

「時下」は「じか」と読みます。

季語を使った時候の挨拶の代わりになる

ビジネス文書やかしこまった手紙などには、必ずと言っていいほど冒頭部分に「立春の候(意味:春が始まりますね)」や「残暑の候(意味:暦では秋ですが、まだまだ厳しい暑さが続いていますね)」など季語が入った時候の挨拶(礼儀文)が用いられます。「時下」はこのような時候の挨拶に置き換えることができ、季節関係なく一年中使える便利な言葉です。

「時下」の使い方と例文とは?

メールや手紙の場合は「拝啓」「謹啓」のあとに使う

「時下」をビジネスメールや手紙などに使う場合は、必ず「拝啓(はいけい)」や「謹啓(きんけい)」などの“頭語”のあとに使います。文章の冒頭部分にくる言葉ですが、先頭ではないので、相手に失礼にならないよう言葉の並びは気をつけましょう。また、主文を締めくくる“結び言葉”のように最後に「時下」がくることもありません。

「時下ますます〜」「貴社ますます~」とよく使う

「時下」は、“なお一層”や“もっと”という意味をもつ「益々(ますます)」と組み合わせ「時下ますます〜」と慣用句的に使われることが多いです。「この頃より一層〇〇ですね」と、「時下」の意味を強調させた表現ができます。

「時下ますます」は「貴社ますます」と表現されることもあります。「貴社(きしゃ)」を使ってメールを送る場合は、必ず時候の挨拶を先頭に入れましょう。

  • 「時下ますます」の場合

「拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」

  • 「貴社ますます」の場合

「立春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」

「時下いよいよ」は文語的表現

「時下ますます」は、「時下いよいよ」と言い換えることもできます。「いよいよ」は「ますます」よりも文語的な表現であるため、同じ意味ですがビジネスやかしこまったシーンには向いていません。

ビジネスシーンでよく使う例文

ここでは、「時下」の定型句をいくつか紹介します。ビジネスシーンでは頻繁に使う決まり文句のようなものなので、覚えておくと便利です。

  • 「時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」

「ご清栄(ごせいえい)」は、相手の無事や健康、商売繁栄を喜んだ挨拶として使われる言葉で、基本的に企業や組織といった団体に対して使います。

  • 「時下ますますご清祥のことと存じます」

「ご清祥(ごせいしょう)」は、相手の健康や幸せを喜んだ挨拶として使われる言葉です。「ご清栄」と非常に似ていますが、「ご清祥」には企業や組織に送るような“商売繁盛”というニュアンスはないため、基本的に個人に向けて使います。

  • 「時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」

「ご健勝(ごけんしょう)」は、元気であること・心身が健やかであることを意味する言葉で、相手が健康であることを祝ったり願ったりする時によく使われます。「ご健勝」も「ご清祥」と同じく、基本的には個人に向けて使います。

  • 「時下ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」

「ご隆盛(ごりゅうせい)」は、勢い盛んに栄えることを意味する言葉で、相手の商売がうまくいっていることを祝う表現として使われます。「ご隆盛」は「ご清栄」と同じく、個人よりも企業や組織に対して使うことが多いです。

※「お慶び(およろこび)」は、ビジネスシーンや昇進祝い、結婚や入学などの祝辞に対して使われます。もし日常的な喜びを表現したい場合は「お喜び(およろこび)」の方を使いましょう。

「時下」の類語とは?

類語は「目下(もっか)」

「時下」の類語には、“目の前”や“現在”という意味をもつ「目下(もっか)」があげられます。「時下」のような礼儀文といった使い方よりも、「目下進行中」や「目下の任務は〜」など、現在の状況などを報告したりするときに使われます。

カジュアルな類語表現なら「今どき」「現在」

カジュアルな類語表現なら、日常的に使っている「今どき」や「現在」、または「今」などという言葉があげられます。近しい間柄なら、かしこまっていない表現の方が自然でおすすめです。「時下」と違い、文章から会話の中と幅広い場面で使うことができます。

まとめ

「時下」は、時候の挨拶のように季節を考えることなく年中使える便利な言葉です。「時下ますます」や「時下いよいよ」と使うことが多く、ビジネスシーンではよく使われる定型句がいくつかあります。日常会話ではほとんど使わない言葉ですが、社会人としてメールを送ったり祝辞を読む場合には必ずと言っていいほど登場する言葉です。相手に失礼な文章を送らないよう、正しく使えるようにしましょう。