「袖の下」は、「袖の下を渡す」と使うことが一般的な言葉。相手に頼み事をした場合や、便宜を図ってもらいたい場合に、金銭や品物などをこっそり贈ることを意味しています。今回は「袖の下」という言葉について、詳しい意味と由来を解説します。また使い方を例文で紹介するとともに、類語と英語での表現を紹介します。
「袖の下」の意味や由来とは?
「袖の下」の意味は”他人には知られないように渡す不正な贈り物”
「袖の下」の意味は、”他人には知られないように渡す不正な金銭や品物などの贈り物”です。相手に物事を依頼したときや、相手の立場で便宜を図ってもらいたいときに、その対価として内密に渡すことを「袖の下を渡す」と言います。物事に対するお礼ではなく、人に知られないようにして渡す不正なものであるため、ネガティブな意味の言葉となります。
なお、披露宴や旅館などで配慮に対するお礼として渡す金銭は、人前で渡さない場合であっても「袖の下」ではなく「心付け」と言うので、間違わないようにしましょう。
「袖の下」は着物を着たときの仕草に由来
「袖の下」という言葉は、着物を着たときの動作が語源となります。
現在私たちが着ている衣服とは違い、着物の袖は下に長く伸びて袋状になっていて、手先ではなく体に近い袖の部分を「袂」(たもと)と呼びます。
周りの人には見えないように、金銭などを袂に隠して渡すその仕草が「袖の下」を渡すという言葉の由来です。
「袖の下」の使い方と例文とは?
「袖の下」という言葉は「袖の下を渡す」という使い方が一般的ですが、「袖の下を使う」や「袖の下を握らせる」と使う場合もあります。また、自分が受け取る側に立つ場合は「袖の下を受けとる」と使います。
「袖の下」を使った例文
「袖の下」を使った例文をご紹介しましょう。
- なけなしの金をはたいた袖の下だったのに、目論見通りにはいかなかった。
- もう綺麗事を言っている場合ではない。会社を立て直す最後の手段は袖の下しかない。
- 患者から医者への袖の下については禁止されていると、病院に貼り紙がしてあったよ。
「袖の下を渡す」「袖の下を使う」を使った例文
「袖の下を渡す」や「袖の下を使う」を使った例文をご紹介しましょう。
- 彼が大学を卒業できたのは、教授に袖の下を渡したからだという噂が広まっている。
- あんな奴に袖の下を使わないと出世できないのなら、ずっと平社員でいることを選ぶよ。
- 袖の下を使うような卑怯な真似はしたくない。
「袖の下を受けとる」を使った例文
「袖の下を受け取る」を使った例文をご紹介しましょう。
- 彼女は袖の下を受け取ることをよしとせず、自宅まで届いた品物も全て送り主に返送した。
- 業者から安易に袖の下を受けとったことが、後々身の破滅を招くことになった。
「袖の下」の類語とは?
「賄賂」「賂」は「袖の下」と同じ意味
「賄賂」(わいろ)と「賂」(まいない)は、「袖の下」と同様に、相手に見返りを求めて渡す不正な金銭や品物を意味しています。「賄賂」と「賂」は同じ意味で言い方が違うだけです。「袖の下」は「賄賂」や「賂」に比べると間接的な印象を受ける言い方ではありますが、意味としては同じです。
なお、「袖の下」を含め以下に紹介する「山吹色のお菓子」や「鼻薬」は、「賄賂」の隠語となります。隠語とは、他の人にばれないように仲間内で別の言い方をする言葉のことを指しています。
「裏金」は「内密に渡す金銭」の意味
「裏金」(うらがね)も、「袖の下」同様に不正な金銭を意味する言葉です。取引を進めるためや便宜を図ってもらうために内密に渡す金銭のことで、「袖の下」は金銭や品物など渡すものを限定しませんが、「裏金」は言葉の通り金銭のみを指しています。
「山吹色のお菓子」も「不正に贈る金銭など」の意味
時代劇で贈り物の菓子箱の蓋を開けると中には黄金色に輝く小判がずらりと並び、悪代官はそれを見てにやり、そんなシーンをご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか?「山吹色のお菓子」も、「袖の下」と同じ、不正に贈る金銭や品物を表す言葉です。
「山吹色」ではなく「黄金色のお菓子」と呼ばれることもあります。
「鼻薬」は「袖の下」に比べ少額の金銭や品物を意味する
「鼻薬」(はなぐすり)という言葉は、鼻の病気のための「薬」の意味として使う方がほとんどと思いますが、「袖の下」と同じ意味も持っています。「袖の下」に比べると少額となる金銭・品物や、ぐずる子供に対して与えるお菓子などを指す言葉です。
「袖の下」は「袖の下を渡す」と使いますが、「鼻薬」は「鼻薬を嗅がせる」「鼻薬をきかせる」などと使います。
「袖の下」の英語表現とは?
「袖の下」の英語は「under the table」
「袖の下」と同じ意味を持つ英語の表現は「under the table」となります。「under the table」は直訳すると「机の下」となりますが、「不法な」「内密の」などの意味も持ち合わせており、「money under the table」は「裏金」の意味となります。
「rebate」も「袖の下」の意味を持つ英語表現
「rebate」は「袖の下」と同じ「不正に渡す金銭や品物」を意味します。日本語の「賄賂」が「袖の下」に比べて直接的な言い方と感じるのと同様に、英語においては「rebate」の方が「under the table」に比べて直接的な表現として使われます。
まとめ
「袖の下」とは、取引を成立させるためや便宜を図ってもらうために、人には隠れて渡す金銭や品物を意味する言葉です。どこまでがお礼でどこからが「袖の下」であるのか線引きが難しい場合もありますが、人前で渡すことができないものについては「袖の下」と見なされてしまうこともあるということに注意が必要です。