「満を持して」の意味や由来は?間違い表現や使い方の例文を解説

「満を持して」は、「満を持して公開」など待ち望んだ絶好のタイミングが来た時に用いられる言葉です。新商品や映画・小説などを発表する時によく使われます。今回は「ここぞ」という場面にぴったりな「満を持して」の意味や由来、間違い表現や使い方の例文まで詳しく解説していきます。類語や英語表現も紹介するので参考にしてください。

「満を持して」とは?

「満を持して」の意味は”準備を整えて機会を待つ”

「満を持して」の意味は、“十分に準備を整えて最良の機会を待つ・物事が絶頂に達した状態を保つこと”です。動詞「満を持す(まんをじす)」に接続助詞「して」を付けた表現です。

「満」の意味は「満ちること」や「十分足りている」ですが、「満を持して」の場合では「弓を引き絞ること」という通常とは異なる意味として使われます。つまり「満を持して」のもともとの意味は、「弓を引き絞った状態を維持し、いつでも獲物となるものを確実に射られるようにしておく」であり、現代で使われるようになった2つの意味はそれが転じたものだと言われています。

中国語の書物「史記」に由来あり

「満を持して」の語源は、中国の歴史書「史記」に登場する“持満(じまん)”という言葉が由来とされています。「史記」において“持満”は「いつでも攻撃できるよう弓を引き絞った状態でいる」という意味であり、このことが現在使われる意味まで発展したと言われています。

「万を辞して」「満を期して」は間違い

「満を持して」を「万を辞して」や「満を期して」といった表現で使っている方がいますが、これは間違いです。辞書上には存在しませんし、漢字の意味を見ても言葉として成り立ちません。

「満を持して」の使い方と例文とは?

「準備万端の状態でいること」を表現する時に使う

「満を持して」は、いつ訪れるかわからないチャンスや絶好のタイミングを逃さないために準備万端でいるということを表す時に使います。時制を変えたい時は、「満を持して」に続く文章を過去形に変えます。

「満を持して登場する」「満を持して放つ」はよく使う

「満を持して」を使ったフレーズとして、以下の2つの表現がよく使われます。

  • 「満を持して登場する」

→準備万端な状態で、絶好のタイミングを狙い登場するという意味

  • 「満を持して放つ」

→物事が最高潮な状態で世の中に何かを発表するという意味

「満を持して登場する」は何か特別な場所や場面に登場するときに、「満を持して放つ」は商品や作品を発表するときに用いられることが多いです。

「満を持して」を使った例文

「満を持して」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 「親友は昨日、満を持して全国放送に登場した」
  • 「満を持して放った小説が爆発的に売れた」
  • 「我が息子は、満を持して高校野球にデビューした」
  • 「満を持して挑んだ戦いに敗れてしまった」
  • 「僕は憧れのあの子に、満を持して告白する」

「満を持して」の類語や対義語とは?

満を持しての類語には「爪を研ぐ」など複数ある

「満を持して」の類語は複数ありますが、今回は中でもより意味が似ている3つの言葉を紹介します。

  • 「爪を研ぐ(つめをとぐ)」

→「用意を怠らず機会をねらう」という意味を持ちます。ただ「野心を抱いて待つ」といった意味もあるため、「満を持して」よりも狙いを定めている印象が強いです。

  • 「待ち構える(まちかまえる)」

→「用意を整えて相手を待つ」という意味を持ちます。「待ち構える」には「待ちもうける」という意味もあり、「満を持して」と違って何かしらの期待感が込められています。

  • 「手ぐすね引く(てぐすねひく)」

→「十分用意して機会を待つ」という意味を持ちます。「いざ来いと待ち構える」という様子が、「満を持して」の持つニュアンスと非常に似ています。

満を持しての対義語は「準備不足」

「満を持して」の対義語は「準備不足(じゅんびぶそく)」です。「準備不足」は“備えが満足ではない様子”を表す言葉で、「満を持して」の“準備万端”とは正反対の意味を持ちます。

「満を持して」の英語表現とは?

「満を持して」は英語で”long-awaited”

「満を持して」を英語に翻訳するなら、“待ち構えている”という意味を持つ「await」を使って「long-awaited」と表現するといいでしょう。「long-awaited」は名詞を修飾する形容詞として使います。

  • ” His long-awaited novel was released.”

→「満を持して彼の小説が販売された」

「満を持して待つ」なら”wait with full preparation”

「満を持して待つ」なら、“最大限の準備“を意味する「full preparation」を使って「wait with full preparation」と表現します。先ほどの「long-awaited」と違い、「wait with full preparation」は動詞のように使います。

  • “He waits with full preparation.”

→「彼は満を持して待つ」

まとめ

「満を持して」は、中国語の歴史書『史記』の中に書かれている「持満」が語源となった言葉です。「弓を引き絞った状態を維持しつつ絶好のタイミングを待つ」と意味を持ち、現代ではビジネスから日常的なシーンまで幅広く使われています。時制を変えたい時は、「満を持して」に続く文章を過去形などにして使いましょう。