「水物」は、水々しい食べ物や飲み物を表現する言葉です。これ以外にも「試験は水物」のように、“対象となる物は予測することが難しい”ということを例える意味合いもあります。
今回はこの「水物」の意味や語源、使い方の例文について解説していきます。類語や対義語、英語表現に、会席料理での「水物」の意味もあわせて紹介します。
「水物」とは?
「水物」の意味は”水分の多い飲食物・あてにならないもの”
「水物」の意味は、“水やお酒・ジュース、水羊羹や果物のような水分の多い飲食物”です。またその他に、相手や運などによって左右されやすいもの・変わりやすいものといった「あてにならないもの」という意味合いも持っています。
「水物」の語源は”水の流れ”
「水分の多い飲食物」という意味は文字そのままですが、もう一つの意味「あてにならないもの」に関しては“水の流れ”が語源と言われています。しかし、詳細ははっきりとわかっていません。
会席料理では「果物・かき氷・飲料」を表す
会席料理においての「水物」は「果物・かき氷・飲料」を表し、「水菓子(みずがし)」と言われることもあります。以下のように、ご飯物が終わった後に出されます。
基本的な会席料理の献立の順番:
- 1品目:先付(さきつけ)/ 日本料理屋の“お通し”・“突き出し”に当たるもの
- 2品目:お凌ぎ(おしのぎ)/ 空腹で酒の酔いが回らないようにするための料理
- 3品目:お椀(おわん)/ 料理の間の箸洗い、口すすぎのための吸い物
- 4品目:向付(むこうづけ)/ 旬の魚を使ったお造り
- 5品目:八寸(はっすん)/ 山や海の素材を使った盛り合わせ
- 6品目:焼き物(やきもの)/ 旬の魚を使った焼き魚(肉料理を出すお店もある)
- 7品目:炊き合わせ(たきあわせ)/ 旬の野菜などを使った煮物
- 8品目:ご飯(ごはん)/ 旬の食材を使ったシメのご飯物、汁物、漬物
- 9品目:水物(みずもの)/ 口をさっぱりさせる旬の果物やシャーベット、アイスクリームなど
「水物商売」と「水商売」は同義語ではない
「水物」は、「水物商売」や「水商売」という表現で使われることもあります。意味はどちらも、「先の見通しが立ちにくく、世間の嗜好や人気に大きく依存した収入が不安定な商売」です。
2つの言葉の意味は同じですが、対象になる商売に少し違いがあります。「水商売」の場合、その商売に当たるものはバーやスナック、キャバレーなど夜のお店に限定されることがほとんどです。
「水物」の使い方と例文とは?
「水物」は名詞として使う
「水物」は複数の意味がありますが、どちらの場合でも名詞として使うことに変わりありません。どの意味で使っているかは、前後の文章や会話から判断しましょう。
「水物」はビジネスシーンでよく使われる
「水物」はビジネスシーンでもよく使われる言葉です。
例えば、「商売は水物」や「広告は水物」、「売上は水物」といったように、“トレンドや人気・経済状況などによって左右されるもの”や、“自分たちの手によってコントロールできないもの”に対して用いられます。
「水物」を使った例文
「水物」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 「猛暑に水物は必需品」
- 「あそこの会席料理の水物が好きだ」
- 「商売は水物だから、1日くらい売上が落ち込んでも気にするな」
- 「試験は水物というから、どれだけ準備しても不安なままだ
- 「相場は水物と思わないと、このオークションで〇〇を落札できないよ」
「水物」の類語や対義語とは?
「水物」の類語は”飲料・デザート・不確実”
「水物」の類語には、「飲料」「デザート」「不確実」を紹介します。
- 「飲料(いんりょう)」
意味は「飲み物」「飲むためのもの」です。「飲料」は、「水物」の“水やお酒などの飲み物”と同じ意味を持っています。 - 「デザート」
意味は「食後の果物や茶菓」「西洋料理のコースの後に出される菓子やコーヒー、果物など」です。「デザート」の場合、水分が少ない焼き菓子なども含まれます。 - 「不確実(ふかくじつ)」
意味は「確実ではないこと」「はっきりとしていないこと」です。「水物」の“あてにならないもの”や“何らかの影響で変わりやすい”という意味と似ています。。
「水物」の対義語は”鉄板”
「鉄板(てっぱん)」の意味は「間違いのないこと」「確実であること」です。「水物」の“あてにならない”とは真逆の意味を表しています。
「水物」の英語表現とは?
「水物」の英語表現は”dessert”や”gamble”など
「水物」を英語にする場合、“飲食物”という意味なら名詞「dessert」、“不確実であてにならない”という意味なら名詞「gamble」で表現するといいでしょう。
意味:
- 「dessert」・・・食後に出される果物やパイ、ゼリー、アイスクリームなど
- 「gamble」・・・(一か八かの)冒険、(のるかそるかの)賭け
ポジティブな意味合いなら「chance」でもOK
「水物」の、“予想ができずあてにならないもの”という意味をポジティブに捉えれば「chance」でも表現できます。
- 「chance」・・・見込み、運、偶然の出来事、思いがけないこと
「水物」本来の意味とは少し違ってしまいますが、覚えておくと便利です。
まとめ
「水物」には大きく分けて、「水分が多い飲食物」や「相手や運の影響を受けるあてにならないもの」という意味があります。どちらの意味であるかは、前後の文章や会話によって判断します。
日常会話だけではなく、会席料理やビジネスとかしこまったシーンでも使われる言葉なので、恥をかかないよう意味や使い方を理解しておきましょう。