「固定概念」という四字熟語がありますが、「固定観念」と同じような意味で使っているような気がしませんか?どちらが正しくて、どちらが間違いなのか、その答えを解説します。
「固定概念」と「固定観念」の違いに注目してみて下さい。使い方や類語・対義語も紹介します。
「固定概念」の意味は?
「固定概念」は間違いで、正しくは「固定観念」
「固定概念」の意味を説明する前に知っておきたいことは「固定概念」は「固定観念」の誤用であるということです。実際は「固定概念」は誤りで「固定観念」という言葉が正しい言葉となります。
時代と共に「観念」に似た言葉「概念」が「固定観念」の「観念」の部分と入れ替わって使われるようになり、それが日常的になったという経緯があります。
「固定概念」は口語を中心に現在でも使われていますが、正確には誤用となります。したがって、話し手が意図する意味は「固定観念」と同じという解釈となります。
「固定観念」の意味とは?
「固定観念」とは「心に凝り固まったものごとへの考えや意味内容」
「固定概念」が「固定観念」の誤用ということをお話ししましたが、「固定概念」という表現が示すのは「固定観念」の意味となります。
「固定観念」とは「心の奥底に凝り固まったものごとに対する考え」です。つまり、一般的な考えや思考を含め、主観的な考えをベースとした強い思考やアイデアであり、周囲や状況に影響されない強固な考えを表す言葉となります。
「固定観念」は考え方や行動に範囲を設けてしまうこともある
「固定観念」とは、とりわけネガティブなイメージで使われることが多いため、ポジティブな意味で会話に用いられることはあまりありません。基本的に「固定観念」は心に深く固まる内容やを示し、考え方や行動などを規定してしまうため、自然と範囲が狭まることがほとんどであるからです。
「概念」と「観念」の意味の違いは「一般的か主観的か」
ここで「概念」と「観念」の意味の違いを考えてみましょう。「概念」とは「同類のものごとに対する意味内容で、適用範囲が明確であり、ものごとがどのようなものであるのかを表現・定義したもの」です。
つまり、猫の概念なら、「ニャーと泣く毛の生えた動物」、納豆の概念なら「日本の食べ物で発酵食品」などと言うことができます。
一方「観念」は、「ある物事に対して抱かれるアイデアや考え」となるため、「概念」という一般的で客観的な考えに対し「主観的で考え」を表す言葉となります。つまり、自分の頭の中に存在する、自分が抱くイメージを中心とした、自分にしか当てはめることができない考えという意味です。
たとえば、猫の観念なら「ペットとして人気があり、フサフサした毛並みが特徴的。癒し系の動物」、納豆の観念なら「体に良くネバネバとした食品。辛子を加えるとさらに美味しくなる」など、主観的な部分が大きく締める考えや内容となります。
「固定観念」を使った5つの熟語表現
続いて「固定観念」を使った熟語表現をいくつか挙げてみましょう。何度も繰り返すようですが、基本的に「固定概念」は「固定観念」の誤用となりますので、ここでも「固定観念」でよく使われる熟語表現として例文と併せて解説していきます。
「固定観念にとらわれる」
「固定観念にとらわれる」は、「心に凝り固まったものごとへの考えから抜け出せない」時に使われる表現です。ネガティブな意味で使われることがほとんどで、ある一定の範囲のみに考えが留まり、思考的に動きが取れず、前に進めない状態を意味しています。
- 固定観念にとらわれて、新しい商品の開発ができない。
- 斬新なアイデアが生まれないのは、固定観念にとらわれているからだ。
「固定観念にとらわれない」
「固定観念にとらわれない」は、上記で解説した「固定観念にとらわれる」の反対の意味で使われます。つまり、ものごとへの捉え方や考え方が自由で、発言や行動が縛られないという意味で使われる表現です。
- 今年の新人は、固定観念にとらわれないフレッシュなアイデアを多く持っている。
- 固定観念にとらわれないAさんは、会議での発言も実に自由奔放である。
「固定観念を捨てる」「固定観念を壊す」
「固定観念を捨てる」や「固定観念を壊す」は、固定観念が心に凝り固まることで、考えや行動に弊害をもたらす時に、その固執した部分を「取り払う」という意味で使われます。主に、新しいことを学んだり、斬新で未開なものへチャレンジする際に「脳裏に固定された観念を捨て(壊し)、次のステップへと踏み出す時にポジティブな意図を持って使われる表現です。
- 固定観念を捨てて、新しいプロジェクトを進めようじゃないか。
- 他社との合併により、社員は既存の固定観念を捨て、新しい社訓に従うことになる。
「固定観念を覆す」
「固定観念を覆す」もビジネスや商業の場で使われる表現です。自分にしかない凝り固まった考えがどこかに飛んでしまうほど、衝撃的で革新的な経験をしたり、強固な考えをもひっくり返してしまうくらい印象的な人に出逢ったりした時に使うことがあります。
- Aさんとの出会いは、自分の中にある固定観念を覆すほど印象的だった。
- 固定観念を覆したのは、海外のある小さな村を訪れた時だった。
「観念」の類語と対義語は?
「固定観念」の「観念」について、類語と対義語を挙げてみます。
「観念」の類語は「概念」「コンセプト」
「観念」の類語は「概念」の他、カタカナ語としても使われる英語の「concept(コンセプト)」が挙げられます。「コンセプト」は観念や概念、また意見や構想、ものごとへの理解などを表す言葉で、頭や心に根付くしっかりとした考えや思いなどを意図する文脈で多く使われています。
たとえば「この計画に対するコンセプトはどのようなものですか?」という文章では、「この計画に対する構想(意見、思い)はどのようなものですか?」という意味になります。
「観念」の対義語は「現実」「実践」「実際」
「観念」の対義語として正しい言葉はみつかりませんでした。しかし「観念」が中心に示す「頭の中にある主観的な考え」と逆に位置する言葉として考えれば、「現実」「実践」「実際」などが挙げられるかもしれません。
実際に「観念的」の対義語が「現実的」「実践的」「実際的」であるため、これらの言葉を類語として捉えることもできるでしょう。
まとめ
「固定概念」とは「固定観念」が誤って使われるようになった四字熟語であるため、「固定概念」は「誤用」となります。しかし、「固定概念」は現実的にはまだまだ使われる表現であるため、意味の上では「固定観念(心に凝り固まったものごとに対する考え)」と同じものとして捉えておく必要があるでしょう。
ぜひ、ビジネスシーンや公的な文章で用いる時は「固定観念」を選び、相手に誤解を与えないように心がけるようにして下さい。