「切に願う」の意味や使い方とは?敬語表現と類語も例文で解説

「切に願う」は、「こうありたい」「そうあって欲しい」といった強い願いが込められた言葉です。かしこまった印象を与えるため、ビジネスシーンや立場が上の人とのやりとりでは頻繁に用いられます。今回はこの「切に願う」の意味について、ビジネスやフォーマルなシーンで使える敬語表現、類語や英語表現まで幅広く解説していきます。

「切に願う」とは?

「切に願う」の意味は”心からそうなって欲しいと考える”

「切に願う」の意味は、“心の底からそうなって欲しいと考えるさま”です。副詞である「切に」には、ただ願うのではない切迫感のある“本気の願望”といったニュアンスが含まれています。

「切に願ってやみません」はネガティブ表現

「切に願う」は、「切に願ってやみません」と語尾を変えて使われることもあります。この場合の「やみません(やまない)」は、「〇〇せずにはいられない」「どこまでも〇〇する」という意味を表すため、「強く願っているが実現しそうにない」といったネガティブな印象を与えます。

また「切に願うばかり」という表現も、“ばかり”に含まれた「〇〇するしかない」といった意味から「やみません」同様にネガティブな印象を与えます。語尾を変えるだけでだいぶ印象が変わってしまうので、使い方には注意が必要です。

「切に願う」の使い方と例文とは?

とても強い願望を表す時に使う

「切に願う」は、一生のうちに何度も訪れないようなチャンスや機会などに対し強い願望を表す時に使います。具体的なケースはこちらです。

【「切に願う」を使うケース例】

  • 出産
  • 大恋愛・プロポーズ
  • 大失恋
  • 大きな手術やプロジェクト
  • 志望校の大学受験 など

強い願望を表す「切に願う」は、頻繁に訪れるような出来事や小さい願望にあたる事には使うことができません。厳密に決められているわけではありませんが、どんな状況にでも使うと願いの真剣度が薄れ、相手にも「本気ではないな」などと思われてしまいます。「切に願う」は“ここぞという場面”で使うことがポイントです。

ビジネスでは「切に願っております」を挨拶に使う

ビジネスシーンで使う場合は通常の意味とは異なり、「〇〇が上手くいくように」と相手のために願うような意味合いで用いられます。「ご活躍を切に願っております」は、ビジネスメールや文書の文末・締めの挨拶として使われることが多いです。

敬語として使う場合は「願う」に続く言葉を変える

「切に願う」は、“願う”の後に続く言葉を丁寧語・謙譲語に変えることで敬語として使えます。今回は、ビジネスやフォーマルなシーンでよく使われる4つのフレーズを紹介します。

  • 切に願っています(丁寧語)

→1番シンプルな敬語の形。相手に敬意を払う時に使います。

  • 切に願っております(謙譲語)

→上司や先輩など、自分よりも立場が上の人に使います。

  • 切にお願い申し上げます(謙譲語)

→社長など、自分よりもはるかに格上な相手に対して使います。もちろん「切にお願っております」よりも丁寧です。

  • 切にお祈り申し上げます(謙譲語)

→「切に」はそのままに、「願う」を「祈る」に言い換えた表現です。「願う」の自分から積極的に願いを叶えるようなニュアンスに対し、「祈る」は神などの偉大な存在に運命を委ねるニュアンスがあります。応用編として覚えておくと表現の幅が広がります。

後に続く言葉を尊敬語にすると、「切に願っておられます」と自分ではなく相手が願っている印象を与えてしまい文章としておかしくなります。そのため、通常は尊敬語の形はとりません。

「切に願う」を使った例文

【基本的な使い方の例文】

  • 「とにかく母子ともに健康なことを切に願うよ」
  • 「この恋が成就するよう切に願っている」
  • 「君が失恋から立ち直って欲しいと切に願う」
  • 「難しい手術と聞いているが、成功することを切に願っている」
  • 「僕は、第一志望の大学に合格できるようにと切に願った」

【ビジネスシーンで使う場合の例文】

  • 「貴社の益々のご発展を切に願っております」
  • 「貴社の良きパートナーであり続けられることを切に願っております」

【敬語表現の例文】

  • 「〇〇さんの愛猫が早く見つかることを切に願っています」
  • 「先輩の昇進が決まることを後輩として切に願っております」
  • 「館内での携帯のご使用は控えていただくよう切にお願い申し上げます」
  • 「息子さんの益々のご活躍を切にお祈り申し上げます」

「切に願う」の類語や似た意味の熟語とは?

類語は「強く欲しがる」「激しく求める」

「切に願う」の類語は、「切に願う」をわかりやすく言い換えた「強く欲しがる」や「激しく求める」という言葉があげられます。この2つの言葉は類語ではありますが、どちらも日常会話や近しい間柄で使うようなカジュアルな表現なためビジネス向きではありません。そのため、かしこまったシーンではフォーマルな印象を与える「切に願う」を使う方が好ましいです。

似た意味の熟語は「渇望」「切望」「待望」

似た意味を持つ言葉であれば、以下の熟語があげられます。

  • 「渇望(かつぼう)」

→意味は「喉が渇いて水を欲しがるように心から望むさま」です。「水を飲まなければ死んでしまう」といった必死さ・心底願っているというニュアンスが、「切に願う」のような強い願望を表しています。願望の強さで言えば、生死が関わるようなニュアンスを持つ「渇望」の方が強いと言えます。

  • 「切望(せつぼう)」

→意味は「心から強く望むこと」です。「切望」は「切に願う」とほぼ同じ強さの願望を表す類語です。

  • 「待望(たいぼう)」

→意味は「待ち望むこと」です。“そうなって欲しいと考える”という点では似ていますが、「切に願う」よりも積極的に願うといったニュアンスが薄い類語です。

「切に願う」の英語表現とは?

「切に願う」の英語表現は”sincerely wish”

「切に願う」を英語にする場合、”心から“という意味を持つ副詞「sincerely」を使って「sincerely wish」と表現します。”正直に“といった意味もあるため、”誠実に願っている“というニュアンスを伝えることができます。

「earnestly hope」でも表現できる

“熱心に”という意味を持つ副詞「earnestly」を使って「earnestly hope」と表現もできます。こちらは“真面目に”といった意味があるため、“真剣に願っている”というニュアンスを伝えることができます。

まとめ

「切に願う」は「心からそうなって欲しい」といった切迫したような強い願望を表す言葉で、後に続く言葉を丁寧語や謙譲語にすることで敬語として使うことができます。ビジネスメールや文書などでは、文末や締めの挨拶としてよく用いられます。一生に一度来るかどうかの出来事などに対し使う言葉なので、日常語のように頻繁に使うことはないでしょう。