日本の四字熟語には、もともと中国で使われていた言葉が数多く存在しますが「聖人君子」もその一つ。文字からは「優れた人」というようなニュアンスが伝わってきますが、正しい意味や使い方についてはあやふやという人もいるかもしれません。
ここでは「聖人君子」の意味と語源、使い方とその例文、聖人君子とはどのような人物を指すのかを紹介します。類語・対義語、英語表現についても解説しますので、ぜひ参考にして下さい。
「聖人君子」とは?
「聖人君子」の意味は”並外れた人格のある高徳な人”
「聖人君子」の意味は、“並外れた人格を持つ高徳で、非常に立派な人”のことです。世の中には優れた才能を持ち、大いに賞賛すべき人は数多くいますが「聖人君子」というレベルになると、最高の人格を備え持ち、極めて徳が高く、非常に立派な人となります。
もっと詳しく言えば、高徳なばかりではなく、あらゆる学識に長け、所作や行動において高潔であり、しかも誰からも尊敬され崇拝するに値する人物のことを指します。
「聖人君子」の語源は中国
「聖人君子」の語源は「中国」です。中国では誰からも尊敬され理想的な人物を「聖人」または「君子」と称する文化があります。
昔から中国では「聖人」は「偉大で崇高、高貴なる完璧な人」、「君子」は「学識に優れ、人格のある人」を指します。つまり「聖人」と「君子」という二つの言葉が組み合わさって、「これ以上ない最高ランクの人」を表す言葉となるのです。
一般的には政治家や思想家などの分野において積極的に使われていた背景がありますが、現在では意味に幅が生まれ、誰もが望むような最高に理想的な人というニュアンスで使われるようになりました。
「聖人君子」にふさわしい人は誰?
「聖人君子」と呼ぶにふさわしい人物とは一体誰でしょうか?非常に難しいテーマとなりますが、おそらく一般的に「聖人君子」と言えば、「仏陀」や「孔子」、「マザーテレサ」などを思い浮かべる人が多いでしょう。
人によって考え方は異なりますが、世界の歴史上の人物で飛びぬけて優れた人徳や教養があり、世界や国を抜本的に変えるような改革を起こした人はほんの一握りです。また、活躍したフィールドやポジションによっても見方が異なると考えられます。
「聖人君子」の使い方と例文とは?
「聖人君子」の使い方と例文を見てみましょう。使い方で気を付けたい点と併せて解説します。
「聖人君子」は比喩的な使い方をする場合が多い
「聖人君子」とは、実際にほんの一握りしか存在しないような人達です。そのため、普段の生活で使う時には「聖人君子ような」という比喩的な言い回しをすることが多くなります。そのため、「こういう人を目指そう」というような、目標とする対象人物として「聖人君子」を用いてみることが多く見受けられます。
「聖人君子」のように「高潔で見分が深く、教養が豊かで人格者」といった具体的なゴールが見えてくる効果も生まれるでしょう。
- 人々に心から尊敬されたいのであれば、聖人君子のように振舞いなさい。
- 彼は聖人君子ように人格の優れた高潔な人である。
「聖人君子」を否定的に使うことも
「聖人君子」は「あなたは聖人君子のようだ」というように褒め言葉として使うこともありますが、一方で「聖人君子にはなれない」「聖人君子ではない」というように、相手の言動や行為を否定するようなニュアンスで使われることもあります。
どれだけ頑張っても「聖人君子」ではないのだから、結果はたかが知れている、所詮は無駄な行為だというように否定的な意味で伝わることがあるため、使う相手は慎重に選択する必要があります。
また、一方で職場の後輩や新人の頑張りや努力に対して「聖人君子ではないのだから無理だよ。ガッカリするな」という励ましの意味でも使うことができるでしょう。
- 凡人の私。結局どう頑張っても聖人君子にはなれない。
- 君は聖人君子ではないのだから、成果が供縄くても気にするな。
「聖人君子」は基本的にヒーローという意味ではない
「聖人君子」という言葉のニュアンスから、「聖人君子」を「ヒーロー」という意味で文章に使ってしまうことがあります。これは「聖人君子」での適切な使い方ではなく、誤用となりますので注意して下さい。誤用の例を挙げてみましょう。
- × 僕は聖人君子になって、地球を守る。
- × 聖人君子なら、困った人を助けてあげてよ。
「聖人君子」の類語と対義語とは?
「聖人君子」の類語と対義語について見ていきます。
「聖人君子」の類語は”聖人賢者”や”雲中白鶴”
「聖人君子」の類語には“聖人賢者(せいじんけんじゃ)”や“雲中白鶴(うんちゅうはっかく)”などがあります。
「聖人賢者」とは「知恵と徳に非常に優れ、賢さに長けている人」を指し、特に賢さに優れている人として言い換えできます。「雲中白鶴」は「清らかで穢れの無い高貴な人」という意味を持つため、美しくも見える高貴な人物に使えます。
- わが社の社長は聖人賢者とも呼ばれるほど、知恵に飛ぶ賢い人物だ。
- 彼女の仕事ぶりを見ていると、まさに雲中白鶴のようである。
「聖人君子」の対義語は”蕩児愚人”や”凡愚”
「聖人君子」と逆の意味を持つ言葉は、それぞれ「愚」という漢字が入る「蕩児愚人」や「凡愚」などです。
「蕩児愚人」とは、遊び惚けて努力や学習をしない「蕩児」と、愚かな人を意味する「愚人」を組み合わせてできた言葉です。勉強せず怠けてばかりいるため、当然のことながら知識や人格がともなってくることもなく、人から尊敬され敬われることもありません。
また「凡愚」は「賢くないさま」「つまらない愚かな人」を意味します。「凡愚」は相手をののしるようなニュアンスがあるため、ビジネスでもプライベートでも使う相手に気を付け、できるだけ直接的に使わないようにして下さい。
「聖人君子」の英語表現とは?
「聖人君子」の英語表現です。例文と併せて紹介します。
「聖人君子」は英語で”saint”や”high moral character”
「聖人君子」を英語で表現する時は、純粋に「聖人」を意味する“saint”や“high moral character”などを使うのが良いでしょう。「聖人君子」を一語一句、意味を細かく説明して訳してしまうと、相手が困惑してしまうことがあります。
「聖人君子」を英語で伝えるなら「You are like saint(まるで聖人のよう人)」「You are high moral character(高徳な人)といった簡単な表現を用いるのが無難でしょう。また、人格において凡人とは比べ物にならない程優れている、という点を強調したい時は「remarkable personality(卓越した人格)」という表現も使えます。
「聖人君子」を使った英語例文
「聖人君子」を使った英語例文をご紹介しましょう。
- 彼は聖人君子のようである。
He is just like a saint.
He has such remarkable personality. - 誰もが簡単に聖人君子になれるわけではない。
There is no easy way to become someone who has remarkable personality.
まとめ
「聖人君子」の語源は中国で、人格や教養といったあらゆる面で最高ランクの人を指す言葉で「優れた知識と高い徳を備え、卓越した人格を持つ人」を意味します。日本では褒め言葉として使うこともありますが、否定的なニュアンスで「聖人君子にはなれない」というような使い方をすることもあります。
しかしながら、「聖人君子にはなれないが、同様の知識と人格は養うべきだ」というように、ポジティブな使い方をすることもできるでしょう。この機会に「聖人君子」の正しい意味を理解して、会話に取り入れてみて下さい。