「含蓄がある」という表現を耳にしたり読んだりすることがあります。「含」という漢字が入っているので、何かが含まれるという意味かな?とは思うのですが、正しい使い方について確認する機会はあまりないかもしれません。「含蓄」について正しい意味と使い方を解説します。
「含蓄」の意味・読み方・由来
意味は「うちに奥深い意味がこめられていること」
「含蓄」とは「うちに奥深い意味がこめられていること」という意味です。含蓄にはもう一つ「中に深みをもつこと」という意味もあります。
- 中に含みもつことの例・・・ 「少量の炭素を含蓄する」
- うちに奥深い意味や豊な内容がこめられていることの例・・・ 「含蓄のある文章」
1. は物理的に何かが含まれることを意味し、2.は言葉や文章の内容の奥深さを意味しています。今回は②の意味について解説します。
読み方は「がんちく」
「含蓄」は「がんちく」と読みます。「うんちく」と混同する人がたまにいるようですが、「うんちく」は「薀蓄、蘊蓄、うん蓄」と書かれる別の言葉となります。
「含蓄」の由来は中国語
「含蓄」は中国語の漢字と意味がそのまま持ち込まれたと考えられます。「他说话很含蓄」という中国語の意味は「彼の話は含蓄に富んでいる」となります。
「含蓄」の使い方と例文
使い方は「含蓄が深い」、「含蓄のある」など
「含蓄が深い」「含蓄のある」「含蓄が深い」「含蓄に富む」「含蓄のある会話」「含蓄のある人」などといった言い回しで「含蓄」という言葉をよく耳にします。これらはどのような状況の時に用いるのが適切なのでしょうか。
「含蓄」はうちに深い内容や意味がこめられていることという意味でした。つまり、直接的に表現されていないところに深い意味を読み取る状況ということになります。その人が話したり書いたりした言葉に対して、聞き手や読み手が、深い味わいや豊かな内容を感じ取る、という解釈する側から見た判断状況となります。
また、会話や文章以外にも、芸術作品や人の表情などに対しても「含蓄がある」という表現で深みや豊かさを表すことがあります。同じような使い方として、含蓄のある話ができる人や豊かな人という意味で「含蓄のある人」という表現がされることもあります。
「含蓄のある〇〇」の例文
最もよく用いられる言い回しが「含蓄のある…」です。後ろに続く言葉を修飾する場合、「含蓄がある」ではなく、「含蓄のある」というように「の」を用いるのが一般的です。例文を紹介します。
- 含蓄のある話ができるよう読書に励んでいる。
- 彼はいつも含蓄のある言葉を選んでいる。
- 彼女は含蓄のある返答が得意だ。
- 含蓄のあるお言葉をいただいた。
※「〇〇は含蓄がある」とする場合は、「彼の言葉は含蓄がある」となります。
「含蓄の深い〇〇」の例文
「含蓄の深い…」という言い回しもあります。こちらも「含蓄が」ではなく「含蓄の」と「の」を用いるのが一般的です。「含蓄の深い」の「深い」は「その要素が全体にゆきわたって感じられるようす」という意味になります。「含蓄の深い」とは「深い内容や意味が全体にゆきわたって感じられる」という意味です。
- 含蓄の深い映画を好んで観ている。
- 日本の俳句には含蓄の深い風情が感じられる。
- 含蓄の深い微笑みといえばモナリザの微笑みである。
- 含蓄の深い演説ができる政治家は日本にいない。
※「含蓄が深い」とする場合は「モナリザの微笑みは含蓄が深い」となります。
「含蓄に富む〇〇」の例文
「含蓄に富む…」という言い回しも一般的です。「富む」は「たくさんもっている」という意味です。「含蓄に富む」とは、「深い内容や意味がたくさんこめられている」という意味になります。
- 近頃は含蓄に富む文章を書く作家が減ってきた。
- 夏目漱石の小説はどれも含蓄に富んでいる。
- 彼は含蓄に富む講演で定評がある。
- 含蓄に富む書籍を図書館で探す。
「含蓄」の類語
「含蓄」の類語は「深い意味合い」、「重要な意味」など
「表面に現れない深い意味」という意味の類語としては「深い意味合い」「深意」「奥深い意味」「奥深い内容」「重要な意味」などがあります。
「奥深い意味」の意味と「含蓄」との違い
「奥深い」は「意味が深い、深遠な意味がある」という意味です。「奥深い真理」「奥深い哲理」のように、深い哲学的な考察を表す際によく用いられます。「含蓄」の持つ「含みのあることば」という意味合いはここにはなく、物事の意味の深さを表しています。
「深意」の意味と「含蓄」の違い
「深意」は「うちに秘められた深い意味」という意味です。「深意を悟る」「深意を解する」のように用いられます。「奥深い意味」と同じく物事の意味の深さを表し、「含蓄」の持つ「含みの意味合い」は示されません。
「含蓄」を英語で表現すると?
「含蓄」は英語で「significance」(名詞)
上述した「含蓄」の意味②の「うちに奥深い意味や豊な内容がこめられていること」を表す英語は「significance(名詞)」です。
- 「含蓄のある言葉」 ⇒ words with significance.
- 「夏目漱石の小説は含蓄に富んでいる」 ⇒ Natsume Soseki’s novel is rich in significance.
※意味①の「中に含みもつこと」という意味の英語としては「connotation」や「implication」があります。深い意味や豊かな内容を含みもつ、という意味とは異なります。
まとめ
「含蓄(がんちく)」とは「うちに奥深い意味や豊かな内容がこめられていること」という意味の言葉です。「含蓄のある人」と言われたらそれは「豊かさをうちにもつ人」という最大の誉め言葉かもしれません。「含蓄のある文章」や「含蓄のあることば」にたくさん触れることで、内面を磨いてゆくことができるでしょう。