「世帯分離」とは?夫婦間のケースやメリット・デメリットも解説

介護費用を抑えるために同居している親と世帯分離をする方が増えているそうですが、世帯分離の本来の目的は別のことにあるようです。

今回は「世帯分離」の意味と目的、さらにメリットやデメリットに世帯合併についてもわかりやすく解説します。世帯分離を検討されている方は参照してみてください。

「世帯分離」とは?その意味と目的

「世帯分離」とは”世帯が複数に分かれること”

「世帯分離」とは、“住民票に一つの世帯として登録されている世帯を複数に分けること”です。世帯分離ができるのは、同居をして生計を共にしていた集まりである世帯が、保護を受けるため、同居をしながら生計を別々にして世帯をわけることのできる場合です。

「世帯分離」の目的は住民税のかからない世帯を作ること

世帯分離の目的は、住民税のかからない世帯を作ることです。なぜそのような制度があるのかというと、課税者が別の非課税の世帯を作り住民税を非課税にすることで、非課税世帯は公的な負担を軽くすることができるからです。

したがって、世帯の生活の負担を軽減することが世帯分離の目的なので、十分な年金があり収入があるような世帯が介護費用を抑えるために活用する制度ではありません。

「世帯分離」は夫婦でできる

同居している夫婦でもそれぞれに収入があれば世帯分離はできます。ただし世帯分離のメリットである保険料などが安くなるからという理由から世帯分離を希望すると、世帯分離の本来の目的から外れるため申請が受理されないこともあります。

手続きは市区町村の住民課か戸籍課で行う

お住いの市区町村の住民課に、世帯分離届と異動届を世帯主か世帯員が提出します。他にも本人確認のためのマイナンバーカードや運転免許証などの書類に、印鑑、国民健康保険被保険者証も持参します。

また代理人申請の場合には委任状も用意します。

「世帯分離」をする理由・メリットとは?

世帯分離のメリットは「介護費用の軽減」

世帯分離することのメリットは、世帯を分けることで所得が低くなるため、介護費用の自己負担額が下がることです。

所得が低くなり75歳以上の人が負担する後期高齢者医療保険料の均等割で軽減措置を受けられます。また65歳以上の被保険者が負担する介護保険料も減額されます。高額介護サービスの自己負担額では、所得が低ければ介護費用の1割分で済み、己負担額を超えた介護費用分は払い戻されます。

つまり世帯分離をして所得を低くなれば、総合的に介護費用の負担額を抑えることができるのです。

所得が低ければ国民健康保険料が低くなる

国民健康保険の保険料は一世帯の所得によって決められています。その所得が世帯分離をすることで下がれば、保険料が低くなります。

「世帯分離」の注意点とデメリットとは?

住民票の取得の手間

お互いの住民票が必要な場合には、それぞれが申請をするか委任状が必要になります。住民票は世帯主または世帯員が申請できますが、違う世帯分の住民票を受け取る場合には委任状が必要です。

国民健康保険料の負担が増えるかもしれない

世帯分離してもそれぞれの世帯に十分な収入がある場合は、両世帯の合算の国民健康保険料は世帯分離前よりも高くなる場合があります。なぜなら「平等割り」と呼ばれる各市区町村で定めた負担額が世帯ごとに加算されるからです。

また複数の介護サービスを使っている場合、それらの介護費用の合算で払い戻し金額が決まるのですが、別世帯になったために各介護費用を合算できなくなり払い戻し金額が減額する可能性もあります。

社会保険に扶養家族としたほうが保険料は安い可能性

親の介護費用の軽減には、世帯分離ではなく自分が加入している社会保険に扶養家族として親を加入させた方が介護費用が安くなる場合があります。世帯分離か扶養家族として社会保険に加入させるのがどちらがいいのかは総合的に判断しましょう。

扶養手当を得らなくなる

扶養家族の負担を減らすための扶養手当が、世帯分離をすることことで得られなくなります。扶養手当とは家族手当とも呼ばれて、国や会社が扶養家族のいる人を助ける目的で支給される手当てのことです。

世帯分離をすれば扶養されていた人は扶養から外れることになりますから、扶養手当も支給されなくなります。

世帯分離が難しいケースとは?

生活保護が目的では世帯分離はできない

世帯分離の目的は一世帯の生活の負担を軽減するためのものですから、意図的に生活保護を受けたいという理由で世帯分離をすることはできません。

世帯分離の手続きでもどのような目的で世帯分離をしたいのかを審査されますので、生活保護が目的だとか、介護費用を抑えたいからという個人の利益に結び付くような理由では世帯分離は認められないというのが原則です。

世帯分離をしたあとでも戻すことができるのか?

世帯合併の届け出をすればできる

世帯分離をした世帯同士がまた一つの世帯に戻ることはできます。世帯合併という制度で、世帯主または世帯員が市区町村の住民課または戸籍課に世帯合併の届け出を申請します。

申請に必要なものは、本人を確認するマイナンバーカードなどの書類に、異動届と印鑑、そして世帯主と世帯員全員分の国民健康保険証で、代理人申請もできます。

まとめ

「世帯分離」とは同居して生計を共にしている世帯が複数の世帯に分かれることです。保険料や介護費用が安くなるなどの理由で世帯分離をされる方が増えていますが、世帯分離の本来の目的は個々の利益のためでなく、保護を受けなくては生活が苦しい方を守るための手段です。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。