「俯瞰的」の意味とは?「俯瞰的に見る」は誤用?「客観的」も解説

「俯瞰的(ふかんてき)にものごとを見る」というように、社会人になると「俯瞰的」という言葉を頻繁に見聞きするようになります。また似たような言葉に「客観的」や「鳥瞰的」がありますが、意味の違いは一体何でしょうか?

ここでは「俯瞰的」の意味をはじめ、使い方とその例文、類語と反対語などをまとめています。誤用で最も多い使い方と併せてみていきましょう。

「俯瞰的」とは?

「俯瞰的」の意味は”ものごとを客観的に見るようにすること”

「俯瞰的」の意味は、”ものごとを客観的に見るようにすること”です。「俯瞰」に「ねらい」や「対象」といった意味を持つ「的(てき)」がついた言葉です。

「俯瞰的に〇〇する」というように、副詞的な要素で使うことが多いですが、意味合いは「俯瞰」と同じです。

「俯瞰」には2つの意味がある

そもそも「俯瞰」とはどういう言葉なのかというと、意味は2つあります。1つ目の意味は、物理的な観点で「高い場所から見下ろすこと」です。超高層ビルから真下に縦横する道路や車を見下ろしたり、山頂から下界を見下ろす時に、「俯瞰する」という表現を使います。

「俯瞰」の2つ目の意味は「広い視野で客観的に見ること」です。ものごとや状況を広い視点を持って客観的に見ることを指します。状況や計画など、ものごとの全てにおいて全体像を把握し、凝り固まった考えを捨て、広い視野でものを見ることを言います。

「俯瞰的」とは、「俯瞰」の2つめの意味で「ものごとを広い視点で見るようにすること」を表しています。

「俯瞰」それぞれの漢字が持つ意味

もともと「俯瞰」の「俯」は「俯く(うつむく)」、また「瞰」は「高いところから見下ろす」という意味があります。「俯瞰」のそれぞれの漢字は常用漢字ではありませんが、文字通り「見下ろす」という意味になることは一目瞭然と言えます。

「俯瞰的」の読み方は”ふかんてき”

「俯瞰的」の読み方は、“ふかんてき”です。

「俯瞰的」の使い方と例文とは?

「俯瞰的に見る」は二重表現

「俯瞰的」でよく使われる熟語表現に「俯瞰的に見る」がありますが、これは二重表現となるため誤用となります。「俯瞰的」という言葉そのものが「ものごとを広い視野で見ること」となるため、その後に「見る」をつけるのは間違った使い方となります。

「俯瞰的に解釈する」「俯瞰的に考える」はビジネスシーンでよく使う

「俯瞰的」を使った表現では「俯瞰的に解釈する」「俯瞰的に考える」などが挙げられます。

双方とも「ものごを広い視野で捉え、客観的な視点で解釈する(または考える)」という意味になりますが、職場やビジネスシーンでは、冷静な判断や一般的な動向や考えを唱える場面も多いため、俯瞰的にものごとを解釈し、考えることはとても重要なスキルだとも言えるでしょう。

また、会議やミーティングの席で主観的な意見がぶつかってしまった時は、あえて俯瞰的な意見や考えを述べることによって、事態を沈下させることも期待できます。例文を挙げてみます。

  • 市場での動向を俯瞰的に解釈することで、次の商品開発につなげる。
  • 個人的な意見をぶつけるのも必要だが、俯瞰的に考えることも忘れないようにしたい。

「俯瞰的」と「客観的」の違いとは?

「客観的」は”特定の立場や主観から離れてものごとを見ること”

「客観的」とは「特定の立場や主観から離れてものごとを見ること」を意味します。自分個人としての意見や独りよがりの考えを軸とするものではなく、他人や一般的な視点をもとに捉えて考えることを意味します。

たとえば、自分がスニーカーは裸足で履くべきであると思うのは「主観的」な考えです。しかし、他の人や一般的な視点では「靴擦れができそう」「足が蒸れそう」「靴下を履くべきだ」といった客観的な意見が出てくることが考えられます。

このように、自分の考えから離れ、一般的なものごとを見る思考スタイルを「客観的」と言います。

「俯瞰的」の類語とは?

「俯瞰的」の類語は”大局的”や”展望ある視点で”

「俯瞰的」と言い換えができる類語は「大局的」や「展望ある視点で」などが挙げられます。「大局的」はものごとの全体における様子やありさまを捉え、全体の局面を考えること」という意味です。

また、わかりやすい表現に置き換えたい時は「展望ある視点で」や「客観視して」なども適切です。とくに「客観視して」の場合は、普遍的で利害関係や感情を挟まない様子を表す時にピッタリの表現となります。

  • 会議での結果を大局的に見てみる。
  • 会議での結果を客観視してみる。

「鳥瞰的」は”上空の鳥が真下の全体図を見る視点のこと”

「鳥瞰的」とは、上空を飛ぶ鳥が下界に広がる景色や様子などを描写する視点を指します。空高く飛ぶ鳥は、上空から真下を全体的に見ることができ、この子を表したのが「鳥瞰的」です。

「鳥瞰的」の意味は、ほぼ「俯瞰的」と同じとなりますが、一般的には「俯瞰的」の方がよく知られているため、日常・ビジネスシーンでも使用頻度も高いと言えます。「鳥瞰的」を使う時は、空高く飛ぶ鳥の視点を想像してみると良いでしょう。

「俯瞰的」の対義語とは?

「俯瞰的」の対義語は”偏狭的”や”近眼視的”

「俯瞰的」の対義語は「偏狭的」や「近眼師的」などがあります。「偏狭的」は「個人による独りよがりの狭い考えや概念にとらわれ、ものごとへの度量が狭いこと」を意味します。また、「近眼師的」は「全体図を見ず、目先のものごとだけを見ること」という意味を持ちます。

  • 偏狭的な考えでは、事業計画を立てることはできない。
  • 彼は明日のことだけしか考えられない、近眼私的な面がある。

まとめ

「俯瞰的」とは物理的に「高いところから見下ろす」と、比喩的に「ものごとを広い視野で見ること」「全体像を把握して客観視すること」という意味を持ちます。一般的には「俯瞰的に解釈する」「俯瞰的に考える」というように使われることが多いでしょう。

文章の構造上から言えば、ビジネスでよく使われる「俯瞰的に見る」は、「馬から落馬する」と同様に二重表現となるため、厳密的には誤りとなります。ここは注意したいところです。

「俯瞰図」「俯瞰撮影」など「俯瞰」という言葉そのものがつく言葉もいくつかあります。この機会に一緒にマスターしてみて下さい。