// 「やさぐれる」の意味や語源とは?方言説や使い方の例文・類語も | TRANS.Biz

「やさぐれる」の意味や語源とは?方言説や使い方の例文・類語も

「やさぐれる」という言葉は、すねたり機嫌が悪くなったりするときによく使う表現ですが、実は「家出する」の意味もあります。もともとは「刀の鞘(さや)」を家に見立てた表現で、鞘から外れる(=ぐれる)ことを「やさぐれる」と呼んでいました。

今回は「やさぐれる」の意味や語源を解説しながら、使い方や類語、英語表現も紹介しましょう。また、方言なのか、漢字表記もあるのかどうか解説します。

「やさぐれる」の意味とは?

「やさぐれる」の意味は「家出する」「投げやりになる」

「やさぐれる」という言葉には2つの意味があります。1つ目は「家出する、宿無しの状態でふらふらする」という意味です。「やさぐれる」とは、家出人を表す「やさぐれ」が動詞化した言葉で、家出することを表しています。

もう一つの意味が、「投げやりになる」ことです。仕事や家庭、生活全般など投げやりになる対象は人それぞれですが、いずれにしても雑に対処する様子を表します。

「やさぐれる」に漢字はない

「やさぐれる」という言葉は通常、ひらがなで書きます。そのため「やさぐれる」という言葉にあてられた漢字はありません。本や文書の中では、当て字が使われることがありますが、それらはいずれも正式な「やさぐれる」の漢字ではないということです。

「やさぐれる」の語源と由来

「やさぐれる」の語源は「鞘から外れる」

「やさぐれる」という言葉は、刀を収める「鞘(さや)」が語源です。刀が戻るべき場所である「鞘」で、その人の戻るべき場所、つまり「家」を表していました。この「鞘」を反対にした「やさ」が、昔の不良と呼ばれる人々や警察関係者が使った隠語のひとつとされています。

そして「ぐれる」は、もともとは「ぐれ」という言葉で、「(道から)外れる」という意味でした。ここから「やさぐれ(=家から外れる)」という言葉が生まれ、動詞化した「やさぐれる」が使われるようになったと言われています。

現代の「やさぐれる」は「ぐれる」の誤用が由来

「投げやりになる」という意味の「やさぐれる」は、不良になる意味を持つ「ぐれる」を混同した言葉だと考えられています。

先に解説したように、もともと「やさぐれ」は家出の意味を持ちます。しかし、「ぐれ」が素行が悪くなる意味を表すことから、「やさぐれる」の印象が「すねる、投げやりになる」といったもう一つの使い方もされるようになったのです。

「やさぐれる」は方言なの?

方言の「ぐれる」は別の意味

日本では一部の地域(静岡県一帯)で、「ぐれる」という方言が使われています。この方言の「ぐれる」は、捻挫をするという意味で使われることが一般的です。そのため、方言の「ぐれる」と「やさぐれる」の「ぐれる」は別の意味であり、関係はありません。

「やさぐれる」の使い方と例文

「やさぐれた顔」は「すねた表情」を指す

「やさぐれた顔」とは、誰がみても不満そうで、投げやりな印象を持つ表情のことです。「やさぐれた顔」という言葉で、自分やその人の気持ちに、投げやりな感情や疲れなどから来る自暴自棄な様子を表すことができます。

  • 「そんなやさぐれた顔をしていると、誰も近寄って来なくなるよ」
  • 「彼は最近残業続きで、ろくな生活を送っていないそうだ、さすがにやさぐれた顔をしているな」

「やさぐれた女(男)」はその人の様子を表す

「やさぐれる」という言葉は、その人の様子・立ち振る舞い、または職業や素行にも使います。人物に対して使われる「やさぐれた」には、本来の「なげやりな」という意味があてられていることもありますし、イメージとしての「素行が良くない」という意味があてられていることもあります。

  • 「あんなやさぐれた男と結婚しなくて良かった、とみんなが安心しているよ」
  • 「いつも投げやりな、やさぐれた女だけは好きになれない」

「やさぐれた仕事」は投げやりな仕事に使う

「やさぐれる」をビジネスシーンで使う場合、他者から投げやりと思われるような仕事を、「やさぐれた仕事」と言うのも使い方のひとつです。悪い意味で「適当にこなしている仕事」や、誰が見ても「雑な仕事」のことを、人によっては「やさぐれた仕事」と表現することがあります。

また、「やさぐれた仕事」には、イメージの良くない仕事という意味もあります。これは「やさぐれる」を「素行が悪い」というニュアンスでも使うことがあるためです。

  • 「約束も守れず、仕上がりは悪い、そんなやさぐれた仕事をしていても、誰のためにもならないよ」
  • 「自分がしてきた仕事を振り返ってみれば、やさぐれた仕事ばかりだった」

「やさぐれない」は投げやりにならないこと

否定表現の「投げやりにならない」ことを、「やさぐれない」と言うこともできます。投げやりになりそうな状況でも、そうならないことや、不服があってもそれを言動に出さないようにすることが「やさぐれない」です。

  • 「私はどんな状況でも、やさぐれないと決めています」
  • 「彼女のすごいところは、あんなことがあってもやさぐれないことだ」

「やさぐれる」の類語

すべてに投げやりとなる「自暴自棄」

「やさぐれる」にイメージが近い言葉が「自暴自棄(じぼうじき)」です。「自暴自棄」とは、やけになることを意味します。自分自身を乱暴に扱い、大切にしないことで、自分自身を傷めつける行為のことです。「やさぐれる」が持つ、投げやりというニュアンスも含まれているため、言いかえとしても使うことができます。

不服を表す「腐る」

「やさぐれる」という状況は、その人の中に、何かに対する不満や不服があることが想像できます。この「何かに対する不満や不服」を持っている、その気持ち自体のことを「腐る(くさる)」と表現することもあります。これも「やさぐれる」の類語のひとつです。

「腐る」とは、食べ物などが腐敗することを意味する言葉ですが、その腐敗を人の心に見立てています。

「やさぐれる」の英語表現

「やさぐれる」は英語で「peevish」

「やさぐれる」という言葉は、日本語の表現であるため、英語で伝える場合には別の意味の言葉を使うことになります。それが「peevish」です。

「peevish」には、不平を口にする・不機嫌な、などの意味があります。通常は「be peevish」として使われ、子どもがすねたり、駄々をこねたりすることにも使われます。

まとめ

「やさぐれる」という言葉は、意味よりもイメージが先行しやすい言葉であるため、なかなか意味自体を知る機会が少ないかもしれません。

今回「やさぐれる」の本来の意味や語源を知ることで、これまで以上に「やさぐれる」という言葉を的確に使えるようになるでしょう。ぜひ、「やさぐれる」の言葉のイメージと一緒に覚えておいてください。