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「艱難辛苦」の意味や由来とは?使い方と類語・対義語も解説

「艱難辛苦を乗り越えて」のように使われる「艱難辛苦(かんなんしんく)」という四字熟語があります。いかにも辛そうな漢字が並んでいますが、艱難辛苦とはどのような意味なのでしょうか?

この記事では、艱難辛苦の意味や言葉の成り立ち、使い方を解説します。あわせて類語と対義語も紹介します。

「艱難辛苦」の意味と由来とは?

「艱難辛苦」の意味は”言葉で言い尽くせないほどの苦労”

「艱難辛苦」の意味は、“言葉で言い尽くせないほどのたいへんな苦労”のことです。特に、人生や仕事においてぶつかる困難や、大きな目的を大成するまでに経験する、さまざまな苦労を言い表すときに用いられます。

「艱難辛苦」は”艱難”と”辛苦”の二つの熟語が由来

「艱難辛苦」は、「艱難」と「辛苦」の二つの熟語が重ねられてできた四字熟語です。「艱難」と「辛苦」は、どちらも「艱難辛苦」と同じ意味を持ちます。同じ意味の言葉を2回重ねることで、言葉の意味を強調する四字熟語です。

なお、常用漢字ではないため、一般的にはあまり使われない「艱」は、「難しい=艱難」という意味と、「苦しむ、悩む=艱苦」という意味があります。

「艱」は訓読みで「かたい・けわしい・なやむ・くるしむ」と複数の読み方がありますが、通常は熟語で用いられます。

「艱難辛苦」の使い方と例文とは?

「艱難辛苦」は”非常に困難な状況”を端的に表現できる

「艱難辛苦」は、非常にたいへんで困難な状況にあることを、言葉ひとつで端的に表現するときに用いられます。「とても苦しく、辛く、困難な状況で…」などといった言葉を重ねた冗長な説明をしなくとも、困難な状況を一言で印象づけることができます。簡潔な説明が求められるビジネスの場面でも使われます。

例文:

  • このプロジェクトの前途には艱難辛苦が待ち受けているだろう。
  • 目標を達成するにはあらゆる艱難辛苦に耐える精神力が求められる。
  • 彼は思いもかけない艱難辛苦に直面した。

目的を大成したときに使われる「艱難辛苦を乗り越えて」

非常に困難な状況を乗り越えて目的を大成したときや、さらなる発展を遂げるために乗り越えるべき辛い試練に対して、「艱難辛苦を乗り越えて」という言い回しが使われます。「逆境を乗り越えて」と同じニュアンスが含まれます。

例文:

  • 彼は艱難辛苦を乗り越えて偉業を達成した。
  • 艱難辛苦を乗り越えて手にした栄光は重いものだった。
  • 彼女の成功は艱難辛苦を乗り越えたときにやってきた。

「艱難辛苦を乗り越えて立派に成長する」という意味で使う”艱難汝を玉にす”

「艱難汝を玉にす(かんなんなんじをたまにす)」ということわざがあります。これは西洋のことわざ「Adversity makes a man wise(逆境は人を賢明にする)」を意訳したものです。

「Adversity」とは、逆境、不運な出来事、不幸という意味です。「玉」には磨かれて美しいものという意味があります。

「逆境は人を賢明にする」という意味の「艱難汝を玉にす」は、「艱難辛苦を乗り越えて人は賢明になる(立派に成長する)」と同じ意味だといえます。

「艱難汝を玉にす」は、座右の銘や文学的表現として使われることが多いことわざです。会話で使うときは、「艱難汝を玉にすと言うように、今を頑張れば必ず結果が出る」などとと引用する形で用います。

「艱難辛苦」の類語とは?

類語①「塗炭の苦しみ」は”耐え難いひどい苦しみ”という意味

「塗炭の苦しみ(とたんのくるしみ)」とは、「耐え難いひどい苦しみ」という意味の比喩的な表現です。「塗炭」とは、「泥にまみれ火に焼かれる」ということを表し、つまりそれほどの強い苦しみだという意味です。

「塗炭の苦しみ」は、身体的な苦痛の表現であることから、特に、戦争や重税などによる人々の生活の苦しさなどを表すときに用いられます。

例文:「国の誤った政策のため、国民は塗炭の苦しみを味わった」

類語②「辛酸をなめる」は”さまざまな辛い経験”という意味

「辛酸を嘗める(しんさんをなめる)」とも書く「辛酸をなめる」とは、さまざまな辛く苦しい経験をするという意味です。辛い状況というより、苦労を「経験する」ことを表すニュアンスが強いといえます。「彼は少年時代にあらゆる辛酸をなめた」などの表現です。

類語③「難行苦行」は”たいへんな苦労”という意味

「難行苦行(なんぎょうくぎょう)」とは、非常につらい修行という意味から転じて、たいへんな苦労をするという意味を持ちます。「難行苦行の末に…」「難行苦行を重ねて…」などと、いろいろな苦難があったことを思い返すときに用いられることが多い言葉です。

たいへんな苦労という意味では「艱難辛苦」と同じですが、精神的な辛さに重きが置かれているのが「難行苦行」です。

「艱難辛苦」の対義語とは?

対義語「順風満帆」は”物事が順調に運ぶ”という意味

「順風満帆(じゅんぷうまんぱん)」とは、物事が順調に運ぶことを表す四字熟語です。追い風を受けて帆がいっぱいにふくらみ、順調に航行する帆船の様子をたとえた言葉です。

困難な壁にぶつかっている様子の「艱難辛苦」とは、まさに反対の状況を表す言葉だといえます。

まとめ

「艱難辛苦」とは、困難にあって辛いことを意味する「艱難」と「辛苦」の、同じ意味の二つの言葉を重ねて強調した、「言葉で言い尽くせないほどの苦労」という意味の四字熟語です。

非常に苦しい様子を表す言葉は、類語で紹介した「塗炭の苦しみ」や「難行苦行」の他にもたくさんあります。その一方で、対義語の、物事が非常に順調な様子を表す言葉はそれほど豊富ではないようです。喜びよりも苦しみの感情の方が、バリエーションが豊富だということになるでしょう。