「ブロック経済」とは?自国を守るための政策と背景を簡単に解説

1929年に始まった世界大恐慌を乗り切るために、イギリスやフランスが敷いた経済体制が「ブロック経済」です。自国を守るためのの強硬的な施策と非難されるも、苦しい時期を克服できたのはのは言うまでもありません。

今回は「ブロック経済」の始まりと背景、またブロック経済の仕組みなどを簡単にわかりやすくまとめています。日本がこのような体制をとることができなかった理由も解説します。

「ブロック経済」とは?

「ブロック経済」の意味は”圏外諸国に閉鎖的な経済体制”

「ブロック経済」とは、“圏外諸国に閉鎖的な経済体制”のことです。圏外とは「域外諸国」、つまり「自国や植民地、自治領以外の国々」という意味となります。

「ブロック=圏、連合」における経済ですから、自国を含めこれらの従属国にはやさしい経済体制となります。このことを前提に、限られた国々の間だけで経済を回し、域外諸国からの物資に高い関税をかけるのが「ブロック経済」の特徴です。

「ブロック経済」は良く言えば「保護経済」、悪く言えば「排他的経済」とも言えます。

「ブロック経済」は英語で”block economy”

「ブロック経済」は英語で“bloc economy”と表記します。「block」とは国家間における「圏、連合」を表す言葉で、後ろに金銭のやりくりや流れを表す「経済」を付け「ブロック経済」となります。

日本語で「ブロック」と表記するため、英語で「塞ぐ」「封鎖する」という意味の「block」を連想してしまうことも多いようですが、実際は「bloc(圏、連合)」です。意味を解釈する上で重要なキーとなりますので、正しく理解しておきましょう。

「ブロック経済」の目的は”自国の経済的利益を守る”

「ブロック経済」の目的は、“自国の経済的利益を守る”ことです。自国や植民地、半植民地の間で一つの大きな経済圏を形成し、その圏内だけで生活物資を賄うことで、域外諸国からの安い物資が容易に入らないようにするのが根本的な狙いです。

「ブロック経済」では貿易全般において対外的に壁を設け、域外の国々と自由な経済的交流を遮断することなります。一方で、自国や従属国で占めるブロック圏内では有利な待遇を与える「特恵関税」を採用し、双方で経済的な関係を強く結ぶよう行動するのが「ブロック経済」における体制の基盤です。

たとえば、日本から1000円の商品を、関税50%のブロック経済圏に輸入したとしましょう。そうすると、その国に入った時点で商品はすでに1500円になっています。プラス、現地の店先に並ぶときには、店舗利益を考えても既に2000円程度と高額になっているでしょう。しかし、ブロック圏で貿易取引をする時は安い関税で通過できるため、おのずと消費者が選ぶ商品も決まってくるという仕組みです。

「ブロック経済」の始まりと背景・諸事情とは?

「ブロック経済」の始まりと背景についてわかりやすく簡単に解説しましょう。

「ブロック経済」の始まりはイギリスの世界大恐慌

「ブロック経済」が始まったのは、1929年に始まった世界大恐慌です。当時、苦しい経済状況に見舞われたイギリスは、経済回復に向けて大きな改革を必要としていました。

この時、国を率いていたのが労働党のマクドナル氏です。マクドナルド氏は労働党の党首であるため、労働者の見方に立った、労働者のための政策を実行しなければならない立場です。しかし、大恐慌による企業倒産や賃金カットなどで多くの失業者を出す一方、国からの失業保険配給を止め、財政を切り詰めようと試みます。

当初は国民から猛反発を食らいながらも、結果的に国を救うために実施した政策であったため、ライバル関係にあった他の党から圧倒的な支持を受けることになります。ここに誕生したのが「挙国一致内閣」であり、「ブロック経済」を支える確固とした基盤が出来上がることになります。

「ブロック経済」は植民地や自治領がないと機能しない

「ブロック経済」が経済立ち直りの政策として機能するのは何故でしょうか?それは「ブロック経済は植民地や自治領などの、何らかの従属国があるから」です。当たり前のような話ですが、日本のように植民地主義ではない国は「ブロック経済」を経済政策として採用することができません。

「ブロック経済」は戦争を引き起こす要因となる?

「ブロック経済」は最終的に戦争を引き起こす要因となる、とも考えることができるでしょう。世界大恐慌の後に何が起きたか?それは「第二次世界大戦」です。

「ブロック経済」を世界全体で捉えた時、ブロックを持たない諸外国は一体どのような行動に出るのか考えてみましょう。

ブロックを持つイギリス、フランス、アメリカなどは「ブロック経済」を活用することができます。しかし、そうではない国、日本・ドイツ、イタリアなどは同盟を結んで戦うしかありません。もっとも、経済が沈滞することは国とって最大の危機です。その最大の危機を乗り切るには「戦争をするしかない」、そして、最終的な結論となったのが「第二次世界大戦」への参加となります。

各国通貨による「ブロック経済」の例とは?

イギリス、フランス、アメリカの各通貨による「ブロック経済」について簡単に紹介します。

イギリスの「ポンド・ブロック」又は「スターリン・ブロック」

「ポンドブロック」はイギリスの通貨「ポンド」にちなんで名づけられた圏の呼び名です。自国通貨価値をブロック内で高めることで、経済的に強い関係を築くことができます。また、金融的にも緊密につながることができる保護貿易という意味も持ちます。別名は「スターリング・ブロック」です。

フランスの「フラン・ブロック」

フランスを中心にオランダ、スイス、ベルギーで構成されていたのが「フラン・ブロック」です。「フラン・ブロック」はフランス通貨「フラン」の通貨価値において危機が迫り、1936年に解体を余儀なくされてしまいました。

アメリカの「ドル・ブロック」

アメリカの「ドル・ブロック」はラテンアメリカを中心としたブロック内の経済体制を指します。ラテンアメリカとは、カナダを除く、北アメリカや南アメリカのことで、カリブ海地域やメキシコ以南に位置する国々を指します。

まとめ

「ブロック経済」は英語で「bloc economy」と表記し、意味は「圏外諸国に排他的な経済体制」または「圏内における保護貿易」などとなります。世界で初めて「ブロック経済」を作り上げたのはイギリスのマクドナルド内閣です。

「ブロック経済」は圏内貿易においては特恵関税を設け、それ以外の国には高い関税をかけるという仕組みを持ちます。もちろん「ブロック経済」を機能させるには、自国のほか植民地や半植民地、自治領など従属国があることが前提条件となります。

余談となりますが、米国のトランプ大統領は、イギリスの世界大恐慌時で見た「ブロック経済」を自国で復帰させるかもしれない…と囁かれています。愛国心の強いトランプ氏だけに、今後の動きに目が離せないところです。