「アブダクション」の意味とは?事例と演繹法・帰納法との違い

「アブダクション」とは演繹法や帰納法と並ぶ推論方法で、ある結論がどうして出たのかわからないときにそれが正しいのかを論じるための方法です。

今回は「アブダクション」の語源となる英語の「abduction」の意味にはじまり、哲学的な意味を事例とともに解説した後、演繹法や帰納法の意味とアブダクションとの違いを紹介します。

「アブダクション」の意味とは?

「アブダクション」の意味は「誘拐」

「アブダクション」の語源である英語の「abduction」は、「誘拐」や「拉致」という意味です。法学的には、強制売春や強制結婚を目的とした「婦女誘拐」という意味もあります。またオカルトの分野では、UFOによる人間の誘拐または人体実験という意味でも使われています。

英語圏で「abduction」は、次に紹介する推論法のひとつという意味よりも、「誘拐」という意味で使われることの方が多いでしょう。

哲学での「アブダクション」の意味と事例

哲学では「アブダクション」とは「仮説的推論」のこと

哲学の分野では「アブダクション」とは、理解できない物事を理解するために仮説を立てて推論する考え方のことです。仮設形成や仮設的推論とも呼ばれています。

ある不可解な事実を分析して、その不可解な事実を説明するために最もいいと思われる仮定を導き出す推論法を指します。

「アブダクション」はアメリカの哲学者パースによって提唱されて、後にデューイに継承されています。

「アブダクション」の語源はアリストテレスの著書

「アブダクション」の語源は、ギリシャ哲学で有名な哲学者アリストテレスの著書「分籍論前書」にあります。この著書で語られる「アパゴーゲー」(apagōgē)をアメリカの哲学者パースが「アブダクション」と英訳したことが始まりです。

パースはのちに「アブダクション」ではなく「リトロダクション」(retroduction)と訳すべきだったと述べています。なぜなら「アブダクション」にはあるものの中にあるものを引き離し、さらにはそこから引き出すといった意味があるのに対して、「レトロダクション」は「後方へ引き戻す」という意味なので、仮定的推論である「アブダクション」の概念をより分かりやすく説明する言葉だからです。

「泣いている子供」で考える「アブダクション」の事例

「子供が泣いている」という現象があり、子供が泣く理由として「誰かにいじめられると子供は泣く」ことが考えられたとします。そこから導き出される子供が泣いた理由を説明する仮定は、「その子供は誰かにいじめられたはずだ」となります。

子供が泣く理由にはいじめられること以外にも、欲しいおもちゃを買ってもらえないとか嫌いなものを食べたなどいろいろと考えられるのですが、「いじめられた」という理由も十分に考えられる理由のひとつです。

この理由となる法則を思いつき、最も納得がいくであろう推論を現象に当てはめて考えるという方法がアブダクションです。そのためアブダクションでは、現象の観察力に加えて、観察者の想像力やひらめきなども重視されます。

帰納法・演繹法・アブダクションの特徴と違い

推論法には「アブダクション」の他に、「帰納法」と「演繹法」という推論法もあるのですが、帰納や演繹といった使い慣れない言葉のため分かりにくいと思います。そこで「帰納法」と「演繹法」のそれぞれの推論法と「アブダクション」との違いを解説します。

「帰納法」とは「複数の事象から一般的な法則を導き出す推論法」

「帰納法」(きのうほう)とは、さまざまな事象から共通の出来事を見つけて、それを一般的な法則とする推論法です。

例えば、猫が2匹いるとして、「一匹の猫は茶色」で、「もう一匹の猫も茶色」だとすると、「猫の毛の色は茶色」というように一般化した結論を導きます。

しかし猫には茶色以外の毛の色の猫もいますから、帰納法とは必ず正しい結論を導き出すことのできる推論法ではありません。したがって、帰納法はある程度は正しい結論が導き出せる推論法だと知っておく必要があります。

「演繹法」とは「ある事象を論理的に推し進める推論法」

「演繹法」(えんえきほう)とは、ある事象について論理的に思考を展開して結論を導き出す推論方法のため、帰納法の逆の推論法と位置付けられます。ある事象が一つの場合は直接推理と呼び、2つ以上あるときは間接推理と呼ばれます。

三段論法は間接推理のひとつで、「人は二足歩行である」、そして「私は人である」という二つの前提から「私は二足歩行である」という結論を導き出します。三段論法はアリストテレスによって定型化されて、論理学の主要な思考法として用いられています。

「アブダクション」との違いは推論のアプローチの仕方

「アブダクション」とほかの推論法である「帰納法」と「演繹法」との違いは、推論するアプローチの違いです。「帰納法」と「演繹法」はある事象または複数の事象から結論を導き出しますが、「アブダクション」は結論が先にあり、その結論を理解するために仮定を使って新たな結論を導き出す推論法です。

また「帰納法」と「演繹法」では推定していく過程においては論理的に思考を展開するのに対して、「アブダクション」は推論過程で使わエれる仮定をひらめきや想像力という人の感性を必要として推論を進めていくという違いがあります。

まとめ

「アブダクション」とは「誘拐」という意味と同時に、哲学の分野では帰納法や演繹法に続く三つ目の推論法のひとつである「仮説的推論」という意味があります。理解できない事柄を理解するために仮定を使いながら推論する方法です。