「ひとしお」の意味とは?使い方や類語・英語を例文と併せて解説

「ひとしお」は感動して気持ちが高まったときに使われる言葉ですが、日常的にあまり使われないので使い方が分かりにくい言葉のひとつです。「ひとしお」を正しく使うために、今回は「ひとしお」の意味や由来、正しい使い方に類語や英語表現を例文とともに解説します。

「ひとしお」とは?

「ひとしお」の意味は”一層”

「ひとしお」とは、“ひときわ”“一層”という意味の副詞です。感情的に程度が増したことを強める言葉です。気持ちや感情が高まったときに「ひとしお」が使われます。

漢字では「一入」と書きます。同じく「ひとしお」と読ませる「一塩」もありますが、「一塩」は薄く塩をふるという意味の言葉で、「一入」とは全く異なる言葉です。

「ひとしお」の由来は”染料につけること”

「ひとしお」という言葉は、染め物を染料につけることが由来です。「ひとしお」の「しお」とは「しほ」とも書き、染料につける回数を表しています。「ひと」が数字の「一」を意味していますから、「ひとしお」で染め物を染料に一回つけることを指します。

染め物は、染料につける回数が多いほど色が濃くもなれば発色も強くなっていきます。徐々に色が濃くなっていく様子から、「ひとしお」は「程度が増す」という意味で使われるようになりました。

「ひとしお」は大和言葉に分類

「ひとしお」は漢語や外来語が日本に入ってくる前から使われていた言葉のため、大和言葉に分類されます。

大和言葉は和語(わご)とも呼ばれて、平安時代から使われています。漢字の訓読みは大和言葉が由来とされていて、上品な言葉という特徴があります。

「ひとしお」の使い方と例文とは?

「喜びもひとしお」はポジティブな状況に使われる

結婚のスピーチなどに使われる「喜びもひとしお」という表現は、「喜びがより一層高まる」という意味です。

「ひとしお」は感情がひときわ高まった時に使われて、ポジティブな状況に使われる言葉です。したがって、結婚、出産、昇進など人生においての嬉しい出来事があった時に使われることが多いのです。

「感慨もひとしお」なら”より一層深く感じ入る”の意味

「感慨もひとしお」とは「より一層深く感じ入る」という意味で、ある事柄に感動した度合いが強くなるときに使われる表現です。「感慨」(かんがい)とは物事を感じて心が動くことを意味していて、「感慨もひとしお」で感慨する気持ちの高まりを伝えます。

「感慨もひとしお」は「感慨一入」と書き四字熟語としても使われています。「感慨一入」は「感慨もひとしお」よりも感情の高ぶりが強められた印象になります。

「春寒はまだひとしお」は三月ごろの時候の挨拶

手紙の文面で使われる「春寒はまだひとしお」は、3月ごろ寒さと温かさが入り混じる季節に使われる時候の挨拶のひとつで、「春寒」(しゅんかん)とは、立春のあと、冬のような寒さが戻ってくることの意味です。

時候の挨拶では、「春寒はまだひとしお」から始めて相手の健康を気遣う表現を続けるといった使い方が典型的です。

例文:「春寒はまだひとしお、体調を崩されることのないようご自愛ください」

「ひとしお」はビジネスシーンには向かない

大和言葉である「ひとしお」は雅な響きもあるので、ビジネスシーンに向く言葉ではありません。また小さな出来事に対して「ひとしお」を使うと大げさになり違和感を覚えます。

「ひとしお」は人生の転機になるような大きな出来事に対し、感情をあらわにできるようなシチュエーションで使われます。

「ひとしお」を使った例文

「ひとしお」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 「初孫とあって、お喜びもひとしおでしょう」
  • 「昇進が決まり、喜びもひとしおです。」
  • 「息子さんが大学を卒業されて、感慨もひとしおのことと思います」
  • 「苦労してやっとチームリーダーになれたので、達成感もひとしおです」
  • 「時間をかけて育てた花なので、思い入れもひとしおです」
  • 「暑さもひとしお、お元気でいらっしゃいますか」

「ひとしお」の類語とは?

「ひときわ」は”視覚的に目立つ”という意味

漢字を使って「ひと際」や「一際」と書き表される「ひときわ」は、「際立って目立つ」という意味です。特に、他と比べると優れていて、視覚的に目立っている状況で使われます。

「ひとしお」との大きな違いは、「ひときわ」はネガティブな状況にも使われることです。「あなたの成績は一際目立っている」と言えば、成績が他と比べていいのか悪いのか、どちらにも考えることができますので、文脈の前後から「ひときわ」の意味をとらえるようにします。

「一層」は”程度が一段上がること”という意味

「一層」は「程度が一段上がること」を意味して、気持ちや感情の高まりを表現します。「ひとしお」とは違い、ポジティブな状況とネガティブな状況の両方で使われます。

例文:

  • 「昇進できて、喜びも一層です」
  • 「さらに一層の努力をしてまいりますので、よろしくお願いします。」
  • 「より一層仕事に励みます」

「一段と」は前後の2つを比べたときに使う

「一段と」とは、「程度が一段高くなること」を意味しています。昨日と比べて今日、前回会った時よりも今のように、時間的に前後の2つのものを比べて、一つのものに差がついている場合に使われます。

「ひとしお」のように感情的な深まりは表現されません。

例文:

  • 「朝夕一段と涼しくなってきました」
  • 「しばらく会わないうちに一段と大きくなったね」

「ひとしお」の英語表現とは?

「ひとしお」は英語で”especially happy”や”very”

「ひとしお」は感情の程度を表す言葉ですから、感情を強調する副詞である“especially”“very”が使われます。

「喜びもひとしお」なら、喜びを表す形容詞「happy」を使い「especially」で強調して、「feel especially happy」のように表現します。

例文:

  • “I feel especially happy, because you came to my party.”
    「あなたが私のパーティに来てくれたので、喜びもひとしおです」
  • “When I saw him for a long time, I was very emotional.”
    「久しぶりに彼に合って、感慨もひとしおです」

まとめ

「ひとしお」とは感情の高まりを強調する副詞で、「喜びもひとしお」や「感慨もひとしお」のように使います。ポジティブな状況にだけ使われる言葉ですので、相手にとって人生の節目になるような嬉しい出来事があったときなどに使ってみましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。