「雌伏」の意味と由来とは?使い方の例文や類語・対義語も紹介

突然ですが「雌伏」という言葉を見てどう思いますか?この言葉を見て「差別用語」と真っ先に感じる人は、おそらく人権や性別に対し敏感な環境にいることと思います。

今回は「雌伏」の意味と由来をはじめ、使い方と例文、類語と対義語、また英語表現を含めてまとめています。今まで無意識のうちに使っていた人は、ぜひ、言葉の由来にも着目してみて下さい。

「雌伏」の意味と由来とは?

「雌伏」の意味は”人に服従する・活躍できる機会をじっと待つ”

「雌伏」の意味は、“人に服従すること・力を養いながら活躍できるチャンスをじっと待つこと”です。読み方は「しふく」です。

「雌伏」は、現状は実力が伴わず服従するしかないが、やがて訪れる好機を胸に力をしっかりつけて、活躍の機会を忍耐強く待つ、というニュアンスがあります。

もともと「雌鳥がおとなしく伏していること」を指し、転じて「世の中を退いて、ひっそり隠れること」という意味を持つ言葉でもあります。あわせて覚えておきましょう。

「雌伏」の由来は”後漢書の張温伝”

「雌伏」の由来は「後漢書(ごかんしょ)」にある「張温伝(ちょうおんでん)」という章の中でみつけることができます。由来の部分を掻い摘むと、以下のようになります。

後漢時代に活躍した群守の補佐役「張温」は、当時、行政区画を担当する郡を率いる立場にいました。しかし、昇進欲があり「男性として常に大きな志を持つべきである」という信念のある張温は、「低い地位にいつまでも甘んじていてはいけない」と、郡主の補佐役という地位を退いてしまうのです。これが「雌伏」の由来であり語源となります。

「雌伏」は果たして差別用語なのか?

昨今、平等な社会環境を構築していく上で、人権や性別における「差別用語」に対して、過去にも増して敏感になっている傾向があります。

周知のとおり「雌伏」は「雌が伏せる」と書きますが、どうしても「性差別」を意識した表現だと考える人が多いように見受けられます。むしろ、世間一般では「雌伏」は「差別用語」の他ならないという認識の方が強いと感じ取れるほどです。

「雌伏」には「人に服従すること」という意味のほかに、「服従しながら活躍できるチャンスをじっと待つ」という意味もあります。後者の意味で「雌伏」を捉えれば、「今は絶好の時ではないが、やがて訪れる好機に向けて力をつけて待つ」という「忍耐強さ」を含めるアニュアンスも強まってくるかもしれません。

しかしながら「雌伏」を含め「女々しい」「黒星」「白黒はっきりさせる」などは、差別的要素が強い言葉です。言葉を使う時は、やはり状況を確認するべきでしょう。

「雌伏」の使い方で気を付ける点と例文とは?

「雌伏」の使い方で気を付ける点と例文を紹介します。

「雌伏」が持つ差別的なニュアンスを忘れずに

普段の会話で何気なく放つ言葉でありながら、漢字表記にしてみると、あまりのインパクトに驚くこともあるでしょう。しかし、前述でも触れたように、「雌伏」を使う時は周囲の状況や言葉を受ける相手に対し、細心の注意をする必要があります。

言葉というものは放たれた瞬間に意味をもつコミュニケーション手段の一つです。しかし、受け手によって解釈が異なることがあるため、不本意に相手を傷つけてしまったり、不快な思いをさせてしまうことがあります。「雌伏」を使う時は、同義語や似たようなニュアンスの類語表現を使うようにするほうが良いでしょう。

「雌伏」を使った例文

「雌伏」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 辛いだろうが、今が雌伏の時である。いつかは大舞台を踏むことができるに違いない。
  • 社会人になってから雌伏すること10年。やっと課長の名を手に入れた。
  • 会社を立ち上げてから雌伏の時が続いたが、今では従業員を50人抱える企業に成長した。

「雌伏」の類語と対義語とは?

それでは「雌伏」の類語と対義語を紹介しましょう。類語を把握しておけば、さまざまな状況や文脈で適切な語句と言い換えをすることもできます。

「雌伏」の類語は”頃合いを見る・下積み生活を送る”

「雌伏」で、物事を行うタイミングを見計らうという意味の類語は「頃合いを見る」「機会を探る」「時期を待つ」などがあります。

また、「やがて活躍する日のために力を養っておく」という意味では「下積み生活を送る」「雑巾がけに励む」などがあり、「今はじっとし耐えて待つ」というニュアンスの類語なら「手ぐすね引いて待つ」「牙を研いで待つ」なども言い換えとして使えるでしょう。

「雌伏」の対義語は”雄飛”

「雌伏」の対義語は「雄飛(ゆうひ)」です。「雄飛」は大いに活躍することを意味する言葉ですが、こちらも「雌伏」同様、差別的な表現として使用には注意したい言葉の一つです。「雌が伏し、雄が飛ぶ」というように、双方において対比関係にある表現となります。

「雌伏」の英語フレーズとは?

「雌伏」を英語で使う時は少ないかもしれません。しかし、ここぞという場面で正しく使えば、自分の言いたいことをブレがなく相手に伝えることができます。

「雌伏」は英語で”swallow my pride”や”bend my neck”など

「雌伏」は英語で“swallow my pride(プライドを抑えて我慢する)”“bend my neck(首をもたげる=屈服する)”を使うのがベストです。英語表現では比喩的な表現や体の動きを使ったフレーズを使うことが多いのが特徴ですが、職場やビジネスシーンでも「今は我慢のしどき…」という時に、これらのフレーズを使ってみると会話のピントが合ってくると思います。

「雌伏」を使った英語例文

「雌伏」を使った英語例文をご紹介しましょう。

  • This is the moment to swallow my pride.
    今が雌伏の時だ。
  • I have finally been promoted after 5 years of bending my neck.
    5年の雌伏を経て、やっと支店長に昇進した。

まとめ

「雌伏」には「人に服従する」また「力を養って活躍できる機会をおとなしく待つ」という意味があります。「雌伏して時を待つ」というように、今が実力がないが、活躍できるチャンスが来るまでじっと耐える、というニュアンスで使われます。

また「雌伏」は言葉の成り立ちから「差別的な表現」として捉える場合も少なくありません。昨今、差別に対する表現に敏感である傾向が強まっています。友達同士のたわいない会話の時は別ですが、「雌伏」を使う際、とくに周囲の環境を見極め、できれば別の言葉に置き換えて表現するように心がけましょう。