「吶喊」の意味とは?「突貫」との違いや類語・対義語も例文で解説

「吶喊(とっかん)」とは、映画やドラマなどの戦闘シーンで耳にする言葉です。大声で叫ぶことや突撃することの意味を持ちます。

ここでは「吶喊」の意味や使い方、類語や対義語を解説。同じ読み方をする「突貫」との違いや、中国の思想家である魯迅(ろじん)の『吶喊』についても触れています。

「吶喊」とは?

「吶喊」の意味は”大声で叫ぶこと・突撃すること”

「吶喊」の意味は、“大声で叫ぶこと・声を張り上げて突撃すること”です。「兵語」の一つです。

戦いの場面において「敵陣に突入の際に士気を高めようと大声で叫ぶこと」を指し、指揮を司る人物の合図に応じて、声を腹の底から張り上げること、またその叫び声そのものを意味する言葉となります。

広い意味では状況に関わらず「大勢の人が一斉に大声を上げて叫んだり、鬨(とき)の声を上げること」となります。

「吶喊」は”突貫”のことでもある

「吶喊」とは「突貫」のことでもあります。「突貫」には、次の3つの意味があります。

「突貫」の3つの意味

  1. 無理をしてでも突き通すこと
  2. 鬨の声を上げて突撃すること
  3. 短時間で一気に仕事を終わらせること

「吶喊」と同じ意味に該当するのは2番目の「突撃」です。この意味では、敵陣の戦線を強行突破し猛攻撃に徹することを指し、声を荒げて突き進む様子を表しています。

ちなみに、3番目の「短期間で一気に仕事を終わらせること」という意味で使われるのが「突貫工事」です。つまり、ほんの数時間や一夜の内に仕事を仕上げることを指します。

「吶喊」の読み方は”とっかん”

「吶喊」は“とっかん”と読みます。おそらく普段ほとんど見かけない漢字二つで構成された言葉であるとお気づきでしょう。

「吶喊」の「吶」は「どもる」とも読み、言葉をスムーズに話すことが困難であることを指します。加えて「大声を出す」「叫ぶ」という意味合いも含まれている漢字です。

さらに「吶喊」の「喊」は「さけぶ」と読み、こちらも「大声を上げる」「戦いの場面で声を放つこと」という意味を持ちます。

「吶喊」と「魯迅」の関係とは?

『吶喊』は魯迅の短編集の名前でもある

『吶喊』は、中国の偉大な思想家「魯迅」が残した短編集の名前です。魯迅は『吶喊』の自序で日本での経験をこのような内容で述べています。

近代医学を学ぼうと日本の仙台に留学をしたものの、途中で放棄。東京に移り全く別の分野である文学を志すようになった。

当時は日露戦争の真っただ中で、ニュースでは裏切者への見せしめや残酷なシーンが数多く流れショックを受けた。この状態で医学など意味は持たない。今必要なのは彼らの精神を改善するために、それに相応しい文学を学ぶべきである。

「吶喊」が戦争に関する内容に深く関係していることが、本の断片からも理解できます。

「吶喊」の使い方と例文とは?

「吶喊する」という表現を使うことも多い

「吶喊」は動詞的な使い方「吶喊する」という表現で文章に用いられることも多い言葉です。たとえば「これから敵陣へと吶喊する」などのように使われます。

「吶喊」は戦闘モノの映画や小説でよく使われる

「吶喊」は、戦いや戦闘などに直面していない日本においては、日々の生活で使うに適した言葉ではありません。「吶喊」が使われている場所と言えば、戦のシーンが登場する時代劇や戦闘を題材にした映画や小説の中などがほとんどです。

「吶喊」には「大声を出す」という基本的な意味がありますが、たとえば近所で火事があった時「火事だー!」と大声を出したり、スポーツの試合で「行けー!」と声を張り上げたりする時に「吶喊」を使うのは、本来の意味からすれば適切ではありません。

ビジネスシーンでは比喩的に使われることも

ビジネスシーンでは過酷なマーケット市場やライバルの緻密な戦略が飛び交う、まさに「戦場」と化している世界です。ビジネスシーンでも笑顔で乗り切ることができる状況もあれば、戦いを控える兵士の気持ちで敵地に乗り込まなければならない時もあるでしょう。

そのような場合、これから戦いに挑む気持ちや意気込みを「吶喊」で比喩的に表現することができます。たとえば「吶喊の声を心に刻み、A社の契約を奪いに行くぞ!」というようにです。

「吶喊」を使った例文

「吶喊」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 聞こえるか?敵陣が吠える吶喊の叫びが…。
  • 我が軍の吶喊が天と地に響き渡った。
  • 吶喊を第一声に、戦は幕を切った。

「吶喊」の類語と同義語とは?

「吶喊」の類語は”鯨波”や”喊声”

「吶喊」の類語には、戦の冒頭で軍が一団となって発する勇ましい叫び「鯨波(げいは)」や、突撃と同時に大声を出す「喊声(かんせい)」、また勇ましく叫び吠えることを意味する「雄叫び(おたけび)」などがあります。

「雄叫び」については他の2つの色合いがやや異なり、オオカミや犬などの動物が相手を威嚇するという意味を含んだ言葉となります。

「吶喊」と「突喊」は同音類義語

「突喊」の意味は「突撃の号令に合わせて叫ぶ」となり、「吶喊」をさらに強調する意図で使われます。つまり「吶喊」とほぼ同じ意味となります。

「吶喊」と「鬨の声」は同意語

「鬨(とき)の声」は、これから戦いに挑む兵士が士気を鼓舞させ、突撃開始の合図として発する言葉です。こちらは同意語として言い換えができます。

  • 遠方で敵軍の吶喊がこだました。
  • 遠方で敵軍の鯨波がこだました。

「吶喊」の英語表現とは?

「吶喊」は英語で”scream”や”roar”

「吶喊」は基本的に叫ぶという意味の「scream」を使うのが一番です。しかし、戦いに向けて勇ましく大声を出すというニュアンスを強めれば、吠えるという意味の「roar」が最も的を得ています。

「roar」はオオカミや犬などの動物に限らず、人が勇敢に声を張り上げることも指すため、文脈での士気の抑揚を上手に表現することができるでしょう。

「吶喊」を使った英語例文

「吶喊」を使った英語例文をご紹介しましょう。

  • We heard that the enemy roared to start the war.
    敵陣は吶喊し、攻撃を開始した。
  • Have our voice of roar reached to the sky!
    我々の吶喊が天に届いたか!

まとめ

「吶喊」は「とっかん」と読みます。「吶喊」には「大声を上げる」「突撃の際に士気を高めるために声を張り上げる」「大勢で声を上げて叫ぶ」という意味があり、「突貫(とっかん)」や「突喊」と同じような使い方をする場合があります。

「吶喊」は日ごろの生活ではあまり使うことがありません。しかしk時代物や戦闘をベースとした創作作品にはよく登場する言葉ですので、意味や使い方を理解しておくと便利です。ぜひ、この機会にマスターしましょう。