「かねてより」の意味とは?「かねてから」との違いや類語・例文も

「かねてより」は「前もって」や「以前から」という意味の言葉です。似た表現に「かねてから」もありますが、意味に違いはあるのでしょうか?

この記事では「かねてより」の意味や正しい使い方を解説します。漢字表記「予てより」「兼ねてより」の使い分けや類語・例文も参考にしてください。

「かねてより」の意味とは?

「かねてより」の意味は「前もって」

「かねてより」は、「前もって」「以前から」「あらかじめ」という意味の副詞です。「かねて」自体に「前もって」や「あらかじめ」という意味があり、作用の起点を表す助詞「より」をつけることで「以前から」の「から」の部分を強調しています。

漢字では「予てより」または「兼ねてより」と書きますが、「予てより」と書かれることが多く、またひらがなで表記されることも多い言葉です。

「かねてより」の期間は思い出せる程度

「かねてより」とは「前もって」という意味ですが、どれくらい前のことかというと「思い出せる程度の期間」です。具体的な日時を指定しているのではなく、記憶にとどめている範囲での過去を指しています。

漢字表記は「予てより」と書くことが多い

「かねてより」を漢字表記にするときは、「予てより」と表記されることが多いです。「予て」の「予」という字は「前もって」という意味が知られているため、「予てより」と表記することで意味が伝わります。

「兼ねてより」では意味が伝わりにくい

「かねてより」は「兼ねてより」と表記する場合もあります。ただし、先に挙げた「予てより」と比べると、頻度は下がります。

なぜなら、「兼ねてより」は「兼ねる」の主要な意味である「ほかのことも含める」という意味が想起されてしまうためです。「かねてより」の「前もって」という意味が伝わりにくいことから、多くの場合は「予てより」を使います。

「かねてより」と「かねてから」の違いは?

「かねてから」も同じ意味の副詞

「かねてから」は「前もって」や「以前から」という意味の副詞です。「かねてより」と同じく重複表現なので間違った日本語表現ですが、「かねてより」の言い換え表現としても使われます。

例文
  • 「かねてからご案内申し上げた新店舗が遂にオープンします」
  • 「かねてから願っていた医者になることができました」

違いは「言葉が使われるようになった時代」

「かねてより」との違いは、使われはじめた時代にあります。「かねてより」は平安時代から使われていたのに対して、「かねてから」の歴史は中世末ごろからとあまり古くはありません。

歴史的な意味から、同じ重複表現でも「かねてより」は正しく「かねてから」は正しくないという考え方もあります。

「かねてより」は間違った使い方?

「かねてより」は間違いだが使われている

同じ意味の言葉を連結させた表現は重複表現や重言といい、間違った日本語の使い方とされています。「かねてより」は副詞「かねて」と助詞「より」が連結した言葉ですが、両方とも時を起点とする「~から」という意味があるため重複表現です。しかしながら「かねてより」は平安時代から使われている表現で、日本語表現として定着しています。

一方で、「かねてより」は間違った日本語であることは確かなので、新聞などのメディアによっては「かねてより」は使われずに「かねて」が使われています。

「かねてより予定している」は誤用

「かねてより」は「前もって」という意味の重複表現で、「予定」も「前もって見込みをつけること」という意味のため、「かねてより予定している」は3重の重複表現となり間違った使い方です。

言い換えるならば、「かねてより計画している」や「かねてよりの都合」ならば日本語として正しくなります。

「かねてより」の使い方と例文

「かねてより」は改まった場で使われる

「かねてより」は日常会話で使われますが、ビジネス上でのかしこまった会話や目上の人との会話にもよく使われる言葉です。なぜなら「かねてより」は丁寧で品格のある言葉という印象があるためで、敬語と合わせた使い方も頻繁にされています。

例文
  • 「かねてよりお世話になっております」
  • 「かねてより、○○様のご高名は伺っております。お会いできることを楽しみにしていました」

「かねてより」に続く言葉は過去形が多い

「かねてより」はかしこまった印象を与える言葉なので、丁寧な文章中で使われます。また過去からの継続を意味する言葉なので、「かねてより」のあとに続く言葉には過去形が多く使われます。

例文
  • 「かねてよりお伝えしておりました新商品の発表会日時が決まりましたので、お伝えいたします」
  • 「かねてよりお願いしていました○○の件、進行具合はいかかでしょうか」

「かねてより」の類語

「以前より」ならやわらかい表現になる

「以前より」や「以前から」は「前もって」を意味していますが、「かねてより」よりも「前から○○をしている」という過去からの継続性が強まります。また「かねてより」と比べるとやわらかい表現になるため、ビジネスから日常会話まで幅広く使われています。

「かねがね」なら継続の意味合いが強まる

漢字で「兼兼」や「予予」と書き表す「かねがね」は、「以前から」を意味する副詞です。「かねがね」も「以前より」と同じく「これまで継続してきた」という意味合いが強まります。

「かねてより」の英語表現

「かねてより」は英語で「always」

「いつも」と和訳される「always」が「かねてより」の意味を表す英語表現です。ポイントはalwaysを現在完了形と合わせて使うことで、「かねてより」の「前もって」や「以前から」というニュアンスが出ます。

例文
“I have always appreciated for your help.”
「かねてよりお世話になっております」

「always」の代わりに、「長期にわたり」という意味の「for a long time」や「for a while」なども使えます。

まとめ

「かねてより」は「前もって」や「以前から」という意味の副詞です。重複表現ですが日本語表現のひとつとして定着して、日常会話やビジネスシーンでも使われている品のある表現です。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。