「ハロー効果」の意味とは?人事やマーケティングの具体例も紹介

マーケティングで活用される「ハロー効果」という心理現象があります。加えてハロー効果は採用面接や人事評価にも表れるため、ビジネス用語として知っておきたい概念です。この記事では、ハロー効果の意味や提唱者を解説するとともに、その具体例も紹介します。

「ハロー効果(英語: halo effect)」とは?

「ハロー効果」の意味は「目立つ特徴につられて評価が歪む現象」

「ハロー効果」とは、「ある対象を評価するとき、その対象が持つ目立つ特徴につられて全体の評価が歪む現象」です。社会心理学の用語です。

顕著な特徴につられて判断が歪む「認知バイアス」のひとつで、ポジティブにもネガティブにも歪む心理現象が確認されています。

認知バイアスとは、人間の判断や意志決定において、合理的な理論とは異なる方法で行われる「かたより」を示す認知心理学の用語です。

「ポジティブ・ハロー効果」と「ネガティブ・ハロー効果」がある

ハロー効果には、「ポジティブ・ハロー効果」と「ネガティブ・ハロー効果」とがあります。

「ポジティブ・ハロー効果」とは、一部の評価が高いと全体を高く評価してしまう現象のことで、「あばたもえくぼ」のことわざがその効果を表しています。「ネガティブ・ハロー効果」とは、一部の評価が低いと全体を低く評価してしまうことで、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のことわざはその心理現象を言いえています。

  • 「あばたもえくぼ」:好意を抱く相手はあばた(痘痕)でもえくぼのように見えること。好きになった相手はどのようなものも良く見えることを表す。
  • 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」:ある対象の一部が気に入らないと、その対象に関するすべてが憎い(気に入らない)と感じてしまうことを表す。

「ハロー効果」の提唱者はアメリカの心理学者「ソーンダイク」

第一次世界大戦中に、アメリカの心理学者エドワード・ソーンダイクが、上司は部下をどのように評価するかについて調査・研究を行いました。その結果、優秀と評価されている兵士は、ほとんどの項目において高評価であるのに対し、優秀と評価されていない兵士は、ほぼすべての項目の評価が平均以下であることがわかりました。

ソーンダイクはこの心理的な傾向について、聖人に「ハロー(後光)」が射している様子になぞらえて「ハロー効果」と名付けました。研究をまとめた論文「A Constant Error in Psychological Ratings」は1920年に発表され、「ハロー効果」の言葉と定義がそこで初めて示されました。

ソーンダイクが発見した「ハロー効果」とは、「認知的不協和」と呼ばれるもので、人は情報に矛盾があると不快感を感じ、それを解消するためにイメージを作り出す心理的な傾向のことを示します。

「ハロー効果」の具体例とは?

例①「人事評価」に表れるハロー効果(ソーンダイクの調査例)

ソーンダイクの調査例として、空軍士官学校の生徒について、「リーダーシップ」や「身体的特徴」など複数の項目について上官に評価させたところ、ある評価が高いと別の評価も高くなるという相関関係が見られました。逆に、悪い特徴があると全体の評価が低くなることもわかりました。

企業の人事評価の際などには同じ現象が起きるといえます。評価担当者は気を付けたい傾向です。

例②「採用面接試験」に表れるハロー効果

企業などの採用面接試験はハロー効果が表れる代表的な場です。出身校や容姿、履歴書の内容などから、知らず知らずのうちに採用担当者の評価に歪みが表れる傾向があります。質問への回答内容が同じであったとしても、出身大学などの違いによって評価のポイント数が変わってしまうのがハロー効果です。

面接を受ける側の対策としては、ハロー効果を逆手にとり、マイナスの要素をプラスに変えるくらいに自分の長所を大きくアピールする戦略を取ることが考えられます。

例③「親の七光り」はハロー効果

両親またはそのどちらかが、社会的に成功した有力者や著名人である環境に生まれた子どもは、親の良いイメージが継承され、親と同様に期待されることがあります。特に努力しなくとも高い評価を得ることができる芸能人や政治家の2世などを、「親の七光り」と呼びますが、これもハロー効果のひとつです。

親が優秀なのだから子どももそうに違いないという考えや、親への憧れや好ましい思いを子どもにも当てはめてしまう現象は、子どもにとってはプレッシャーが大きいといえます。2世が成功するためには、ハロー効果の抑圧をのりこえるほどの強い個性が求められます。

「ポジティブ・ハロー効果」を利用するマーケティング例

「有名人」を起用する企業のイメージ戦略

テレビなどで活躍する有名人が所有する物や、有名人がすすめる商品を「あの有名な〇〇さんが選んだのだから良い物に違いない」と無批判に考えてしまうことがあります。これは、有名人に対する憧れや親近感などの良い感情が、その人に関係する物にまで及んでいる例です。まさにハロー(後光)効果だといえます。

有名人を起用した企業のイメージ戦略は、この心理を利用したものです。

「口コミ」を集めてハロー効果を狙う

有名人ではない、一般人の口コミにもハロー効果があります。良い評価の口コミがたくさん集まると、こんなに大勢の人が良いと言っているのだからそのとおりに違いない、とその情報をうのみにしてしまう傾向があります。加えて実際のサービスや商品の実態よりも、口コミにつられて高い評価が得られる傾向があります。

商品イメージアップのために口コミやユーザーの声などを集めるマーケティングは、ハロー効果を狙うものです。

「ブランド戦略」は「ハロー効果」戦略

企業や商品のブランド戦略は、ハロー効果戦略でもあるといえます。ブランドイメージが高まれば、そのブランドの商品すべての評価が高まります。ブランドのハロー効果によって、商品やサービスの好感度を高めることができます。また、高いブランドイメージを持つ企業は、優秀な人材が集まるようになります。

まとめ

「ハロー効果」とは、アメリカの心理学者ソーンダイクが発見した人間の心理的な傾向です。人が何かを評価するとき、「目立つ特徴につられて評価が歪む現象」をいいます。ハローとは、聖人の頭上に描かれる後光のことです。

企業のマーケティングでは、ハロー効果はいたるところで活用されているといえます。人気の高い有名人を起用した広告活動や、高いブランドイメージを構築して商品のイメージを高めること、口コミによる宣伝活動などです。

また、企業の採用面接試験や、人事評価でもハロー効果による認知バイアスは避けることができません。ハロー効果とは何かを知り、その心理現象を合理的に利用することが、ビジネスのあらゆる場面に求められるといえます。