「思いを馳せる」の意味は?使い方の例文や類語・熟語の言い換えも

「思いを馳せる」は、「過去の思い出に思いを馳せる」など、どこかしら懐かしさや哀愁を感じさせる場面で使われる言葉です。言葉の響きに詩的な美しさがあるため、ビジネスや日常シーンよりも小説などに用いられることが多いです。今回はこの「思いを馳せる」の意味や使い方の例文、類語や英語表現までを解説していきます。

「思いを馳せる」の意味とは?

「思いを馳せる」の意味は「遠く離れている人・物事を思う」

「思いを馳せる(おもいをはせる)」は、「遠い存在や距離的に離れている人・物事を思う」「いろいろと想像し思いを募らせる」という意味を持つ言葉です。“思いを馳せる対象”には、現実的な距離感だけではなく、子供の頃の思い出など過去や未来も含まれます。

古語辞典の意味は「思いを走らせる」

「馳せる」の古語辞典上の意味は「走らせる」や「遠くまで至らせる」です。「思いを馳せる」の根底には「思いを遠い目的地や時間、状態に到達させる」という意味があります。「その遠い存在に近くために思いを寄せる」といった心境が、現在使われている意味に発展したと考えられています。

「思いを馳せる」の使い方と例文

「遠いと感じる対象物」に対して使う

「思いを馳せる」は、遠い存在と感じている憧れの人や遠く離れた故郷に住む両親、また幼い頃の遠い記憶など、“自分から遠いと感じる対象物”に対して何か思うときに使います。

対象物が人である場合もありますし、記憶や思い出のような物事、故郷のような関わりの深い場所にも言えます。

「過去に思いを馳せる」「未来に思いを馳せる」もよく使う

「思いを馳せる」という表現は、「過去」「未来」と一緒に使うケースがよくあります。単に過去や未来のことを考えているというよりも、「そのことについて色々と想像し、思いを募らせている」という内に秘めた激しさがあり、ときには苦悩や悲哀、希望も感じさせます。

「過去」「未来」を使った例文
  • 「幼い頃に死別した父親との思い出に、思いを馳せることが増えた」
  • 「彼女との未来に思いを馳せている」

「思いを馳せる」の例文

  • 「一人になると、なぜか学生時代に思いを馳せてしまう」
  • 「家族へ思いを馳せる時間さえないほど忙しい毎日」
  • 「故人に思いを馳せる君の横顔はいつも寂しそうだ」
  • 「俳句の世界では、何かに思いを馳せるようなシーンがよく使われる」
  • 「上京してからというもの、故郷に思いを馳せることが多くなった」

「思いを馳せる」の類語は?

類語は「思いを巡らす」「思いを募らせる」

「思いを馳せる」の類語としてあげられるのは、「思いを巡らす」「思いを募らせる」です。「思いを巡らす」は、「あれこれと考える」や「多方面に心を動す」という意味を持つ言葉です。意味は似ていますが、「思いを巡らす」には「思いを馳せる」のようなノスタルジックなニュアンスは含まれていません。単純に“そのことを考える”や“想像する”というようなシーンでは、「思いを巡らす」を使うといいでしょう。

「思いを募らせる」は「物事への思いが日に日に強くなる」という意味を持つ言葉で、「思いを馳せる」の「いろいろと想像し思いを募らせる」という意味と非常に似ています。しかし「遠く離れている人・物事を思う」といったニュアンスはありません。

熟語で表現するならば「想像」「妄想」

「思いを馳せる」と似た表現の熟語をあげるとすれば「想像」「妄想」です。「想像」は「実際にありえないようなことを頭の中に思い描く」という意味を持つ言葉です。「思いを馳せる」のようなノスタルジックなニュアンスはありませんが、“いろいろと頭の中で思い描いている”という点では似ています。

「妄想」は「あれやこれやと根拠もなく想像する」という意味を持つ言葉です。内容は違えど、「妄想」もいろいろと頭の中で思い描いているという点では「思いを馳せる」と似ています。「妄想」には『被害妄想』の表現のように、根拠のないことでも確信し訂正できないといったネガティブなニュアンスが含まれています。使い方には十分注意しましょう。

「思いを寄せる」は同義語ではない

「思いを寄せる」は「自分の気持ちを向ける」という意味を持つ言葉であり、その対象は恋心を抱く異性であることが多いです。また「こんな感じだったな」「皆は元気だろうか」と“思い描く”ニュアンスの強い「思いを馳せる」とは違い、「思いを寄せる」は“心を対象物に動かす”というニュアンスの方が強いです。

「思いを寄せる」はよく同義語と間違われますが、思いを寄せる対象物や含まれるニュアンスには違いがあります。

「思いを馳せる」の英語表現は?

「思いを馳せる」の英語表現は「think of」「think about 〇〇」

「思いを馳せる」を英語にする場合、”考える“や”思う“という意味を持つ「think」を使って「think of 〇〇」または「think about 〇〇」(直訳:〇〇のことを考える・思う)」と表現します。〇〇にあたる人・物事のみ考えている場合は「think of」、〇〇を含んだ内容を考えている場合は「think about」を使います。この2つは日常的に使われるカジュアルな表現です。

  • “I think of you.”

→「君に思いを馳せる」

フォーマルな表現なら「one’s thoughts go to」

フォーマルな表現なら、”思考“や”想像力“という意味を持つ「thought」を使った「one’s thoughts go to 〇〇」がいいでしょう。〇〇の部分に思いを馳せる人や物事を入れて使います。

  • “My thoughts is going to my hometown.”

→「私は故郷に思いを馳せている」

まとめ

「思いを馳せる」は、自分より遠くに感じる存在や物事などに対して使う言葉です。過去・未来関係なく使える表現なため、幅広いシーンで使うことができます。言葉に上品さや詩的な美しさがあるため、日常的にというよりも小説などに用いられます。恋心が含まれた「思いを寄せる」とは同義語ではないので、言い換え表現として使わないよう気をつけましょう。