「本末転倒」の意味とは?「主客転倒」との違いや類語も解説

「本末転倒」は、使われることの多い四字熟語ですので、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。実は正しい意味を知らずに使っている人や、誤用も多い言葉です。似ている言葉である「主客転倒」や「元も子もない」と間違って使われていることもあるので、本記事を読んで正しい使い方を知っておきましょう。

「本末転倒」の意味や由来とは?

「本末転倒」の意味は”根本的なことを取り違える”

「本末転倒」の意味は、“一番大切にすべき根本的なことと、別の些細な事柄を取り違えること”です。「ほんまつてんとう」と読みます。「本」が「根本」という意味で、「末」が「末端」「抹消」などの意味です。「転倒」は、ひっくり返ることを言いますので、「根本」と「末端」がひっくり返ったという意味の四字熟語です。

例えば、「学生なのにアルバイトで勉強ができないのは本末転倒だ」という文は、学生は勉強が一番大切なはずなのに、アルバイトで勉強ができなくなっているのは、一番大切にすべき勉強がアルバイトに取り違えられている状態だという意味です。

「本末転倒」の由来は仏教

「本末転倒」という言葉の由来は、仏教の歴史と「お寺」です。鎌倉時代に、仏教が広く庶民の間に浸透していきました。もともと仏教は、天皇や貴族のためにあり、「本山の寺院」は天皇や貴族によって力を維持していました。

しかし、仏教が庶民の間に浸透したことで、「末端の寺院」であっても檀家が増えていき、本山の寺院よりも力を持つようになったのです。つまり、根本にあった「本山の寺院」と「末端の寺院」の立場がひっくり返ったことが、「本末転倒」の由来とされています。

「本末転倒」の使い方とは?

「本末転倒」を使った仕事に関する例文

「本末転倒」を使った仕事に関する例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 丁寧に仕事をし過ぎて、納期に間に合わないのでは本末転倒だ。
  • 収入を増やそうと休まずに仕事をして、体調を崩して入院したのでは、本末転倒だ。
  • 売上を伸ばそうと残業をし過ぎて残業代がかさみ、利益が低くなってしまったのでは、本末転倒だ。
  • 業務効率化のためにソフトを導入したのに、使い方を学ぶための時間がかかりすぎており、本末転倒だ。
  • 家族で過ごす時間を増やすために、有給休暇を増やしたのに、家に帰らずに飲み歩いていては本末転倒だ。

「本末転倒」と類語との違いとは?

「本末転倒」と「主客転倒」の違いは”主人と客”

「本末転倒」の類語に「主客転倒」があります。「主客転倒」は「しゅきゃくてんとう」と読みます。「主な物事と、従属的な物事が、逆の扱いをうけること」を表す言葉です。「主客」というのは「主人」と「客」を表しており、「主客転倒」は、もともとは、主人と客人の立場がひっくり返ったことを表していました。

「本末転倒」は、「根本的なこと」が、他のものに取り違えられている状態を表すのに対して、「主客転倒」は、「主な物事」と「従属的な物事」の立場がひっくり返っている場合に使います。「主な物事」と「従属的な物事」という「主客転倒」の方が、限定的な場面で使える言葉です。

「本末転倒」と「元も子もない」の違いは”すべて失う”

「元も子もない」とは、「何もかも、すべて失う」という意味の言葉です。「元」とは「元金」のことを指しており、「子」とは「利子」です。投資をしたときに、利子どころか、元金も何も残らなかった状態を指した言葉で、現在は、お金以外の場面でも、何もかも、すべて失うときに使われています。

「本末転倒」とは、「根本的なことを取り違える」という意味ですので、「元も子もない」とは意味が異なります。

「本末転倒」の外国語表現とは?

「本末転倒」は英語で”put the cart before the horse”

「本末転倒」と同じ意味の英語に“put the cart before the horse”があります。「cart」とは、荷馬車のことをいい、直訳すると「馬の前に荷馬車を置く」です。荷馬車は馬の後ろに置いて引いてもらうものですので、馬の前に置いては、馬に引いてもらうことができません。

英文として使う時には、「~ような」という意味の「like」を使って、「like putting the cart before the horse」と書いて、「馬の前に荷馬車を置くようなもの」と使うこともできます。

「本末転倒」は中国語で”舍本逐末”

「本末転倒」は中国語で「舍本逐末」です。「舍」は「捨てる」という意味で、「逐」は「追う」という意味です。「本」と「末」は、日本語の「本末転倒」と共通しています。訳すと、「根本的なことを捨てて、末端のことを追いかける」となります。

まとめ

「本末転倒」とは、「一番大切にすべき根本的なことと、別の些細な事柄を取り違えること」を言います。類語である「主客転倒」や「元も子もない」との誤用に注意して使いましょう。「主客転倒」は、「主な物事と、従属的な物事が、逆の扱いをうけること」で、「本末転倒」よりも使う場面が限定されており、「元も子もない」は、「すべて失う」という意味の言葉で、使う場面が異なります。「本末転倒」は、よく聞く四字熟語ですので、間違えずに使えるようにしておきましょう。