そもそも「育休」とはどのような条件でできる休業なのでしょうか。今回は「育休」の意味や歴史、育休を定める育児介護休業法について、さらには育休中にまつわるお金のこととして育児手当や住民税の他に、似た言葉である育児休暇との違いやアメリカでの育休事情を解説します。
「育休」とは?
「育休」とは「育児のための労働者が休業すること」
「育休」の意味は、「育児のために労働者が休業すること」です。「育児休業」の略語です。原則として働いている父または母が、実子または養子が1歳未満で、子供一人につき一回の育休が取得できます。
育児休業は法的に認められた休業ですから、育児休業後は職場に復帰し、休業前の役職や地位を失わないことが前提になっています。
育休の期間は子供が一歳になるまで
育休の期間は、その子供が一歳になるまでですが、両親ともに育休を取得する「パパママ育休プラス制度」を利用する場合には、子供が1歳2ヶ月になるまで認められています。
保育園等に入園できずに家庭で育児を継続してなくてはならない場合には、子供が1歳6ヶ月になるまで育休期間を延長することができます。企業や自治体によっては、前述した育休期間よりも長く育休を認めているケースもあります。
育休の歴史は60年代から始まる
育休を定める「育児介護休業法」が1995年に定められる以前から育休は始まっていました。60年代に日本電信電話公社(電電公社)と数社の民間企業が育休制度を取り入れたのを皮切りに、1975年7月に「育児休業法」が成立して国公立の教育機関の女性教員と社会福祉施設で働く女性だけが育休を取得できることが認められました。
その後、職業と家庭を両立させる家庭が増えたため、育休の必要性が女性だけでなく男性にも高まり、1991年、男女問わず民間の全業種に対して育休を認める「育児休業法」が成立します。1995年には育児だけでなく介護も対象とした休業を盛り込まれた現法である育児介護休業法が成立しました。
育休にまつわるお金のこと
「育児手当」とは育休中にもらえる給金
育児手当とは正式には「育児給付金」と呼ばれる「育休中にもらえる給金」のことです。産後57日から1年間、雇用保険から支給されます。そのため雇用保険加入者は育児手当を支給されますが、雇用保険未加入者には育児手当は支給されません。
育児手当の支給額は最初の半年で賃金の67%
育児手当の支給額は、最初の半年が賃金の67%及び301,299円までですが、半年を過ぎると50%及び224,850円まで減額されます。また育児手当は失業給付金に分類されるので非課税です。
2カ月に一度、二ヶ月分の育児手当が振り込まれますが、最初の振り込みは育休開始から2ヶ月ほど経った頃になります。
育児手当の支給は、育休に入る以前に勤め先の会社か管轄ハローワークに申請しなければ支給されませんので、忘れずに手続きを行いましょう。
育休中も住民税は発生
育休中に給与が支払われていなければ所得税はかかりませんが、住民税は発生します。住民税は前年度の収入に課せられる税金ですから、育休中も支払う義務があります。
住民税の支払い方法は、会社の立て替え払いか個人による支払い、または育休を取る前に給与から一括して天引きなどありますので、どの方法で支払うのかは会社の指示に従います。
育休を定める「育児介護休業法」とは?
「育児介護休業法」は育休以外にも介護・看護休業を認める法律
「育児介護休業法」とは育児休業と介護休業に加えて、子供の看護休暇に関して定められた法律です。『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』の略称になります。
1995年に成立して、育児や介護・看護に関わる労働者の労働条件の制限や支援措置などが定められています。
法的に定めれた育休以外の労働者の権利
育児介護休業法によれば、育休以外にも育児をする労働者を守るための権利が決められています。子供が小学校入学するまでは時間外労働や深夜労働を制限して、1年のうち5日の看護休暇が認められています。子供が3歳未満なら、残業を免除や労働時間の短縮を申請することも認められています。
育休や労働時間の短縮を申し出た社員に対して、企業が罰則や減給、降格などの不利益な対処をすることを禁じています。
男性の育休取得率は低い
法的に定められた労働者のための育休制度は、女性だけでなく男性も育休を取ることができます。
しかし平成28年度に厚生労働省が行った雇用員均等基本調査によると、育休の取得者は女性が約82%に対して、男性は約3%です。また育休をとっても、2週間ほどで職場に復帰している例が多いのが現状です。
「育児休暇」の意味と「育児休業」との違いとは?
「育児休暇」とは休暇中に育児をすること
「育児休暇」とは「休暇中に育児をすること」、または「育児のために休暇を取ること」という意味です。
「育休」と「育児休業」は混合されやすいのですが、「育児休業」は1歳未満の子供の育児のために取る休業で、法的に認められています。
一方「育児休暇」は育児を目的にした休暇として法的に認められてはおらず、労働者が育児のために個人的に取る休暇です。
そのため、育児休暇中は育児手当を受けることはできませんし、休暇期間などを規定する法定もなければ、休暇後に職場に復帰した際の地位の保証などはありません。育休と育児休暇は似た響きのある言葉ですが意味は異なりますので、会社に申請する際には間違えることなく申請しましょう。
「育休」の英語表現とアメリカの育休事情
女性なら「maternity leave」、男性は「paternity leave」
「育休」は女性なら産休を意味する「maternity leave」という表現を使い、育休と同様の条件で休暇が取れます。一方、男性は「paternity leave」という表現を使います。
育休や子供の急病のために休む場合の「emergency leave」など、「育児のための休業」を総称した表現として「child care leave」もあります。
アメリカの育休条件は州や企業によっていろいろ
アメリカでは、法的に育休12週間までの雇用が補償されていますが、育児手当のような経済的な援助はありません。
その代わり、各州または各企業によって育児を支援する制度があります。育休中に有給休暇を数週間にわたり取得できる、無休であっても子供が2歳までは労働者の意思を優先して休業できるなど、育休に関する条件はいろいろあります。
住む場所と勤めている会社によって、育休に関する条件は変わります。
まとめ
「育休」とは育児休業の略で、1歳未満の実子または養子の育児のために休業で法的に定められた権利です。かつては女性だけが認められた権利でしたが、現在では男性も育休を取得することができます。