「有終の美」の意味や使い方とは?類語や同義語・英語表現も解説

「有終の美」とは、何らかの終わりに素晴らしい結果や成果を残したときに用いられる言葉です。「〇〇選手の有終の美」など、スポーツ関連のニュースで耳にすることが多いですが、ビジネスや日常的なシーンでも使う機会はあります。今回はそんな「有終の美」の意味や使い方・例文、また類語や英語表現などを解説していきます。

「有終の美」とは?

「有終の美」の意味は”最後に素晴らしい成果を残す”

「有終の美」の意味は、“最後に素晴らしい成果を残す”ことです。「立派な結果」や「最後までやり遂げる」という意味もあります。「有終」には「最後まで物事をまっとうする」という意味があり、そのことが「美(しい)」、つまり『美しい終わり』ということを説明しています。

由来は中国最古の詩集「詩経」

「有終の美」の由来は、中国最古の詩集「詩経(しきょう)」にある以下の詩からだと言われています。

「初め有らざるなし、よく終わりあるはすくなし」

「初めはやり遂げようと張り切っていても、実際に立派にやり遂げる人は少ない(やり遂げることは難しい)」というこの詩の意味が「有終」の語源となり、そこに「最後までやり遂げることは立派なことだ」という意味の「美」が組み合わさり『有終の美』という言葉が生まれたとされています。

「優秀の美」は間違い

「有終の美」は「優秀の美」と表記されがちですが、これは2つの言葉の意味を考えると間違いだということがわかります。辞書上にもない言葉なので使わないよう気をつけましょう。

<2つ言葉の意味>

【有終】・・・最後まで物事をまっとうする

【優秀】・・・他のものよりも優れていること

「有終の美」の使い方と例文とは?

最後に良い結果を残した時に使う

「有終の美」は「最後に素晴らしい成果を残す」という意味の通り、“何かの最後に良い結果・成果を残したいと思っている時”や“残せた時”に使います。著名人や優秀な成績を収めた選手などのニュース、または引退・退職時のスピーチ、そしてビジネス・日常的なシーンまで幅広く用いられます。具体的なシーンは以下の通りです。

  • 優秀な成績を保持しているスポーツ選手の引退試合の時
  • 尊敬に値する上司や人生の先輩の退職・卒業時
  • 大きなプロジェクトに良い結果が残せた時 など

「有終の美を飾る」と使うことが多い

「有終の美」は言葉単体で使われるよりも、「有終の美を飾る(ゆうしゅうのびをかざる)」というフレーズで使われることが多いです。「飾る」には「立派にやり遂げることで価値あるものにする」という意味があり、「最後に素晴らしい成果を残す」という意味の「有終の美」と合わさることで、「最後までやり遂げ素晴らしい成果をあげること」を表す慣用句になります。

「終わり良ければすべて良し」は同義語ではない

「終わり良ければすべて良し」ということわざは、「有終の美を飾る」の同義語と思われることがあります。しかしこの2つには以下のような違いがあるため、言い換え表現として使うことはできません。

<2つの言葉の違い>

【有終の美を飾る】・・・意味「最後までやり遂げ素晴らしい成果をあげること」
→「有終の美を飾る」には、“もともと成果をあげている人”が引退や退職、卒業など、最後となる時に素晴らしい成績を残すといったニュアンスがあります。

【終わり良ければすべて良し】・・・意味「最も重要なのは過程ではなく物事の結果であること」
→「終わり良ければすべて良し」には、“結果さえ良ければ途中の失敗は問題がない”というニュアンスがあります。そのため対象となる人物が、「有終の美を飾る」のように“もともと成果をあげている人”とは限りません。

「有終の美」を使った例文

【基本的な使い方の例文】

  • 「私は父の有終の美を見届けるために東京から帰省した」
  • 「僕は、有終の美でこの人生を終えたいと思っている」
  • 「有終の美とはこのようなことなんだろうと見せつけられた」

 

【「有終の美を飾る」の例文】

  • 「有終の美を飾って退職するつもりだ」
  • 「このように有終の美を飾ることができたのは仲間のおかげです」
  • 「僕は真剣な眼差しの恩師を見つめながら、有終の美を飾れますようにと強く願った」

「有終の美」の類語や対義語とは?

「有終の美」の類語は”達成”や”栄光”

「有終の美」の類語には、身近な言葉である「達成」や「栄光」を紹介します。

  • 達成(たっせい)

→意味は「目的を果たすこと」「成し遂げること」です。「達成」には、「有終の美」のような“良い結果を残す”という意味はありませんが、物事を最後までやり遂げるという点では似た意味を持つ言葉と言えます。

  • 栄光(えいこう)

→意味は「大きな名誉」「輝かしい名誉」です。「栄光」は、「有終の美」の“立派な結果”という意味と似た意味を持っています。“最後までやり遂げる“のような意味はありません。

同義語は「掉尾を飾る」

同義語なら「掉尾を飾る(ちょうびをかざる)」という言葉があげられます。意味は「有終の美」とほぼ同じ「立派に物事を締めくくる」なため、言い換え表現として使えます。「有終の美」よりも難しい表現なため、文学作品などに使う方が適しています。

対義語は”仏作って魂入れず”や”竜頭蛇尾”

「有終の美」の対義語には、ことわざの「仏作って魂入れず」と四字熟語の「竜頭蛇尾」を紹介します。

  • 仏作って魂入れず(ほとけつくってたましいいれず)

→意味は「物事は仕上げが最も重要である」「最後の仕上げが欠けたときは、それまでの努力も無駄になる」です。「有終の美」とは違い、最後まで物事をやりきれていない様子、良い結果を出せていない様子を表しています。

  • 竜頭蛇尾(りゅうとうだび)

→意味は「初めの勢いはいいが終わりは結果が出ない」「最後はさえない」です。「有終の美」の「最後に素晴らしい成果を残す」とは真逆の意味であるため対義語と言えます。

「有終の美」の英語表現とは?

「有終の美」は英語で”crowning glory”や”end successfully”

「有終の美」を英語にする場合は2つの表現方法があります。

  • 「crowning glory」

“最後を飾る”を意味する形容詞「crowning」と、“栄光”や“名誉”を意味する名詞「glory」を組み合わせた表現です。「crowning glory(直訳:最後を飾る名誉)」は名詞として使います。

<例文>
“My last project in this company was a crowning glory.”
→「私はこの会社での最後のプロジェクトを有終の美で終えた」

  • 「end successfully」

“(〜を)終える”を意味する動詞「end」と、“成功する”を意味する副詞「successfully」を組みわせた表現です。「end successfully(直訳:成功で終える)」は動詞として使います。

<例文>
“My father ended his last work successfully.“
→「父は最後の仕事を有終の美で終えた」

「有終の美を飾る」なら”Done to perfection”

「有終の美を飾る」を英語にする場合は、“完全にすること”や“完璧”を意味する名詞「perfection」を使って「Done to perfection」と表現します。“最後までやり遂げる”というニュアンスが強い言葉です。

まとめ

「有終の美」は、名選手や有名アーティストが関連するようなニュースや式典、退職や大きなプロジェクトなど、“何かの最後に良い結果・成果を残したいと思っている時”や“残せた時”に使われる言葉です。慣用句「有終の美を飾る」として用いられることが多く、メディア関係からビジネス・日常と幅広いシーンに登場します。基本的に良い意味を持つ言葉なので、相手を不快にさせるようなことはほとんどないでしょう。