「絆される」の意味は?誤用例と正しい使い方・言い換え表現を解説

「ついつい気持ちが絆されてしまった」「感情に絆されてはいけない」というように、ごく一般的に使われる「絆される」という言葉。無意識のうちに放たれることもあると思いますが、正しい意味を理解して使っている人は少ないのではないでしょうか?

ここでは誤用が多い言葉の一つ「絆される」について、意味と使い方、誤用例、類語・対義語について紹介しましょう。

「絆される」とは?

「絆される」の意味は”情にからまれること”

「絆される」の意味は、“情にからまれること”です。詳しく言えば、相手の感情や同情の念にかられ、自分の意思や考えに基づかない行動をとってしまうことを指します。

人は感情の動物であるため、相手の情や気持ちに影響されやすいことは否めません。そのため、自分が本来抱く感情や思いとは裏腹に、一時的に相手の情にひかされ、流されてしまうことがあります。このように自分の考えに基づかない一連の行動を「絆される」言います。

つまり、「絆」という言葉本来が持つ意味のように「束縛するモノ、断ち難いつながり」という点を考えると、「絆される」は情によって気持ちが束縛された結果、断ち難いつながりを生んでしまう状況のこと、とも解釈できるでしょう。

「絆される」の読み方は”ほだされる”

「絆される」の読み方は、“ほだされる”です。「絆される」の「絆」は「きずな」という読み方で世間一般的に知られていますが、その他「ほだす」「つなぐ」などの訓読みもあります。「絆される」は「ほだす」の受身の助動詞「れる」が後続した言葉となります。

また、「絆」という言葉には、もともと「牛馬をつなぐための頑丈な紐」という意味があり、加えて「束縛するモノ」「強いキズナ」「断ち難いつながり」などの意味も持ち合わせます。

「絆される」の誤用とは?

「コントロールされる」「騙される」という悪い意味ではない

「情に絆されて、〇〇するなよ」「相手の魅力にまんまと絆されたか」などと言うように、「絆される」が完全に悪い意味で使われることがあります。これは「絆される」が、状況はさておき、自分の心が相手の情によって縛られて気持ちが自由ではない、という誤った意味で解釈してしまっているためです。

「絆される」は感情や気持ちが「コントロールされる」という意味で使うのは適切ではありません。ましてや、相手を責めるように「騙される」といった意味で使うのも正しいとは言えないでしょう。

「絆される」は「情に引かれて、心や行動での自由や本来の考えが縛られること」という意味がありますが、相手の心に繋ぎとめられるというニュアンスが強くあります。相手の気持ちと同じような気持ちになる、そのような気持ちになってしまうという背景において使うのがベストです。

「絆される」の正しい使い方と例文とは?

「絆される」の正しい使い方について解説します。

相手の熱意や同情により要求を受けるときに使う

「絆される」は相手の辛い状況や必死な態度に気持ちが流されてしまい、相手と同じ気持ちになってしまうこと、という意味もあります。そのため、自分の考えではないものの、相手の強い熱意や要求に対し最終的に要求を承諾するときにも使われます。

この場合、相手の強い熱意や要求が何らかのタイミングで自分の心を奪い、自分までそのような気持ちを持ってしまうことを指すため、やや不本意なニュアンスもあるでしょう。例文を挙げてみます。

  • 情に絆されたのは、無名の新人立候補が声を枯らして演説していたからだろう。
  • 何度も厳しく断ったにも関わらず、笑顔でやってくる営業マンの情熱に絆された。

相手に共感する時にも使う

「絆される」は素朴な言動や気持ちのつながりをポジティブに表現するときにも使われます。たとえば、子供が見せる素朴な笑顔を見た時や純粋無垢な願いに対し、良い意味で心が縛られ、気持ちがつなぎ止められる時に「絆される」を使うことがあります。

「絆される」はある程度ポジティブな意味で「共感して受け入れる」と言ったニュアンスでも使われます。

  • 子供達の屈託のない笑顔に絆され、小学校の役員を引き受けることにした。
  • 保健所から犬を引き取りたりたいという息子の優しさに絆された。

「絆される」の類語と対義語とは?

「絆される」の類語と対義語について解説します。言い換えをしたい時や、状況に「絆される」がそぐわない時に類語を置き換えの言葉として使ってみましょう。

「絆される」の類語は”押し切られる”や”呑まされる”

「絆される」は相手の情に流されて受諾してしまうことを指します。そのため、類語として考えられるのは「押し切られる」や「呑まされる」、「力負けする」や「一方的に決められる」、また現代の表現では「ごり押しされる」などの表現が挙げられます。

その他「丸め込まれる」「承諾する」などもありますが、最終的に承諾しなくても、相手の情に強く引かされた状況を例えるなら「影響を強く受ける」「心を動かされる」なども類語として適語と言えるでしょう。言い換えの例を挙げてみます。

  • 彼女の強い熱意に絆された。
  • 彼女の強い熱意に押し切られた。
  • 彼女の強い熱意に力負けした。
  • 彼女の強い熱意に心を動かされた。

「絆される」の対義語は”しがらみのない”や”意に介さない”

「絆される」の軸の意味「情に引かれて、心の自由がなく縛られること」の逆の意味を考えると、対義語は「しがらみのない」や「意に介さない」などになると考えられます。その他、「自由の利く」「束縛されない」「邪魔されない」「規制されない」「自分を失わない」なども、文脈や状況によっては使えるでしょう。

気持ちはフリーで何にも縛られない状態、加えて、状に押されることもなく自分の意で行動することを表す言葉が「絆される」の対義語となります。

まとめ

「絆される」の「絆」はもともと馬や牛を繋いでおく紐のことで、「絆される」の意味は「相手の情に引かされ、相手と同じような気持ちを持つこと」「人の情にからまれること」となります。

また「絆される」状況とは、本来の自分の考えや意思にはない行動をとることが特徴です。相手の熱意や欲求に心が折れ、最終的には承諾してしてしまうことを意味しますが、相手にコントロールされるという意味で使うのは適切ではありません。正しい使い方をして、相手に誤解を与えないようにしましょう。