「おそれおののくこと」を意味する「畏怖」という言葉。単に「恐怖」を意味する言葉ではないことを知っていますか?
「畏怖の対象は何なのか?」という疑問を持っている方に向けて、「畏怖」の意味や使い方、類語を紹介します。例文も併せて紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
「畏怖」の意味とは?
「畏怖」の意味は「おそれおののくこと」
「畏怖」とは「おそれおののくこと」を意味する熟語です。読み方は「いふ」であり、自分ではどうしようもない、圧倒的な力をもつものに対して使用されます。
畏怖の対象は「神」や「自然」など大いなるもの
「畏怖」の対象には「神」や「自然」など、人の手ではどうにもならない圧倒的なものになります。おそれつつも、尊敬のまなざしが向けられているものに対して使われます。地震や豪雨など人間の力ではどうにもならない自然の大きな力や、「神」や「仏」など人々が信仰している大いなるものが対象です。
単純に怖いのではなく「圧倒されおびえる様子」を表す
「畏怖」のそれぞれの漢字は、このような意味を持ちます。
- 「畏」の意味…「おそれる」「かしこまる」
- 「怖」の意味…「こわい」「おびえる」
「おそれる」には、「力のあるものに圧倒され、心が弱くなる」という意味が、また「かしこまる」には「相手をおそれ慎んだ態度をとる」ことを意味します。単に「怖い」のではなく、「対象の偉大さに圧倒され、おそれおののき慎んでいる」ことを、「畏怖」と表すのです。
「畏怖」の使い方・例文
「畏怖する」「畏怖される」のように使う
「畏怖」という言葉は、「畏怖する」や「畏怖される」のような使い方をします。例えば「科学では説明できないことが目の前で起こり、畏怖してしまった」という例文は、「科学では証明できないことが目の前で起こり、おそれおののいてしまった」という意味になります。
「畏怖」は恐怖だけでなく「尊敬」の気持ちも含む
「畏怖」には「恐怖」だけでなく、「尊敬」の気持ちも含まれています。例えば、お化け屋敷や暗がりなど「苦手で怖い」という感情に、「畏怖」は使いません。「天災」や「自分よりも圧倒的に力のあるもの」に対して、圧倒され恐怖を感じる状況で使用されます。
「畏怖の念」は「おそれおののく気持ち」を表す
「畏怖」の使い方に「畏怖の念」というものがあります。「おそれおののく気持ち」を表しており、「畏怖の念を覚える」「畏怖の念を感じる」などの使い方をします。
「畏怖の念を抱(いだ)く」という表現もあるのですが、「抱く」という表現は「畏怖」の類語である「畏敬(いけい)を抱く」という表現から派生したもので、「畏怖」にはふさわしくないという考えもあります。
ただ、「畏怖の念を抱く」という表現は文法的に正しい表現であり、慣用化されているため「間違い」と言い切ることはできません。人によっては「間違いだ」と捉えられることもあると、覚えておくといいでしょう。
「畏怖」を使った例文
- 目の前に広がる大自然に圧倒され、畏怖の念すら感じた
- 人は説明のつかない現象に、畏怖するものだ
「畏怖」の類語
「畏敬(いけい)」のほうが尊敬の気持ちが強い
「畏怖」の類語には、「心からおそれ敬うこと」を意味する「畏敬」が当てはまります。「おそれおののくこと」を意味する「畏怖」と似た意味を持つ言葉ですが、「畏敬」の方が「尊敬」の気持ちが多く含まれているという違いがあります。使うときは「畏敬の念を抱く」などの言い回しです。
「畏怖」は「おそれ」の気持ちが強く、「畏敬」は「敬う」気持ちが強く表れている漢字です。
「恐懼(きょうく)」は「おそれかしこまる」を意味する
「畏怖」の類語には、「おそれかしこまること」を意味する「恐懼」も当てはまります。読み方は「きょうく」です。江戸時代では手紙の末尾に使用し、相手に敬意を示していたことから、尊敬の意味も含まれている熟語です。
現代では「おそれかしこまる」「おそれて縮こまってしまう」ことを表しており、「恐懼する」や「恐懼に堪えない」などの使い方をします。
「畏怖」の英語表現
「畏怖」を英語にすると「awe」
「畏怖」を英語表現にしたのが「awe」という単語です。「畏怖」「おそれ」を意味する単語で、「in awe(畏怖する)」のように使われます。例えば、「I am in awe of nature」だと「自然を畏怖する」となります。
また、「Awe of mind」だと「畏怖の念」となるため、状況に応じて使用しましょう。
まとめ
「おそれおののく」を意味する「畏怖」という言葉。単に「怖さ」を表しているのではなく「大きな力に圧倒され、おそれている状況」で使用されます。「畏怖する」や「畏怖の念」などの使い方をし、類語には「畏敬」「恐懼」が当てはまります。「おそれ敬う」を意味する「畏敬」とは「尊敬」の度合が違うため、状況に応じて使用しましょう。