「横領」の意味とは?「横領罪」の種類や「窃盗罪」との違いも解説

横領事件がニュースになることが度々ありますが、この横領で問われる横領罪にはいくつかの種類があるのをご存知でしょうか。今回は「横領」の意味の他に「横領罪」の意味やその種類について、さらに「窃盗罪」や「背任罪」の違いと「横領」の類語である「着服」などの言葉も解説します。英語表現も併せて紹介しますので参照ください。

「横領」とは?

「横領」の意味は”不法に他人のものと取ること”

「横領」の意味は、“不法に他人または公共のものを取ること”です。不法に人のものを取ることにより、法律用語の「横領罪」のように犯罪と結びつく言葉です。

横領が行われるケースとは個人間の場合もあれば、会社のものを盗んだ場合でも横領は成立します。

「横領」を使った例文

「横領」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 「彼らは共謀してAさんから金を横領した」
  • 「会社の資金を横領した犯人はまだ見つかっていない」
  • 「○○が業務上横領の罪で捕まった」

「横領罪」とは?

他人から物を横取りしたときに罪に問われると「横領罪」が疑われます。「横領罪」とはどんな罪なのか見ていきましょう。

「横領罪」とは”他人のものを不法に取った罪”

「横領罪」とは「他人の物または公共の物を不法に取った罪」のことで犯罪です。他人の物を自分のものにしておくだけでなく、他人から取ったものを勝手な売却や処分をした場合にも「横領罪」が当てはまります。

「横領罪」の三つの種類

「横領罪」には3つの種類があります。

「単純横領罪」

刑法252条にあたる横領の罪で、「委託物横領」とも呼ばれます。「単純横領罪」に問われるケースはいろいろあり、例えば他人から借りた物を勝手に処分してしまったケースや、あるものを買うように言われて預かったお金で別の物を買ったケースでも単純横領罪に問われます。単純横領罪で重要視されることは、物の貸し借りなどがあった場合のお互いの信頼関係を損なうことになり、さらにその行為が不法だとわかっていて行われたとみなされると、その罪は重くなります。

「業務上横領」

刑法253条にあたる横領で、業務上で管理されていた財産等を横領した場合に問われる罪のことです。個人ではなく会社などが事業の一環として管理しているものを横領したケースを指し、横領罪の中でも特に重い罪が課せられます。なぜなら罪を問われる人が業務委託を受けていたものを横領することから、信頼関係が大きく損なわれるからです。

「遺失物横領」

刑法254条にあたる横領の罪で、誰かがなくしたものを勝手に自分のものにしてしまった時に問われる犯罪です。遺失物とは道端で見つけた落とし物など誰が所有していたのかわからないものや漂着物も対象になります。

横領罪の懲役や時効は横領罪の種類によって違う

横領罪が確定したときの量刑は、一番短いもので1年以下ですが、最長では10年になります。

遺失物横領の場合で、懲役は1年以下または10万円以下の罰金が科せられます。委託物横領なら5年以下の懲役で、業務上横領は10年以下の懲役と横領罪の中で最も重い量刑になります。

また横領罪に適用される時効も横領罪の種類によって違い、遺失物横領は3年、単純横領罪は5年、業務上横領なら7年になります。

「横領罪」と「窃盗罪」「背任罪」との違いとは?

「横領罪」と「窃盗罪」の違いは対象の違い

横領罪に似ている犯罪のひとつに「窃盗罪」がありますが、「窃盗罪」とは接点のない他人の物を盗み自分のものにする罪のことです。知人から預かったものを取ってしまったといった盗んだものの所有者を知っている場合に「横領罪」になります。

「横領罪」と「背任罪」の違いは利益や損害が生じるかどうか

「背任罪」とは業務上で他人のために行うはずの事務を、自分の利益または第三者の利益になるために行うか、または業務を請け負った相手に損害を与えるような行為に対して問われる罪です。相手との信頼関係を損なったことに対する罪で、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

「横領罪」の類語とは?

「横領罪」の類語として「着服」「押領」「横奪」を取り上げましたので、それぞれの意味を見ていきましょう。

類語①「着服」とは”他人の物を勝手に自分のものにすること”

「着服」(ちゃくふく)とは、衣服を着るという意味もありますが、「横領」の類語とした場合、その意味は「他人のものを盗んで自分のものにしてしまうこと」です。

「横領」も「着服」のように他人の物を盗むという意味がありますが、「横領」は他人から物を盗むという行為に重点が置かれています。それに対して「着服」は盗むという行為に加えて自分のものにするという意味までが含まれているという点で、「横領」と「着服」は違います。

また「横領」は法律用語として使われているため「横領罪」のように法律を扱う状況でも使われますが、「着服」は法律用語として使われない一般用語です。

類語②「押領」とは”力づくで奪い取ること”

「押領」とは「横領」と同じく「おうりょう」と読み、「他人の所有するものを力づくで奪い取ること」という意味です。「押領」の本来の意味は兵卒を引率または監督することという意味でしたが、平安時代中期ごろから上記の意味が派生しました。

「横領」も他人の所有物を不法に摂ることですが、「押領」のように力づくで取るようなことはしません。

類語③「横奪」とは”無理やり奪い取ること”

横奪(おうだつ)とは、「無理やり奪い取ること」という意味の言葉です。「強盗」と言い換えることができます。

「横領」のように他人の所持するものを奪い取ることですが、「横奪」は合法でも道理に外れた方法で奪い取った場合に使われる言葉です。

「横領」の英語表現とは?

「横領」は英語で”embezzlement”か”appropriation”

「横領」は英語で「embezzlement」で、横領するという意味の「embezzle」の名詞形です。財産などを使いこんだときにも使える英単語です。また「appropriation」という単語にも「横領」の意味があります。「embezzlement」よりも「appropriation」の方が固い言葉なので、公式文書などでも使われます。

「横領」を使った英語例文

「横領」を使った英語例文をいくつかご紹介しましょう。

  • “My coworker escaped with embezzled money.”
    「私の同僚は横領した金を持って逃げた」
  • “He was arrested for the crime of embezzlement.”
    「彼は横領罪で捕まった」
  •  “She misappropriated the properties of her friend.”
    「彼女は友人から金品を横領した」
  • “The appropriation of properties belong to another is criminal.”
    「他人のものを横領することは犯罪だ」

まとめ

「横領」とは「他人や公共のものも不法に取ること」を意味する言葉です。「着服」や「押領」など類語も多いのですが、「横領」は横領罪のように使われる法律用語でもあり、公的な状況でも使われる言葉として区別しておきましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。