「人口に膾炙」の意味と語源は?使い方の例文と類語も紹介

「人口に膾炙」とは「人口に膾炙する」と使われるのが一般的な言葉。ビジネスやプライベートな場面において日常的に使う言葉ではないため、正しい意味をご存知でない方も多いのではないでしょうか。今回は「人口に膾炙」の言葉の意味と語源について解説します。また使い方の例文と類語に加え、英語での表現も紹介します。

「人口に膾炙」の意味や読み方とは?

「人口に膾炙」の意味は”広く人々の話題にのぼること”

「人口に膾炙」の意味は、”広く人々に知れ渡ること・広く人々の話題にのぼること”です。ポジティブな話題にのぼる場合に使う言葉で、ネガティブな意味合いでは使わない言葉です。

「人口」とは、「世の中の人の口」「人のうわさ」を意味しています。人数のことをさしているのではありません。また、「膾炙」という言葉は「広く知れ渡ること」「広く話題にのぼること」を意味しています。「膾炙」の意味の語源については、後ほど詳しくご紹介します。

「人口に膾炙」の読み方は”じんこうにかいしゃ”

「人口に膾炙」は、「じんこうにかいしゃ」が正しい読み方となります。「人口」は「人の口」や「人のうわさ」を意味するため、「一口」を「ひとくち」と間違えて覚えてしまう方もいるかもしれませんが、「じんこう」が正解です。また「炙」と言う漢字は一見すると「炎」とよく似ていますが、誤って「かいえん」と覚えてしまわないように注意しましょう。

故事成語「人口に膾炙」の語源と由来とは?

「人口に膾炙」の語源は”膾”と”炙”

「人口に膾炙」という言葉は、料理の「膾」(なます)と「炙」(あぶり)が語源となります。「膾」と「炙」のどちらも、かつての中国においては、美味なものとして誰もが好む人気の料理でした。あらゆる人々の口に好まれるの意味合いから、「膾炙」の言葉が「広く人に知れ渡る」「広く話題に上る」として使われるようになりました。

なお、「なます」と聞くと、お正月のおせち料理として食べる紅白のなますを思い浮かべる方も多いことでしょう。しかし、かつての「膾」は、野菜ではなく生の肉や魚・貝などを細かく刻んだものをさしています。また、「炙」とは「炙り肉」を意味しています。

「人口に膾炙」は中国語の詩が由来

「人口に膾炙」は、中国語の詩を由来とする故事成語です。唐の時代の詩人である「林嵩」による「周朴詩集序」(しゅうぼくししゅうじょ)の中に、「一編一詠、膾炙人口」との一節が記されています。

「一編一詠、膾炙人口」とは、「どの文章や詩も、世の中で広く話題になった」との意味を持ちます。「一編」とは「文章や詩の中の一つのかたまりである文章」を、「一詠」(いちえい)とは「一つの詩」を意味する言葉です。

「人口に膾炙」の使い方と例文とは?

「人口に膾炙する」と使うのが一般的

「人口に膾炙」と言う言葉は、そのまま使うのではなく、後ろに「する」や「した」をつけて使うことが一般的です。「人口に膾炙する○○」「人口に膾炙した○○」と使い、○○が世間に広く知られていることを表します。

「人口に膾炙する」を使った例文

「人口に膾炙する」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 当時の彼は、右に並ぶ者もいないほど偉大な詩人と言われていた。しかし、人口に膾炙する詩文ばかりというわけではなく、蓋を開けてみると、駄作もそれなりに残している。
  • 彼は時代の変化を的確に捉えることで、常に人口に膾炙する作品を世に送り出してきた。

「人口に膾炙した」「人口に膾炙して」を使った例文

「人口に膾炙した」や「人口に膾炙して」を使った例文をご紹介しましょう。

  • この図書館は豊富な品揃えが魅力だ。人口に膾炙した小説から、読む人が誰もいないようなマニアックな技術書まで、幅広い書物を取り揃えている。
  • 芸術家を志したからには、人口に膾炙して、後々も人の記憶に残っていくような作品をつくっていきたいものだ。

「人口に膾炙」の類語とは?

類語①「口の端に上る」の意味は”話題になる”

「口の端に上る」(くちのはにのぼる)という言葉は、「人々の話題になる」「話の種となる」を意味しています。「人口に膾炙」は、「誰の口にも美味しいもの」を語源とすることから、ネガティブな意味合いには使わない言葉です。しかし、「口の端に上る」はポジティブともネガティブとも使い方を限定していません。なお、「くちのはにあがる」は正しい読み方ではないので、間違えないように注意しましょう。

類語②「口の端に掛ける」の意味は”うわさをする”

「口の端に掛ける」(くちのはにかける)も、「人口に膾炙」の類語で、「うわさをする」「話題にする」の意味を持ちます。しかし「口の端に掛ける」は、「言葉の端々に言う」の意味合いも持っているので、前後の文脈を見たうえでどちらの意味合いとして使っているかを判断してください。

類語③「持て囃される」の意味は”褒められる”

「持て囃される」(もてはやされる)とは、「話題となって騒がれる」「褒められる」の意味を持っています。人からポジティブな評価を受けるという点から、「人口に膾炙」の類義語であると言えます。しかし「人口に膾炙」が「世の中広く」の意味合いを持つのに対して、「持て囃される」は範囲を限らずに使う場合もある点が異なります。

「人口に膾炙」の英語表現とは?

英語では「be well known」が適している

「人口に膾炙」を英語で表現する場合は、「be well known」を使うのが適しています。「be well known」は直訳すると「よく知られた」となり、「人口に膾炙」の「広く知られる」「広く話題に上る」と同じ意味合いとなります。

「popular topic」も「人口に膾炙」と似た意味

「popular topic」も、「人口に膾炙」を英語で表現する場合に使うことができる言葉です。「become a popular topic of conversation」は、「話題にのぼる」の意味となります。

まとめ

「人口に膾炙」とは、「広く人々に知れ渡る」「広く話題にのぼる」の意味を持つ、ポジティブな意味合いで使う言葉です。日頃から頻繁に使用する言葉ではないですが、「広く人々に知れ渡る」「広く話題にのぼる」を表現する言葉の一つとして、意味を理解しておきましょう。