「徒手空拳」という言葉を聞いたことがない、という人は多いかもしれません。しかし空手の経験がある人であれば聞いたことがあるのではないでしょうか。今回は「徒手空拳」という四字熟語について解説します。「徒手空拳」の意味や使い方、類語や対義語などについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「徒手空拳」とは?
「徒手空拳」の意味は”武器を持たずに立ち向かうこと”
「徒手空拳」の意味は、“手に何も武器を持たずに立ち向かうこと”です。「としゅくうけん」と読みます。
「徒手」が”手に何も武器を持たない”という意味、「空拳」は”頼りは自分の素手だけ”という意味です。空手などでは「徒手空拳」という言葉を、この意味で使います。
つまり「徒手空拳」とは、”何にも頼らず自分の素手だけで”という状態を表します。
「後ろ盾や金がない状態で物事を始める」という意味も
この「徒手空拳」は、意味を人間の様子になぞらえて使われることが多くあります。それは「後ろ盾やお金がない状態(=素手)で、何かに立ち向かう」というものです。
「徒手空拳」は仕事や自分が挑戦したいことなどを始めるときに使われる言葉で、「何も頼りにせず、自分の力だけで勇敢に立ち向かった」という意味で用いられます。
「徒手空拳」の使い方と例文とは?
「徒手空拳」は自分や目上の人の行動についても使える
「徒手空拳」という言葉は、四字熟語の中でも勇ましさを感じるものです。そのためポジティブな意味として使われます。
しかし「徒手空拳」を自分の行動について使っても特に問題はありません。もちろん、目上の人の行動についても使うことができます。
- 「私が単身アメリカに渡ったのは、徒手空拳、ビジネスの本場で成り上がってやると思ってのことでした」
- 「私の息子は親の私が言うのも何ですが、何ごとにも自分の力だけで挑んでいきます。これは徒手空拳と言って良いでしょう」
- 「部長が役職を捨ててまで技術を身につけるための勉強をされるとは、まさに徒手空拳の思いきったご決断だと思います」
「徒手空拳で」は誰かが何かに挑む状態を表す
「徒手空拳」を「徒手空拳で」という言葉で使うことがあります。この「徒手空拳で」と使う場合は、自分やその人が何かに自分の力だけで挑もうとしている、または挑んだという状況です。
- 「彼は徒手空拳で一から学び、博士号まで取ったというのだから感服する」
- 「田中さんはコネも何もなし、つまり徒手空拳であの大企業に入社したのだから大したものだ」
「徒手空拳を放つ」は手ぶらで挑む勢いを伝える
「徒手空拳」は「放つ」という動詞と一緒に使われることもあります。「徒手空拳を放つ」とは「何もない、手ぶらの状態で物事に挑む」という、行動の勢いを増して伝えたい場合に使える言い方です。
- 「あのときの彼は、徒手空拳を放つように自分だけの力で会社を興した」
- 「彼女のやる気と勢いはまさに徒手空拳、味方もいない状況で見事に頂点に上りつめた」
「徒手空拳」の類語・反対語とは?
類語「赤手空拳」との違いは自らが望むかどうか
「徒手空拳」と似た意味を持つ言葉に「赤手空拳(せきしゅくうけん)」があります。「赤手空拳」とは「誰の力も借りずに、自分だけの力での物事に向かっていく」という意味です。
意味だけを見ると「徒手空拳」と同じように感じられます。この「赤手空拳」と「徒手空拳」の違いは「自らが望んで素手で立ち向かっているか」という点です。
「徒手空拳」は言い方を変えれば「やむを得ず、自分の力だけ」で立ち向かっていますが、「赤手空拳」は「自分が好んで人の力を借りずに」立ち向かいます。
つまり、自主的に何にも頼らず挑戦するのが「赤手空拳」、頼りたいけれど頼る人や後ろ盾がないのが「徒手空拳」です。
「徒手空拳」の反対語は”完全武装”
「徒手空拳」と反対の意味は「持てるだけの武器を持って挑む」です。これを四字熟語に当てると「完全武装」となります。
「完全武装」とは、言葉の通り「完全(完璧)な武装をしている状態」です。「完全武装」を人の行動に当てはめると、頼れる人に頼り、持てる資金を持ち、自分の力となるものすべてを手にした状態です。
「徒手空拳」が素手であることに対して、武装に使っている武器さえも自分の力の一部、として認識するのが「完全武装」と言えるでしょう。
「徒手空拳」の英語表現とは?
「徒手空拳」は英語で”penniless”
「徒手空拳」は日本の四字熟語なので、まったく同じ意味の英単語というのはありません。「徒手空拳」と似た意味を持つ言葉であれば“penniless”があります。
「penniless」とは「お金を持っていない」という意味です。「penny」というのは、英国の古い硬貨のことで、「less」という打ち消しの言葉と一緒になっています。そのため「お金がない状態でも物事に挑戦する」という意味で「penniless」が使われています。
- 「I was penniless then(そのとき私は徒手空拳でした)」
まとめ
「徒手空拳」という言葉は日常で頻繁に使われることはさほどありません。しかし「徒手空拳」を正しく理解していれば、自分や誰かが奮闘したことをスマートに言葉にすることができます。
ぜひこの機会に「徒手空拳」という言葉を使って、過去に自分や身近が人が何かに素手で立ち向かうような経験をしなかったか思いだしてみてください。そしてその状況に「徒手空拳」を当てはめて、言葉にしてみましょう。