「しいては」の意味とは?「ひいては」との違いや類語・対義語も

誰かと会話をしている時に、内容を強調する目的で「しいては」という言葉を使うことがあります。普段は無意識のうちに放たれるものの、あえて言葉の意味を考えたことは少ないと思います。

ここでは「しいては」の意味、ひいてはとの違い、使い方と例文、類語・対義語について解説していきましょう。

「しいては」の意味とは?

「しいては」の意味は”無理を押して・あえて逆らって”

「しいては」の意味は、“無理を押して・あえて逆らって”です。もともと「しいては」の漢字表記は「強いては」です。

「強いては」は「強い(つよい)」「強いる(しいる)」とも読み、「勢いや力があること」「押し付けること」「強めること」という意味を持ちますが、「しいては」も、やや無理やりにといったニュアンスを強調した言葉となります。つまり「しいては」は反対を押し切って強引にことを行ったり、むやみに何かをすることなどを指します。

「しいては」の使い方と例文とは?

「しいては」は強引に何かをする時に使う

「しいては」は「強いては」と表記しますが、言葉からも理解できるように「強引に、無理を押して〇〇をする」という意味があります。そのため、何かを強引にさせたり、無理を押し付ける時に使われます。

例文
  • 残業をしいては(強いては)いけない。
  • しいて(強いて)結婚を急がせるのは賛成ではない。

「しいては」は無理をして言うならばというニュアンスで使う

「しいては」は「しいて〇〇をする」というように、強引に、無理やりに、仕方なく、という意図で使われます。あるものごとが存在し、どちらも同じようなもので止む無く選ぶ場合に「しいて言えば」「しいて選ぶなら」というように表現します。

例文
  • しいて(強いて)言うなら、プロジェクトの再考を検討いただきたいのが本音です。
  • どちらも好みの色ではないが、赤と青なら赤かな?しいて(強いて)選ぶならの話ですが…。

「しいては事を仕損じる」はNG!正しくは「急いては」

「しいては事を仕損じる」という表現が使われることがありますが、正しくは「急いては事を仕損じる」です。「しいては(強いては)」ではなく「急いては(せいては)」となりますので、気をつけましょう。

「急いて事を仕損じる」は、「ものごとを急いで終わらせようとすると、物事が上手くいかなくなる。そのため、最後までものごとをやり通したり、成功させるには、落ち着いて行動することが大切である」という意味合いを持ちます。

「しいては」と「ひいては」の違いとは?

「ひいては」と「しいては」は意味が異なる

「しいては」と似た表現に「ひいては」がありますが、「しいては」と「ひいては」は意味が異なります。

「ひいては」は漢字で「延いては」と書きます。「延いては」の意味は「最終的には」「従って」となり、文章のまとめの部分で「結果的にはこうなります」と言った意図で文頭に置かれる表現となります。たとえば「ひいては、負けという結果となりました」というように使います。「しいては」と「ひいては」を同じ意味として誤用しないように気をつけましょう。

「しいては」は「ひいては」の江戸言葉とも

一方では、江戸に住む人や地方の人が「はひふへほ」を「さしすせそ」と発音することがあったため、「ひいては」を「しいては」と言うケースもあります。つまり、住む土地にによっては「ひいては」を「しいては」と発音するため、この場合に限り「しいては」と「ひいては」は同じ意味と解釈できます。

「しいては」の類語と対義語とは?

「しいては」の類語は”否が応でも”や”有無を言わさず”

「しいては(強いては)」の類語は”否が応でも”や”有無を言わさず”があります。その他、「承知か否かに関わらず」「好むと好まざるに関わらず」なども類語に該当します。

「しいては」の言い換え表現
  • 仕事を強いてさせるべきではない。
  • 仕事を否が応でもさせるべきではない。
  • 仕事を有無を言わさずさせるべきではない。
  • 仕事を好むと好まざるにかかわらずさせるべきではない。

いずれの言葉も無理やりに何かをさせる、行わせるという意味を持つ言葉です。

「しいては」の対義語は”選択可能な”や”自由に”

一方、「しいては(強て)」の対義語は、押し付けない、無理やりさせないことを意味する「選択可能な」「自由に」、また選択や決定に制限や束縛がないことを意味する「心置きなく」「存分に」なども対義語となるでしょう。

「しいては」の対義語を使った例文
  • 心置きなく楽しんで下さい。
  • 存分に楽しんで下さい。
  • 自由に楽しんで下さい。

例文はいずれも、誰からの制限を受けず、強いられることなく、自分で選んで何かをするような状況を表しています。

まとめ

((「しいては」は「強いては」と漢字表記し、「無理やり押し付ける」「強引に何かをさせる」という意味があります。似た響きのある「ひいては(延いては)」と混同しがちですが、「延いては」は「結果的には、従って」という意図で用いられるため、意味が異なります。

また、「しいては事を仕損じる」の「しいては」は「強いては」ではなく「急いては」となります。ぜひ使い方には注意していきましょう。